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【夢物語】『砂切りばばあ』を捕獲せよ!

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私は三河にあるとある城から、本日をもって尾張にあるとある城へと異動することになった。
前にいた城で偶然に別の殿様からスカウトされ、移動することになったのだった。


とはいえ、新しい城での役職は雑務係。
誰にでもできる仕事だというのに、何故私をわざわざ別の城からスカウトしたのかわからない。まぁいいや、給料は少しだけ上がるし。

 

新しい城は、城と呼ぶには小さい。
豪邸に毛が生えた程度の城だ。
毎朝大広間のようなところで、1日のスケジュールを確認する。今日も城中の家臣たちが集まって、2列になり正座をしている。人数は男女合わせて50人ほどだろうか。比率は若干男の方が多い。


殿の側近と思しき老父が私を紹介した。


「本日付けで我が城の雑務係となったジロギンである。」


私はどうもと軽く頭を下げた。
正直こういう厳かな場でどういう挨拶をしたらいいのかわからなかった。学のないやつと思われたかもしれない。
さらに老父は続けた。


「それでは、今月もってこの城を去ってもらう者を発表する!」


リストラ宣告だ…今日配属になったばかりの私にとって、かなりショックだった。
私は隣で正座する男性の家臣に小声で何が起きるのか尋ねた。


「毎月初めの日に、勤務態度などを加味して殿から首を言い渡される者がいる。我が城は見ての通りとても小さい城。あまりにも多くの家臣を雇い続けるわけにはいかない。そこで毎月勤務態度の悪い者を城から追い払うのだ。
普通に働いていれば宣告されることはない、が、毎月必ず1人は言い渡される。私は気に食わない制度だが、殿の命令ならば仕方あるまい。」


必ず1人…という事は、真面目に働いていたとしても、その月の最下位の働きしか出来ていないならばクビというわけか。より高度な仕事をさせるためとはいえ、かなり厳しい職場だな。…転職しなければよかったと私は思った。


「では、今月は…」


老父が宣告しようとした瞬間、20代後半くらいの男性家臣が立ち上がり、叫んだ。


「俺だろう!!?わかってんだよ!!!!」


殿様が口を開く


「わかっているなら話が早い。さっさと城から出て行け。」


男性家臣は腰にさしていた脇差を抜き、自分の腹部に当てた。


「クビにされるくらいなら、ここで死んでやるよ!掃除が大変なくらいはらわたブチまけてやるから覚悟しろよ!」


男には何か事情があるようだった。
多くの家臣が男の行動におののく中、隙をついた別の家臣たちが男を取り押さえた。


「はなせ!はーなーせー!」


と男は抵抗したが、3人の男にのしかかられては身動きは取れないだろう。
しばらくの間男はもがき続けた。
この空気感は初めての私にはなんだか耐えられないものだった。他の者たちにとっては毎月恒例のイベントみたいなものなのだろうか…と思ったが、顔が引きつっている者たちが多い。
無慈悲だなと感じる。おそらくこの男が何故切腹までしようとしたのか、事情を知っている者も多いはず。しかし、いざその時が来たら顔を引きつらせ、他人事。いつの時代のどこであっても人は変わらないなと思った。


その時、殿様が口を開いた。


「わかった。ならば一度だけ復帰の機会をやろう。しかししくじれば、お前には城を去ってもらう。」

 

 

 


男に言い渡された機会というのは、これまた一筋縄では行かなそうな案件だった。
城下町の外れに森がある。その森の中に「砂切りばばあ」と呼ばれる60〜70歳くらいの老婆が住んでいる。
この老婆は城下町から子供をさらい、森で殺した後、その子供の頭蓋骨で酒を飲むことを生きがいとしている、ようは連続猟奇殺人鬼なのである。
なぜ「砂切りばばあ」と呼ばれるのか、その理由はわからないが、見た目は優しそうなばばあであるため、子供たちはついて行ってしまうそうだ。まさに「身近に潜む恐怖」といった感じだ。
殿は男に、この「砂切りばばあ」を生け捕りにして城まで連れてこいと命じた。手伝いとして、3人まで家臣を連れて行って良いということにもなった。

