私の名前はジロギン。

HUNTER×HUNTERなどの漫画考察や、怪談・オカルト・都市伝説の考察、短編小説、裁判傍聴のレポートなどを書いている趣味ブログです!

ちょっと怖い話「マンホール男」

何気なくその上を歩いているが、「マンホール」は地面に空いた穴のようなものである。
すなわち「落とし穴」に近い。

重い金属製の蓋で塞がれているから大丈夫だと考えられているが、果たしてそう言い切れるだろうか?



当時の私は小学5年生くらいだったと思う。
私の自宅から数百メートルの場所に家が建った。
かなり大きな家で、家主はさぞお金もちであることが伺える。
白塗りの壁に2階建、屋根は青っぽい、空のよう。こんな家に住めたらなとみんなが憧れる家だ。

その家の駐車スペースには、マンホールがあった。よく街中で見かける、直径1mもないほどのマンホール。

もともとマンホールがあるところに家を建てたのか、あるいはなんらかの理由があってマンホールを設ける必要があったのかわからない。
だが、マンホールがあるだけでは別に奇異な話にはならない。





その出会いは突然だった。
小学校が休みの日に、友達と遊ぶために出かけた。ルート的にその家の前を通る必要があった。

相変わらず大きな家だと思っていると、
例のマンホールに目をやった。
すると驚愕の光景を目にした。

マンホールから40代くらいの男性が上半身を突き出し、こちらを見ていた。
腕を組んで地面につけ、まるでバーカウンターに座って、バーテンダーの奥に並べられたお酒のボトルを眺めるかのようにこちらを見ていた。



人生経験の浅い私にとってこの光景は、当然あるべきものなのか?それともこの男性がマンホールに落ちて出られなくなった異常事態なのか?いまいち区別がつかなかった。

だが、当時の私はこれを異常事態と判断し、男性に大丈夫なのか声をかけてみた。




「心配いらないよ。こうしてると落ち着くんだ。放っておいてくれていいよ。」

男性は答えた。妙に優しく紳士的な口調なのも逆に気味が悪かった。

放っておけと男性は言ったが、おそらくこれは強がりで、本当はマンホールにうっかり落ちて抜け出せなくなってしまったのではないかと私は考えた。

当時の私1人で男一人を引っ張り出すのは無理だっただろう。それに下半身が穴に入っているこの男性が2m越えの巨漢であったら引き上げるのは不可能だろう。人手が必要だった。

周りに人はいなかった。
それにしても少し離れたところから人を呼んだとしてもなんて助けを求めればいいんだ?
「マンホールにはまって抜け出せなくなっているけど、あまり気にしてない人がいるから一応助けてあげてください!」
なんて声をかけても、子どもの虚言だと一蹴されてしまうだろう。




幸い家が近く、親も家にいることがわかっていたので、一目散に家に戻り親を呼んだ。

親も半信半疑だったが、警察などを呼ぶ前に確認しておこうということで、父と私はあのマンホール男の元へ向かった。

しかし、マンホール男はおらず、マンホールの蓋も閉まっていた。



結局私の勘違いということに収まった。
親曰く、「下水道の管理をしている人にからかわれたんじゃないか?」とのこと。
何だか私もそんな気がしてしまった。
親の言うことが正しければ、マンホール男は冗談にならないほど粋な男だったと思う。

しかしもしかしたら、1つの可能性として、
本当にマンホールから上半身を乗り出す趣味の人だったのかもしれない。

あるいはマンホールにはまり、私が親を呼ぶまでの間にマンホールの中に入り、まるでヤドカリのように隠れてしまい、また別のマンホールから上半身を乗り出しているかもしれない。



マンホール男があなたの身近に現れるかもしれね。



この話、嘘か誠か、確かめる術はなし。