私の名前はジロギン。
インターネット上には様々な怪談・オカルト話が存在します。
中でも有名なのは「洒落怖」こと「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」に投稿された話。
私も過去の作品をよく読んでいます。
「リゾートバイト」「くねくね」「きさらぎ駅」「八尺様」などは言わずと知れたレジェンド級の怪談で、ご存知の方も多いはず。
これら以外にもゾッとする作品が多数存在しています。
そこで今回は、マイナーですが個人的に印象に残った話を紹介し、話の中に登場する謎を考察しようと思います。
「落ちてくる」という話を紹介します。短いながらも充分に怖さの伝わってくる作品です。
【洒落怖】落ちてくる
落ちてくる
夏の終わりに川でキャンプをしに行った時の話
俺と友達は川辺でバーベキューのセッティングをしていた。
ふと顔を上げると、上流の方に見える吊り橋に人影が見えた。
友達も気づいた様子なので、「あそこスリルありそうだな。」なんて言って笑った時だった。
「あ。」
友達が呟くようにそう言ったので視線を戻すと、さっきまでいたはずの人影が消えていた。
何が起きたのか理解して、数秒固まってしまったがすぐ我に返り、他のみんなにも知らせて通報をした。
結局それでキャンプは中止、みんな家に帰る事になった。
しばらく経ってもあの川で遺体が見つかったという話は聞かなかった。
記憶もおぼろげになり、鳥か何かを見間違えてただけじゃないかと思い始め、友達にもそう言ってみたのだが、
「あれは鳥なんかじゃない。」
とひどく怯えた調子で否定された。
その様子があんまり大げさだったので理由を聞いてみると、あの人影が吊り橋から落ちた後、空中でふっと消えたのだという。
「じゃあやっぱり見間違えだったんじゃないか?」
そう言う俺を遮って、友達が口を開く。
「あれからあいつ、毎晩うちのベランダから落ちてるんだ。」
考察
シンプルで短い話ですが、詳細に書かれていないからこその怖さを感じます。
考察しがいのある怪談です。
「落ちてくる」の話の中で、私が感じた謎は次の2点。
- なぜ『あいつ(人影)』は友達の家のベランダから落ちているのか
- なぜ友達の家でだけその現象が発生しているのか(筆者に異変はないのか)
この2点を考察していこうと思います。
「作り話だから〇〇だ」というような考察はしません。怪談から読み取れるor想像できる要素を使って考察します。
また、私に霊感はなく、幽霊の正体や行動の目的などを断定することはできませんのでご了承ください。
何か伝えたいことがあった?
まずは1点目の謎、「 なぜ『あいつ(人影)』は友達の家のベランダから落ちているのか」を考察していきます。
筆者と友達が見た『あいつ』は、吊り橋から飛び降り自殺をした人、または飛び降り自殺をした人の魂ではないかと思います。
空中で消えたという部分からすると、生身の人間ではなく魂や霊体と考えるべきでしょうか。
また、『あいつ』は自殺していたということは、何か深刻な悩みを抱えていたのでしょう。
これらことから私は、『あいつ』は自分の悩みを伝えるために、飛び降りた姿を見た友達の家までついていき同じ行動を繰り返している魂……なのではないかと思いました。
自殺して幽霊になった者は、死ぬ時と同じ行動を繰り返すという話を聞いたことがあります。
もしこの話が真実だとしたら、『あいつ』は自分を認識した友達に悩みから解放して欲しくて、ベランダから飛び降りを繰り返してアピールしているのかもしれません。
『あいつ』は悲しい思いを抱えた魂だったのかも…?
単純に脅しのため?
果たして、幽霊の行動は生きている人間と同じような理由付けができるのでしょうか……
私たちには理解できない目的で行動する可能性もゼロではありません。
あるいは、単純に人間を怖がらせるためだけに行動する幽霊もいるのかも。
もし『あいつ』がその手の幽霊だったとしたら、「吊り橋から飛び降りる姿を周囲の人間に見せ、自分を認識できた者に同じ光景を見せ続ける」ことを趣味にしているだけとも考えられそうです。
川で楽しく遊んでいる人を恐怖に陥れる……
吊り橋にたたずんでいたのは、自分を発見しやすくして、人間に取り憑くための罠だったのかも。
このように考えると、かなり怖い幽霊だと思われます。
自分の姿を見た者の精神を蝕んでいく霊…?怖すぎィ!!
