私の名前はジロギン。

HUNTER×HUNTERなどの漫画考察や、怪談・オカルト・都市伝説の考察、短編小説、ウォーキング(散歩)の記録などを書いている趣味ブログです!

【怖い話】地に落ちた地位

 

私の名前はジロギン。

 

人というのは、お金を持つほど高いところに住みたがる生き物だ。何十階もの高さを誇るタワーマンションの上層階に住んでいる人たちは皆、いわゆる富裕層たちだろう。

ただこれは今に始まったことではなく、はるか昔から人間に根付いている、本能にも近いものだ。戦国時代の大名たちも各地に城を建てて、そこに住んでいた。これは「お前たち下々の人間より私は上位に位置する人間なのだ」というアピールでもあったのだろう。ステータスの高さを、自分の住処の高さとしても表現していたと思うのだ。

 

かくいう私も人間なので、やはり高いところに住むということには憧れている。だからこの数年間仕事を頑張ってきた。やりたくない仕事もやったし、みんなが寝ている間も働いた。タワーマンションのような高級な家に住むことはできなかったけど、都内(の端のほう)の10階建てのマンションの最上階に住むことはできている。家賃は目玉が飛び出るほど高いというわけでもないが、それなりには高い。小さいレベルかもしれないが、私もステータスの高さを示すことができる高さの家に住むことに成功したのだ。

そんな私の日課は、仕事が終わって家に帰り、夕食を食べ風呂に入ってから、ベランダに出て夜の街を眺めることだ。毎日時刻は0時過ぎになる。こうやってベランダから街を見下ろすことで、私は優越感に浸っている。そんじょそこらの人間よりは地位が上なんだぞ、と自分に言い聞かせるのだ。この日課を人に話すと、私を卑下する者もいるが、それだけ頑張ってきたのだから、多少の自慢くらい許してほしいものだ。

 

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ある日私は、いつも通り日課をこなすべくベランダに出てた。街を見下し優越感に浸ると言ってもここは都内。私が暮らす10階建てのマンションくらいの集合住宅は、視界に入るだけでも7〜8棟は見える。残念ながら私はこの地域でNo. 1ではない。この日は街ではなく、自分と同じ高さに暮らすライバルたちを眺めていた。

あるマンションの、同じく10階くらいにある部屋のベランダに人の姿が見えた。30mほど離れた位置にあるマンション。ベランダにいる人は髪が長いので、女性だろう。あの女性も、私と同じように街を見下し、人を見下し、悦に入るような習慣でもあるのだろうと思いながら、私は女性を遠目に眺めていた。

 

その時だった。女性がこっちを見た気がした。私はすぐに視線をそらそうとした。が、一瞬のうちに女性が吸い込まれるようにベランダから落ちていったのが見えた。自殺だ。飛び降り自殺だ。10階の高さから落ちたらまず命はないだろう。何があったのかは知らないが、彼女は自分が必死で築きあげてきたであろう地位を捨てるかのように落ちていった。

私は急いで部屋に戻った。人の死ぬ瞬間を見るのは初めてだった。怖かった。今まで感じたことのない感情と冷や汗を背中に感じ、私はしばらく震えていた。

こういう時はどうすればいいのだろう?警察に電話したほうがいいのか?それとも救急車が先か?わからない・・・そうだ、友人に警察官をやっている奴がいた、彼に連絡して警察が先か救急車が先か聞いてみよう・・・いや、警察官の友達に連絡するくらいなら、最初から警察に電話したほうが早いのではないか?

さまざまな思考が私の頭を巡っていた・・・

 

ピンポーン

 

私の部屋のインターホンが鳴った。こんなタイミングに来客?0時過ぎに宅配便は来ないだろうし・・・今はそれどころではないのに・・・

 

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

 

私は母親から、「人様の家のインターホンを鳴らす時は失礼にならないように1〜2回にしなさい」と教わってきたものだから、こんなにもインターホンを連打されると異常性を感じずにはいられない。

 

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

 

なんとなくだが、外に誰がいるのか察しがついた。

ああ、これはあれだ、出ない方がいいやつだ。