私の名前はジロギン。

HUNTER×HUNTERなどの漫画考察や、怪談・オカルト・都市伝説の考察、短編小説、裁判傍聴のレポートなどを書いている趣味ブログです!

【怖い話】何かがいる

 

私の名前はジロギン。

 

夜中に目が覚めた。部屋は真っ暗だ。枕元のスマホの電源を入れると、時刻は2時25分と表示されていた。夜が空けるにはまだ早すぎる時間だ。最近、寝て起きたら朝だったということがほとんどない。夜中に2〜3回は目が覚めてしまう。気が張っているのだろうか。今日も朝から仕事だから、できればぐっすり寝たいところだ。いや、逆に仕事を意識しすぎているからぐっすり眠れないのかもしれない。翌朝が休日であると自分に言い聞かせながら寝てみよう。と、私は布団をかぶるようにして目を閉じた。が、

 

シャリシャリシャリシャリシャリ・・・

 

真っ暗な部屋のどこかからシャリシャリと音が聞こえた。何の音だろう?何かを食べている音のようだ。誰だ?私は一人暮らしをしている。配偶者もいないし、彼女もいないし、何なら友達もろくにいない。しかもこんな真夜中に勝手に家に入ってくる非常識な知り合いもさすがにいない。

もしかしたら、ネズミでも出たのだろうか?音はキッチンの方から聞こえる。キッチンでネズミが何かを食べているのかもしれない・・・でも、たかがネズミとはいえ、いざ対峙するとなると結講怖い。自力で駆除できるかと言われれば自信もない。今はそっとしておいて、明日ネズミ駆除の道具を買って対策をしよう。そう思って改めて眠りにつこうとした時、シャリシャリという音が止まった。そして、何かが動く気配がした。

 

その気配はネズミではなく、もっと大きなもののように感じた。間違いなくこの暗い部屋の中に私以外の何かがいる。その何かは人間に違いない。私は思った、こいつは泥棒だ、と。この暗闇の中にいるのは泥棒だ。泥棒に入られてしまったんだ。私は怖くなってきた。泥棒がどうやって入ってきたかわからないのも怖いが、もしかしたら殺される危険性もある。命の危機を感じずにはいられなかった。

でも泥棒だって、ただでさえ盗みを働いているわけで、私を殺したら、捕まった時により罪が重くなる。余計な犯罪は重ねたくないだろう。そもそもこの泥棒がどれくらい前から部屋の中にいるかもわからない。少なくとも私が泥棒に気がつくまでの間は私のことを殺していなかったわけだから、このまま寝たふりをしていれば見逃してくれるかもしれない。お金よりも命の方が大切だ。

私はそのまま寝たふりをした。まだ部屋に人がいる気配がする。殺されないと決まったわけではないが、出来る事ならこのままやり過ごしたい。口から出そうなほど鼓動する心臓を抑え込むように私は息をひそめ続けた。まだ人の気配がする。どうかこのまま見逃してくれ・・・

 

ガチャ・・・ギィィ・・・

 

玄関の扉の開く音がした。泥棒は逃げたのだろう。私はほっとした。でもまだ安心はできない。朝が来るまでこのまま布団にくるまっていよう。そう思っていたが、

 

「起きてんのはわかってんだよ」

 

耳元で男性の声がした。

 

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その直後、スマホのアラームが鳴った。時刻は7時30分。いつも目を覚ます時間だった。絶対に殺されたと思った。泥棒に寝たふりがバレて口封じに殺されたと思った。

急いで部屋を調べたが、特に何か盗まれた形跡はなかった。財布もあるし、部屋のものの位置なども変わっていない。

もしかしたら夢だったのかもしれない。金縛りみたいな、とても現実に近い夢を見ていたのかもしれない。泥棒だったらリスクを冒してまで部屋に侵入したのに何も取らないのはおかしい。まぁ何のために部屋に侵入したのか、目的がわからないのもそれはそれで不気味だが、多分気のせいだったのだろう。私は自分にそう言い聞かせた。

 

ただ、買った覚えのないりんごの芯がゴミ箱に捨ててあるのだけが気になった。

もしかしたらまた今夜も、誰かが私の部屋に来るかもしれない。