私の名前はジロギン。

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【怖い話】責任逃れ

 

私の名前はジロギン。

 

これは私の大学時代の友人が働く会社の同僚の女性が経験した出来事だそうだ。ここまで又聞きになると信ぴょう性には乏しいので、話半分で聞いてもらいたい。

 

その日の夜、女性が働く会社では忘年会があった。1年の締めくくりとして盛大に盛り上がる忘年会。女性は会社内で「自称・社内最強の酒豪」として社員たちから評判だったそうで、その会でもお酒をたくさん飲んで帰る頃にはフラフラだったそうだ。

それでも終電前には駅に着くことができた。駅では立って電車を待つのも辛かったため、椅子に座って待つことにした。異常な睡魔が襲ってきて、意識も朦朧としていたが、ここで寝たら終電を逃してしまう、と何とかギリギリ意識を保っていたそうだ。そんな時だった、

 

「どこ見て歩いてんだこのジジイ!!」

 

女性の耳に男性の怒号が聞こえた。恐る恐る声のする方向を見てみるとそこには見るからにヤンチャしてきてそうな体格のいい金髪の若い男性と、見るからに終電まで働いてたであろう小柄でスーツ姿、50歳くらいの男性がいた。スーツの男性が若い男性にぶつかったか何かして怒らせてしまったようだった。スーツの男性は襟首を掴まれながら「ごめんなさい、ごめんなさい」とだけ繰り返していたが、一向に離してもらえず、しまいには殴る蹴るの暴行をされ始めてしまった。

女性は酔っ払っていたが、その光景を見て意識がはっきりした。でも女性の自分が、しかも酔っぱらった状態で止めに入ったところで何も出来やしないし、場合によっては自分に暴行の矛先が向けられてしまうかもしれない。女性はその場を立ち去るかのようにやってきた終電に乗った。電車の窓からはスーツの男性が暴行され続けている姿が見えた。殺されやしないだろうか?と女性は不安に思っていた。

電車に乗ってから女性はあることに気がついた。バッグがない。おそらく駅に置いてきてしまったようだ。「しまった」と女性は思った。明日の朝駅に連絡してカバンを取りに行かなければならない。

 

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翌朝、駅に連絡したところ、忘れ物としてバッグが届いているとのことだった。特徴を聞いたら女性のバッグと同じだった。女性はすぐに電車に乗って駅へ向かい、忘れ物を受け取った。その時駅員さんに、忘れ物を届けてくれた方にお礼が言いたいので連絡先などを教えて欲しいと尋ねたが、駅員さんは教えてはくれなかった。今朝方届け主がバッグを持ってきたが、名前や連絡先などは一切名乗らず去って行ったため、駅員さん自身届け主のことは何もわからないとのこと。ただ届け主は小柄なスーツ姿の男性だったという。

女性には届け主の心当たりがあった。その男性はおそらく昨夜駅で若者に暴行されていた男性だろう。生きていたんだ。そして自分のバッグを見つけて駅員さんに届けてくれたんだと。なんていい人だろう。暴力を振るわれておきながら人助けだなんて。是非ともお礼を言いたいところだが、連絡先がわからない以上どうすることもできない。

 

女性はふと冷静になった。まだあのスーツの男性を良い人だと判断するのは早いかもしれないもしれない。バッグの中身が盗まているなんてことも考えられる。きちんと確認しておこう。

女性はバッグの中身を確認した。何も盗まれてはいなかった。むしろ、中身が増えていた。

 

刃にべっとりと血の付いた包丁が入っていた。

 

昨夜、あの若者とスーツの男性の間で起きたトラブル。どうやって解決したのかはこの包丁が物語っていた。あのスーツの男性は、やっぱり良い人じゃなかった。だって、無関係な人間に責任を押し付けて、どこかに逃げてしまったのだから。