関東大会15連覇、全国大会2連覇を果たした、「王者」という名にふさわしい立海大附属中テニス部。
レギュラー個人の実力は他校と比較しても桁違いで、青学の竜崎先生いわく「全員が全国区プレーヤー」「手塚が7人いる(当時部長の幸村くんは入院中で試合に出場できていなかったため本来は8人)」とのこと。
しかし、本当に全国区プレーヤーだったのか定かではない立海大レギュラーもちらほら……
そこで本記事では、立海大のレギュラー陣は本当に全員が全国区プレーヤーだったのか、考えてみたいと思います。
全国区プレーヤーの定義
まずは全国区プレーヤーの定義について明らかにしておきましょう……と言いたいところなのですが、作中で明確に定義されたシーンがありません。
何となく存在していそうな定義として、「全国大会でも上位まで勝ち上がれる、中学最上級の実力を持つ選手」を全国区プレーヤーと呼んでいるようです。
ただしこの定義も正確ではなく、例えば不二くんをワンサイドで5-0まで追い詰めた四天宝寺の白石蔵之介くんや、手塚部長相手に4-0でリードし「百錬自得の極み」を引きずり出した木手永四郎くんなどは、全国区プレーヤーとは言われていません。
実力だけ見れば、彼らも全国区プレーヤーと同格でしょう。ですが、白石くんは毎回シングル1を務めており、他の四天宝寺メンバーが先に勝敗を決めてしまうため試合が回って来ず、実力は謎に包まれていました。木手くんは作中の団体戦が全国大会初出場で、それまで全国ではほぼ無名。
このことから全国区プレーヤーと呼ばれるには、テニスの実力だけでなく、実績とそれに伴う知名度なども必要なのだと思われます。
立海大のレギュラー陣は本当に全員が全国区プレーヤーだったのか?
全国大会の上位まで勝ち進む強豪校を見ても、全国区プレーヤーはチーム内に1〜2人程度。そんな中、立海大はレギュラー8人全員が全国区プレーヤーという評判です。
本来ならまずあり得ない人数ですが、果たして本当なのでしょうか。
立海大レギュラー各員の実力や、作中での活躍から考えていきます。
幸村精市
まずは立海大を統べる部長・幸村精市くん。幸村くんは不利な状況でも表情を崩さず淡々とプレーし続ける佇まいや、その圧倒的実力から幼い頃より「神の子」という異名で知られていました。
立海大に入学した直後、幸村くんはレギュラー入り。主力選手として立海大の全国2連覇に貢献しました。いや、貢献というより幸村くんが主導していたと表現したほうが正しいですね。幸村くんは王者・立海大のトップ選手でした。
その後、病のため長期の入院が必要になった幸村くん。3年になってからは全国大会決勝のリョーマ戦しか出場していません。が、リョーマが使うあらゆる技を打ち返し、五感を喪失させるなど、異次元の強さを見せつけました。
さらにOVAだと、幸村くんは公式戦無敗で、過去1ゲームも落としたことがないというジョコビッチでも青ざめるような設定が追加されています。つまり幸村くんは、1年生のときから全国レベルの上級生をボコボコにぶちのめしまくってきたということです。
このような幸村くんの実力・実績を踏まえると、彼は見まごうことなき全国区プレーヤーですね。
真田弦一郎
幸村くん不在の間、立海大テニス部を支え続けた副部長・真田弦一郎くん。
「風林火山」4つの技(対手塚部長用の「陰」と「雷」もある)を駆使し、あえて相手の得意なプレースタイルに合わせた技をぶつける真っ向勝負を信条としています。
真田くんは「林」で柳くんを、「火」で赤也くんを、「山」で跡部様をねじ伏せているそうなので、強さは折り紙付きです。300枚は付いてきます。
そんな真田くんも幸村くんと同じく、立海大テニス部入部直後からレギュラー入りし、全国連覇に貢献。「皇帝」という二つ名で呼ばれるようになりました。
作中では関東大会決勝でリョーマに敗北したものの、それ以外に公式戦で負けた描写は無し。全国大会決勝ではあの手塚部長にも勝利しています。
「負けたら鉄拳制裁」という立海大の掟を遂行していた張本人である真田くん。やはり戦績は優秀ですね。
幸村くんに次ぐ立海大のNo.2にふさわしい活躍をしてきた真田くんも、間違いなく全国区プレーヤーでしょう。
柳蓮二
相手選手を徹底的に分析してプレーする「データテニス」を得意とする柳蓮二くん。
柳くんも幸村くん・真田くんとともに1年次から立海大のレギュラーになり、3人はBIG3と呼ばれてきました。
柳くん持ち前のスキルが中学生最上位レベルな上、相手選手のデータまで細かに取得しているのだから鬼に金棒。柳くん相手に勝てるプレーヤーは、そう多くはありません。
作中では柳くん対策を積みに積みまくった乾くんに惜敗したものの、勝率は五分五分。どちらが勝っていてもおかしくない試合内容でした。しかしこの試合以外、柳くんは敗北していません。
