今回は、週刊少年ジャンプで残念なことに連載が打ち切られてしまいましたが、私が個人的に大好きだった、杉田尚先生原作の漫画
斬-ザン-
の考察をしたいと思います。
斬ることができない刀「研無刀(けんぶとう)」を携えた高校生で主人公の「村山斬(むらやまザン)」。
彼は戦う時になるともう一つの人格に目覚め(本人は変身と呼んでいます)、性格が攻撃的になり、身体能力が格段に向上します。
ただこの原理と言いますか、理由が作中では明確になっていなかったのです。
そこで今回は、
斬は人格が変わると強くなるのはなぜか?
について考察してみたいと思います!
村山斬とは?
「斬」は、刀がなくならなかった現代日本を舞台とした作品です。
学生もサラリーマンも、みんな刀を携えた「武士」であり、正当防衛や両者合意の上での「真剣勝負」であれば人を斬っても許される法律まで制定されています。
斬は無双(なしふた)高校に通う2年生の男の子です。
(引用:斬 1巻13P/杉田尚)
見た目は小柄で気弱な性格をしています。ただ、立派な武士だった父に憧れ、「研無刀」という刀を持っています。
研無刀は見た目は真剣と変わりませんが、あえて鋭く研がず斬れないようにする分、硬度と重量を上げ、破壊することを目的とした刀です。
素人が使ったのでは鉄屑同然で、玄人が好む刀であり、日本全国でも使い手は10人もいないとされています。
(引用:斬 1巻15P/杉田尚)
本来の斬は足も遅く気弱な性格もあって、剣の腕前は素人以下です。しかし並外れた怪力と剣を振るう速度(剣速)を持っており、研無刀を振り回すだけでも異常な破壊力で攻撃できます。
ただ、その真髄は、斬のもう一つの人格が目覚めた時にあります。この時の斬はすべての身体能力が格段に向上し、作中最高クラスの実力になります。
あとイケメンにもなります。
(引用:斬 1巻74P/杉田尚)
でもなぜ人格が変わると強くなるのか?その理由がわからなかったので考察します。
もともとポテンシャルは高い
斬は普段弱気で、同級生でも男子には「くん」女子には「さん」をつけて呼ぶほどです。剣の腕前は誰が見ても素人レベルです。
ただ、斬は異常な怪力を持っており、一発食らえば並みの手練れでは卒倒します。さらに研無刀は斬れないので、死に至ることはないようですが、鉄の棒で殴られていると考えると、ほぼ即死レベルの攻撃です。
人格が変わらなくても斬のポテンシャルは異常に高いです。作中後半に登場する強キャラたちを除くと、序盤は人格を変えない状態で戦っていることも多く、人格が変わるとほぼ一発で勝負がつきます。
このポテンシャルの高さを考えると斬は、
もともと実力はあるのですが、弱気な性格がそれを押さえ込んでいて、勝負の中でアドレナリンが出て、本能が目を覚めるのかもしれません。
強くなるというより、元の強さを発揮するといったほうがいいでしょう。
人格がかわる(変身する)条件の中には「自分が窮地に追い込まれること」があるので、強くなる要素にアドレナリンによる興奮も含まれていると思います。
もともとポテンシャルは高く、人格が変わるとそのリミッターが外れる感じでしょうかね。
とすると、なぜもう一つの人格が生まれたのかが気になります。
トラウマが生んだ攻撃的な性格?