 

 


最悪なことに私が選ばれた。転勤先で初めての仕事が殺人鬼の捕獲というのは前代未聞だろう。
私の他にももう1名、20代前半くらいで私と同じ歳の頃の男が1名、10代後半くらいの若い女が1名選ばれた。おそらく私はまだ仕事がないから、そして他の2名は来月辞めさせられる候補者なのだろう。最悪殺人鬼に殺されても厄介者払いが出来るというわけだと思う。


私たち4人は戦いの準備をしたが、まともに刀を触れるのは、当事者の男のみ。私たちは握ったことすらない。私と同年代の男はパチンコを装備し、女は望遠鏡をもって「砂切りばばあ」の自宅付近まで乗り込んでいった。

 

 

 

 

「砂切りばばあ」の家はかなりでかい。正直城よりでかいかもしれない。子供をさらって殺すだけでなく、多額の身代金を要求していたに違いない。その金で建てた豪邸というわけだろう。


私たちは「砂切りばばあ」の家から少し離れた、ばばあの家の屋根より高い位置にある茂みの中からばばあの様子を観察していた。

ばばあは大の字になり、大口を開けながら縁側で寝ていた。相手は殺人鬼といえど老婆だし、こちらは4人。静かに近寄れば100%捕まえられる。しかし、男は自分のクビがかかっているためか慎重だった。


「相手はばばあだが殺人鬼。一瞬の油断が命取りよ。ばばあは戦いの訓練は積んでいないだろうが、人を殺すことに躊躇いはない。そういう奴は侍より厄介だ。」


男が語る中、私と同年代の男はパチンコで生卵をばばあの家の外壁に次々放っていた。


「おい!何をしている!卵の無駄遣いだ!」


男が制止した。無駄遣いとかそういう問題ではなく、ばばあが起きてしまうことが問題だろう。ていうか何で卵持ってきてるの。と私は思った。しかし下っ端なので口出しはできない。
同年代の男は、


「卵の匂いにつられてばばあが起き上がってきたところを捕まえるんです!」


と男に語ったが、だったら寝ている時に捕まえた方が確実ではなかろうかと私は思った。
しかし下っ端なので口出しはできない。


男たちが揉めていると、ばばあはムクッと起き上がり、縁側で踊り始めた。能だ。ばばあの能だ。何故能を踊り始めたのかわからないが、もしかしたらこっちに気がついているのかもしれなかった。


男たちはより慎重になったが、こういう時女性というのはたくましい。
女は口をガバッと広げた。ガバッ…あれ?おかしい、明らかに人間が広げられる口の大きさではない。南米の大型の花「ラフレシア」くらいに口が4つに裂けている…
女はその口から長い舌を一直線に伸ばし、ばばあの足に絡み付け、ばばあを自分の元まで一瞬で引きずり、丸呑みしてしまった。


「…あの…食べちゃった。」


女は恥ずかしそうに言い放った。
私を含む男たち3人は汗かおしっこかわからないが色々な体液を流していた。

 


殿様には事情を説明した。女はおそらくただの人間ではなかったが、今後「砂切りばばあ」のような犯罪者が出た時に頼りになりそうだったので、殿様には言わないことにした。「砂切りばばあ」は追い詰められて谷底に落ちたということにした。


これ以降「砂切りばばあ」による被害はパタリと消えたため、男の功績が認められ、男は城に残れることになった。私を含む他のメンバーも給料が1.5倍くらいになった。

 

私は「砂切りばばあ」を「身近に潜む恐怖」と評し、最初は恐れていた。
しかしもっと恐るべき存在は、そんなばばあを捕まえに行った仲間の中にいた。私にとっての「身近」は確かにばばあではない。城の中である。

 

 

 


ばばあがいなくなったした翌月から、クビの制度はなくなった。しかし毎月必ず1人、まるで食べられたかのように家臣がパッと消えてしまうようになったけれど、それはまた別の機会に話そうと思う。

 

 

この物語は私が見た夢を元にして考えたフィクションです。

 

 


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