そもそも柳くんはシングルスではなくダブルスでこそ真価を発揮する選手。全国大会準決勝、仁王くんと組んだ名古屋聖徳戦では海外留学生相手に6-1で圧勝。続く決勝の青学戦では、赤目の赤也くんをうまくコントロールし、乾・海堂ペアを圧倒しています。
小学生のときに乾くんとペアを組んでいた頃は、ジュニアテニス界を牽引する存在だったとのことで、やはり柳くんの主戦場はダブルスと考えるべきですね。
シングルスでも中学最上位レベルで全国連覇に貢献。けれど本職はダブルス。柳くんも全国区プレーヤーというべき実力・実績の持ち主です。
仁王雅治
誰にも予想できないトリックプレーで相手を翻弄する、コート上の詐欺師(ペテンし)・仁王雅治くん。
彼の真髄であるイリュージョンは、あらゆるプレーヤーになりきることが可能です。
完全に人間をやめてしまっているテニス超人や、一部の超人技は完全に模倣できないこともあるようですが、全国区プレーヤーになることも可能。作中では手塚部長にイリュージョンし、零式サーブこそ模倣できなかったものの、無我の奥の扉まで自在に使いこなしてみせました。
『新テニスの王子様』ではさらにレベルが上がり、海外の高校生にもイリュージョンできる領域にまで達しています。
そもそもイリュージョンは仁王くんの素のスキルが高いからこそできる芸当。全国区プレーヤーである手塚部長にイリュージョンできている仁王くんのスキルは、全国クラスと考えるべきです。
さらに関東大会ではイリュージョンを使わない状態で大石・菊丸ゴールデンペアを叩き潰しています。しかもイリュージョンは全国大会決勝で不二くんと戦うまで使ってこなかったそうなので、仁王くんは全力を出さずとも全国レベルの選手に勝てる実力者ということです。
やはり仁王くんも間違いなく全国区プレーヤーですね。
切原赤也
来年度の立海大は彼の活躍にかかっていると言っても過言ではありません。2年生エース・切原赤也くん。
赤也くんは他のレギュラーたちより学年が1つ下のため、実績や知名度という面では一歩劣ると思われます。特にBIG3と比べると、全国ではまだ無名なほうでしょう。
しかし、その実力は立海大レギュラーにふさわしいレベル。OVAでは入学直後にBIG3に実力差を見せつけられたものの、上級生を壊滅させている姿が描かれました。この上級生の中には、関東・全国大会で優勝したときの団体戦メンバーも含まれていたと思われます。
作中で赤也くんは、関東大会前に立海大OBと連戦。その後、大会で全国区の橘さんを14分で狩っています。関東決勝で不二くんに敗北したものの、当時の不二くんは覚醒し、手塚部長を凌ぐ領域に達していましたから、やはり全国区プレーヤー相当の実力がないと赤也くんには勝てないということです。
1年生のときに上級生を壊滅させていることから、赤也くんは1年前から立海大のレギュラーだった可能性が高く、昨年の全国大会優勝にも貢献していると考えられます。
BIG3ほど明確ではありませんが、赤也くんも全国区プレーヤーに認定するべき選手でしょう。来年は確実に全国区扱いでしょうね。
柳生比呂士
「紳士(ジェントルマン)」という二つ名で呼ばれつつ、その裏で詐欺プレーを愛好してそうな柳生比呂士くん。
柳生くんも立海大のレギュラーであり全国区プレーヤーなのですが……ちょっと怪しいところ。
というのも、柳生くんは得意の超高速ショット「レーザービーム」以外に強みといえる描写が少なく、ここまでに紹介した立海大の選手たちと比較すると実力的に劣る感じが否めないのです。
レーザービームはまともに返球されたことがないため、ストロークに限定すればおそらく最速なのでしょうが、それだけで全国レベルの猛者と相対できるかというと、なんともいえないところ。
『氷帝VS立海』では長らくシングルスから離れていた宍戸さん相手に負けてましたので、この点も「柳生くん全国区プレーヤーじゃない疑惑」を強めているポイントです。
ただ、柳生くんは仁王くんとダブルスを組んだ関東大会決勝で、大石・菊丸ペアをねじ伏せています。柳生くんはシングルスよりダブルス、特に仁王くんとのダブルスでこそ全国レベルの実力が発揮できる選手なのかもしれません。
つまり柳生くんは「(ダブルスでなら)全国区プレーヤー」という条件付きなのかなと思います。
ちなみに、アニメ版での柳生くんは元ゴルフ部で、テニスの才能があることを見抜いた仁王くんにスカウトされてテニス部に入部。その後数ヶ月で立海大のレギュラーになり、仁王くんより強くなっているという怪物です(必殺技は「ゴルフ打ち」)。
この設定が原作にも反映されているとしたら、「柳生くんの全国区プレーヤーじゃない疑惑」を払拭できそうですね。
丸井ブン太
ボレーの天才・丸井ブン太くんは、後述するジャッカルくんとのダブルス専門選手です。
竜崎先生が言った「手塚が7人いる」にはブン太くんも含まれているのですが、ダブルス選手の彼がシングルスでも手塚部長レベルの強さを発揮できるのかというと……微妙!