ただ、友達はベランダで『あいつ』が飛び降りる姿を見ているだけで、直接危害を加えられているわけではなさそうです。
この点からすると、先述の通り何か伝えたいことがあって同じ行動を繰り返しているという見解の方が近いように感じます。
友達は魅入られてしまった?
さらにもう1つの謎、「なぜ友達の家だけでその現象が発生しているのか」も考えていきます。
筆者も『あいつ』を認識していたのに、その後なんの影響もなく生活できている様子。
2人にはどんな違いがあったのでしょうか。
文章の内容だけで見ると、2人には「『あいつ』を見ていた時間」の違いがありました。
筆者は『あいつ』を見つけた後に視線をそらしていたようで、飛び降りる瞬間まで見ていません。
一方、友達は飛び降りた後に消えた瞬間まで見ており、筆者よりも長い時間『あいつ』を見ていたことになります。
この違いから、友達は『あいつ』を長く見ていたことで逆に魅入られてしまったと考えられないでしょうか。
「人間に取り憑くための条件」に見ていた時間があるのかも?スタンド能力みたいに。
フラッシュバックの一種?
ここまでは心霊的な観点で考察を進めてきましたが、現実的な観点でも考察してみます。
友達が自宅のベランダで『あいつ』が飛び降りるのを何度も見ているのは「フラッシュバック」の一種という可能性もあるでしょう。
フラッシュバックとは、強いトラウマ体験を受けた後、その記憶が鮮明に思い出される現象のことです。
『あいつ』は幽霊ではなく、本物の人間だった。そして飛び降りる瞬間を見てしまった 友達のトラウマになってしまった……
もし、この話が筆者と友達の子供時代の体験だとしたら、なおさらでしょう。
仮に『あいつ』が人間でなく見間違いだったとしても、友達の脳裏には「人間が飛び降りる瞬間を見てしまった」と刻まれていると思われます。
また、吊り橋とベランダでは状況が異なりますが、「高いところから飛び降りる」というイメージが友達の頭の中にあり、吊り橋とベランダを同一視していたとしたら……
毎晩、川での記憶がフラッシュバックし、ベランダで『あいつ』を見る原因になっていると考えられないでしょうか。
この場合、『あいつ』が空中で消えたのは何かの死角に入ったなどと考えるべきですかね…?
まとめ
私の個人的な考えではありますが、「落ちてくる」を読んで感じた2つの謎は「心霊的な観点」と「現実的な観点」とで2通りの考察ができると思います。
- 『あいつ』は何か伝えたいことがあって友達の家のベランダから飛び降りている(脅しではない可能性が高い?)
- 友達は『あいつ』が飛び降りる瞬間まで見てしまい魅入られた(筆者は見ていなかったため無事)
- 人が飛び降りた瞬間が友達のトラウマとなり毎晩フラッシュバックしている
- 『あいつ』が空中で消えたのは何かの死角に入ったから
現実的な観点での考察では『あいつ』が空中で消えた理由の説明が難しいですね。
「死角に入った」というのは文中から読み取れないので、考察の辻褄合わせの域を出ないなと感じます。
真相を知るには、筆者と友達に詳細を聞く他ないでしょう。
しかし、数年前に匿名で投稿された話のため追跡は不可能です。
今回は考察にとどめさせていただきます。
……………
「落ちてくる」のような、詳細がわからなかったり、登場する怪異が正体不明のまま終わってしまう怪談は、個人的にものすごく怖く感じます。
「わからない恐怖を感じる」とでも言うべきでしょうか。
私の好きな怪談の性質上、今後もこの手の「わからない恐怖を感じる」話の考察が多くなると思います。
短いし考察しやすくて最高!謎を残した怪談がオレを呼んでいる…