私の名前はジロギン。
今回紹介するのは、園田 祥子(そのだ しょうこ:仮名)さんという30代前半の女性が体験した話。
3年ほど前のある夜、園田さんが自室で就寝中に起きた出来事だ。
もう一度見て
ドッ…ドッ…ドッ…ドッ…
部屋の中から聞こえる足音で、園田さんは静かに目を覚ました。
部屋を真っ暗にしていたので最初自分がどこを向いているのかわからなかったが、ベッドの上で壁の方を向いて横になっていることに気づいた。
園田さんは恐怖でいっぱいになった。
なぜなら、今はアパートに一人暮らししており、誰かが部屋に入ってくることなんてありえなかったからだ。
泥棒…?それとも私を殺しに来た…?
このまま寝たふりをした方が安全だろうか…?
いや、今すぐ起きて警察を呼ぶべきか…?
迷う園田さんの背後で、足音が止まった。
はぁ…はぁ…はぁ…
男のものと思われる、低くてじっとりとした息遣いが聞こえる。
園田さんは恐怖のあまり何もできなくなった。
瞼をギュッと閉じて、死を覚悟した。
5分ほど経っただろうか。
背後にいる男は、園田さんに何もしてこない。
相変わらず荒い息遣いのまま、背後に立ち尽くしている様子。
直視できないが、なんとなく気配で感じる。
その直後、ドスンッと重い何かが床に落ちる音がした。
やはり恐怖で体が硬直したままの園田さんだったが、やがて不思議な感じがした。
何かが落ちた音を聞いてから、男の息遣いが聞こえなくなった。
園田さんは恐る恐る上半身を起こして、部屋の中を見た。
暗くてはっきりしないが、誰かいる様子はない。いつも通りの自分の部屋が見える。
もしかしたら金縛りだったのかもしれない。
脳が勝手に作り出したイメージに怯えてしまったのかも。
そう思った園田さんだったが、念のため部屋の中を確認することにした。
ベッドから出て床に足を下ろした時、カーペットが濡れていることに気づいた。
何かが染み込んでいる。しかし、こぼれるようなものを部屋に置いておいた記憶はない。
濡れたカーペットの上を歩き、壁についている電気のスイッチをオンにした。
床に血まみれの男が横たわっていた。
白いカーペットは、男の腹部から流れ出ている血によって真っ赤に染まっていた。
園田さんは絶叫し、その場で腰を抜かしてしまった。
異常な光景を目にしながらも、部屋を這うように移動し、枕元に置いてあったスマホを震える手で取った。
そして警察と救急車を呼んだ。
最初は困惑した園田さんだったが、倒れている男の顔を見て気付いた。
1ヶ月前に分かれた元彼氏だったのである。
右脇腹に包丁らしきものが根元まで刺さっている。
意識を失っているようで、指先ひとつ動かない。
元彼氏は園田さんの部屋で自殺を図ったのだ。
タオルを持ってきて止血する園田さん。
別れた相手を助ける義理はないが、自分の家で自殺されるなんて困るし、今後住みにくくなってしまう。
刺さった包丁を伝うようにして流れ出る血液。
専門的な知識はないが、とりあえずタオルで傷口を抑えつけた。
およそ10分後にパトカーと救急車が到着。
元彼氏は救急隊によって運ばれていった。
そのまま警察による事情聴取が始まった。
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元彼氏は手術の末、一命を取り留めた。
警察の調べでは、園田さんに振られた元彼氏は、復縁を迫るために何度も連絡していたとのこと。
しかし園田さんはそれらを全て無視し、電話は着信拒否、LINEはブロックしていた。
まともに取り合ってくれないことに腹を立てた元彼氏は、交際時に作っておいた合鍵を使って園田さんの部屋に侵入、自殺を図った。
当初は園田さんを殺害しようと思っていた元彼氏だったが、目の前で自分が死ねばもう一度園田さんの気を引けるのではないか、見てくれるのではないかと思い、自殺を選んだとのこと。
元彼氏が持っていたスマホのメモには、園田さんへの愛を伝える1万文字近い文章が残されていた。
事件以来、元彼氏とは一切会っていない園田さんだが、未だに恐怖で眠れなくなる夜があるという。
現在は引っ越し、元彼氏の知らない土地で生活している、と語ってくれた。
※ご本人や関係者の方々に配慮し、内容を一部変更しています。
自死により恐怖を与える
何者かが部屋に侵入し、家主を襲うという事件を度々耳にします。
実際に自分が体験したら、二度と忘れられない恐ろしい記憶となるでしょう。
園田さんが話してくれた体験は、これとは少し違うものですが、やはり恐怖を感じる内容でした。
自分の家で自死される…直接命を狙われるのとは違う怖さがあります。
無責任さを押し付けられるかのような…悪い意味で命の重さを直接ぶつけられるような…そんな感じがした体験談でした。