ブン太くんのプレースタイルは、サーブ&ボレーヤー。サーブ&ボレーは攻撃的なネットプレーが主体になる戦い方で、昔はサーブ&ボレーがテニスの基本戦術でしたが、現代テニスでは考え方が変わりつつあります。ラケットの性能が良くなり、ベースラインからでも強力なショットをバコバコ打てるようになった昨今、サーブ&ボレーを主体とする選手は少ない印象です。
もちろん、サーブ&ボレーが時代遅れで弱いプレースタイルなんて言うつもりはありません。ただネットに近づいてプレーする分、相手が打つショットを速いタイミングで対応しなければなりませんし、足元や頭上など処理が難しいコースが弱点となるため、攻撃的なスタイルである反面、隙も多いスタイルと考えられます。
ネットに出るまでのサポートをしてくれるペアがいるなら、サーブ&ボレーの難度は下がり、むしろメリットの多いスタイルとなるでしょう。
そんなサーブ&ボレーヤーのブン太くんは、やはりダブルスでこそ輝く選手であり、先述の柳生くんと同じく「(ダブルスでなら)全国区プレーヤー」という評価なのではないかと思います。
ジャッカル桑原
ラーメン屋の息子・ジャッカル桑原くん。常人離れしたスタミナから、ついた異名は「4つの肺を持つ男」。
スタミナを活かしたコートカバーリングで、ブン太くんとのダブルスでは守備を担当。ブン太くんが確実に決められるチャンスボールを相手に打たせるまで、粘りに粘り続けます。
ジャッカルくんはダブルス専門選手。攻撃をペアのブン太くんに任せ、自分は守備に徹底することでシナジーを発揮します。そのためジャッカルくんも、シングルスで全国区プレーヤーと認定されているわけではないかもしれません。
ただ、テニスの試合で勝つために守備というのは非常に重要な要素。極論、どんな打球にも追いつけ、ミスをすることなく、カウンターショットを叩き込めれば試合には負けません。
『新テニスの王子様』作中で鬼先輩は「鉄壁の守備こそテニスにおいて最強」と言っていますし、ドイツ代表の世界最強・ボルクプロもカウンターを主体とした守備的なプレーヤーです。
また鬼先輩の理論はテニプリの作中に限ったものではなく、現実のテニス界にも共通しているのです。長年世界1位に君臨し続けたジョコビッチも、ボルクプロのようなカウンター型のテニスで勝ちまくってきました(ボルクプロのプレーはジョコビッチが元ネタの可能性が高い)。
これらの点を踏まえると、抜群の持久力で中学最強クラスの守備力を発揮するジャッカルくんは、ダブルスが本職ではあるものの、シングルスでも全国区レベルの実力があるかも……?
やっぱり立海大レギュラーは全員が全国区プレーヤーだった
ここまで紹介した通り、立海大のレギュラーは全員が全国区プレーヤーという評価を受けるに値する実力者だといえます。
ただし、柳生くんやブン太くん、ジャッカルくんのように「ダブルスでなら」という前提条件が付きそうな選手もいるため、竜崎先生の言う「手塚が7人いる」はやや誇張した表現だったかもしれません。
もし竜崎先生の発言が「(関東大会までの、怪我で本領が発揮できなかった)手塚部長が7人いる」というニュアンスだったとしたら、立海大に対する評価はそこまでズレていないように思います。