斬は無双高校に転校する前にいじめられていた過去を持ちます。斬にとっては非常に嫌な思い出で、ずっと脳裏に焼きついているようです。
(引用:斬 1巻31P/杉田尚)
あまり良い考え方ではないと思うのですが、現実にも過去のトラウマが別の人格を生み出してしまうということがあると聞きます。
斬も、もしかしたらトラウマから自分の心を守るために、もう一つの人格を生み出してしまったのかもしれません。
しかも斬のもう一つの人格は、最初のうちは斬にもコントロールができず、稽古のつもりで戦っていた、同級生にしてヒロインの月島弥生(つきしまやよい)を殺害しかけます。
斬は月島さんのことが好きだったにもかかわらず、命を奪おうとしてしまうあたり、もう一つの人格はだいぶ攻撃的です。
学校の不良たちを相手にしても全く臆さず、むしろ超攻撃的に攻めていく姿は獣のような勢いがあります。
もう一つの人格は、斬のつらい過去が生み出したものの可能性が高いです。
作中で直接言及がなかったのは、斬の悲しい産物として生まれた人格だった故かもしれません。少年漫画ですのでね。
なぜ高いポテンシャルを持っていた?
さらにもう一つの疑問が生まれます。
「なぜ斬は高いポテンシャルを持っていたのか?」
これは斬の父が原因でしょう。斬の父は扱うのが非常に難しい研無刀を自在に扱う武士だったそうです。
斬の父が、斬にトレーニングを施していたので異常な身体能力を持つことになったのだと思います。
しかし斬は弱気な性格だったため、そのポテンシャルを生かせずにいましたが、もう一つの人格が生まれたことで、無意識のうちに発揮できるようになったと。
お父さんがめっちゃすごい人で、その才能を受け継ぎ、指導されてきた主人公はめちゃくちゃ天才だったって設定はジャンプ漫画の王道ですからね。
ちなみに斬のお父さんは登場しません。
多分「遊戯王」をモチーフにしたのかな?
気弱な少年が、戦いや窮地に陥った時にもう一つの攻撃的で強い人格に入れ替わり(しかも見た目も変わる)というのは、同じく週刊少年ジャンプの大ヒット漫画「遊戯王」の主人公・武藤遊戯に近い設定だなと感じます。
遊戯も戦いのときは闇遊戯の人格が目覚め、代わりに戦ってくれます。
ただ、遊戯は「千年パズル」と呼ばれるパズルを完成させた結果、パズルに宿っていた古代エジプトのファラオの魂が遊戯に宿ったという設定があります。
斬にはこう言ったきっかけというか、理屈がないのです。
まぁ「遊戯王」も、闇遊戯の正体は作中中盤くらいまで謎のままでしたので、よくわからないけど変身している状態でしたけどね。
斬も連載が続いていれば、なぜもう一つの人格が生まれたのか明らかになったかもしれません。
本当に惜しい作品でした。
ちなみに、「斬」の第1話に「牛尾」という不良が登場し、「斬」をいじめますが、「遊戯王」でも遊戯をいじめる「牛尾」という不良が登場します。
作者の杉田尚先生は「遊戯王」をモチーフにして「斬」を描いたのではないかなと思います。余談でした。
結論
私の結論として、斬の人格が変わると強くなる理由は、
いじめがきっかけで生まれた攻撃な人格によって精神的なリミッターが外れ、
持ち合わせていた身体的なポテンシャルが解き放たれる
からではないかと考えました。
斬は全18話しかないので、作者の杉田先生としても描き切れなかった部分はたくさんあると思います。
特に斬の人格の設定については深掘りしていくつもりだったのでしょう。
なんとも消化不良な形で終わってしまい、打ち切り漫画の一つとして語られている「斬」。
賛否あるかと思いますが、私は「斬」の設定などはとてもいいなと思っていました。
当時は中学生だったと思いますが。
いろんな意味で続きが気になる漫画でしたよね。久しぶりに読みましたが、楽しめました。
おまけ
今回の考察をするにあたり、Amazon経由で「斬」を購入したのですが・・・
送料の方が高い!?
悲しいぞ・・・悲しいぞちくしょう・・・
個人的には送料に負けないくらいのインパクトと価値のある作品だと思っています。
改めて読み返してみて、まだまだ気になるところがたくさんあったので、「斬」の考察も当ブログでやりたいと思います!