東京都内のテニス強豪校で、全国大会の常連でもある氷帝学園中等部。
男子テニス部は王者・跡部景吾様を筆頭に、200人以上の部員から選りすぐったレギュラーメンバーで躍進を続けてきました。
しかし、跡部様が3年生になった年の氷帝は、大会での早期敗退を繰り返しています。その原因には「舐めプ癖」があると思うのです。
そこで今回は、氷帝に根付く舐めプ癖をまとめ、その改善方法を考えていきます。
氷帝の強さと実績
まずは氷帝の強さと実績を見ていきましょう。
氷帝は東京都の代表校。作中の都大会では第1シードでした。おそらく昨年の都大会で優勝しています。東京都最強のテニス部と言って差し支えないでしょう。
また昨年の関東大会では立海大に敗れたものの準優勝。全国大会ではベスト16まで勝ち進みました。
1年前の実績だけを見ても、氷帝の強さは一目瞭然。紛うことなき強豪校です。
氷帝をここまで強いチームに仕立て上げたのは、現在高校3年生の越智月光先輩。越智先輩は氷帝学園中等部のOBで、彼が入部して以降、氷帝の知名度は全国区になったそうです。
越智先輩が卒業後、入れ替わりで入部したのが跡部様。入部初日に当時の先輩全員をぶっ倒し、氷帝のキングの座を手に入れました。跡部様が1年生のときの2・3年生には、越智先輩と一緒に団体戦に出場し、全国大会を経験した部員がいたと思われます。そんな上級生をも倒してしまう跡部様……越智先輩が残した「最強」のバトンを無自覚に引き継ぎました。
さらに跡部様は、跡部財閥のマネーパワーを行使して氷帝内の環境を強化。トレーニング施設を作ったり、正レギュラー1人ずつに専任コーチをつけたりしました。その効果か、男子テニス部は215人が所属するマンモス部活動に。
215人の中で、団体戦に出場できる正レギュラーはたった8人。この少ない枠を競って、部員たちは切磋琢磨しているのです。強くなるわけですね。
そして氷帝は、榊監督の方針で「実力主義」を徹底しています。一度でも負ければ、二度と公式戦で起用されません。特に正レギュラーは負けが許されないプレッシャーにさらされ続け、常に腕を磨き上げることが求められます。
もし既存のレギュラーが負けたとしても、氷帝というチームはとしては、215人の中から新しい才能を発掘してブラッシュアップできる……氷帝はこのような厳しい体制の中、力を高めているのです。
氷帝に見られる舐めプ癖
テニスの強豪校である氷帝。しかし強豪校であるがゆえか、チーム、そして個々の選手に舐めプ癖が散見されます……
ここからは、作中で見られる氷帝の舐めプをまとめていきます。
関東大会まで正レギュラーの半数を温存
氷帝の舐めプ癖は、チームとしての方針からも見て取れます。それが「関東大会まで生レギュラーの半数を温存する」というもの。
都大会に出場した団体戦メンバーのうち、正レギュラーは跡部様、樺地くん、宍戸さん、ジローくんの4人。残りは2軍以下の準レギュラーで構成されていました。
準レギュラーといえど、正レギュラーを除いた207人の中から選ばれていますから、そこそこの猛者であることは予想できます。しかし、名門チームの強豪選手には到底歯がたちません……都大会の準々決勝くらいまでは何とかなりますが、それ以降の試合で勝つのは難しいでしょう。
建前として氷帝は、都大会までの準レギュラー起用を「正レギュラーになれなくても試合をするチャンスがある」という体で行っている様子。聞こえは良いですが、東京都最強の学校ゆえの怠慢とも考えられるでしょう。「都大会程度なら準レギュラーでも十分」みたいな……現にその方針で昨年の都大会で優勝し、第1シードになっているという成功体験も、氷帝の舐めプ癖に拍車をかけてそうです。
「20分で試合を終わらせる」と豪語する宍戸さん
都大会に出場した正レギュラーの一人である宍戸さん。当時の彼はロン毛でイキリ散らしており、「俺が20分で(試合を)終わらせてやる)と発言。1セットマッチの試合とはいえ、20分は超ハイスピード。宍戸さんは「ワンサイドゲームかつ、ほぼラリーせずに終わらせる」と言っているようなものです。凄まじい自信ですね。
先述のとおり、正レギュラーは215人中8人。それだけの倍率の中で枠を勝ち取ったのですから、自信にもなるでしょう。
ただ、都大会は当時の宍戸さんがイキリ散らせるほどレベルの低い大会ではないんですよね……例えば、青学には跡部様と互角かそれ以上の手塚部長が在籍。さらに天才と名高い不二先輩に、全国大会を経験した大石・菊丸ゴールデンペアまでいます。この年の青学は、まさに黄金世代です。
他にも、山吹中はダブルスが2組とも全国レベルで、千石さんと亜久津くんという強力なシングルスプレーヤーが所属。聖ルドルフには全国区プレーヤーの赤澤さん。こんな感じで、宍戸さんでは勝てなさそうな選手が都大会にもゴロゴロいます。
残念なことに宍戸さんは、不動峰戦で橘さんという最悪のジョーカーを引いてしまうことに……橘さんといえば、昨年の全国大会ベスト4の獅子学中でエースだった超強豪プレーヤー。跡部様でさえ勝てるかどうかわかりません。そんな橘さん相手にも「20分で終わらせる」と息巻いていた宍戸さんですが、悲しいかな、15分でボロ負けしてしまいました。油断していなければ、もう少し善戦できたかもしれませんね。……いや、無理だったかな?
急造ダブルスに負ける忍足・向日ペア
都大会を5位通過し、ギリギリで関東大会に滑り込んだ氷帝。かなりの綱渡りでしたが、それでも舐めプは止まりません。
1回戦、青学との試合でダブルス2に出場した忍足・向日ペアは、これでもかと舐めプを決め込みます。というのも、相手が英二くん&桃ちゃんという、試合開始直前に組むことが決まった急造ダブルスだったため。本来なら大石・菊丸ゴールデンペアが出場するはずでしたが、大石くんが怪我をしてしまったため桃ちゃんが代理で出場することになりました。
忍足・向日ペアは氷帝を代表するダブルス。長くペアを組んでおり、息はバッチリです。一方で英二・桃ちゃんペアは初めての組み合わせで、試合が始まってもチグハグ。忍足・向日ペアが一方的にゲームを積み重ねていきました。
この余裕が舐めプを誘発してしまったのでしょう。特に向日くんは、自身と同じくアクロバティックプレーを得意とする英二くんを挑発。自分の技を見せつけるようにダイナミックな動きを連発しました。
このまま忍足・向日ペアが圧勝するかと思いきや、状況が一変。英二くんが桃ちゃんをサポート、桃ちゃんは大石くんに教わったダブルスの心得を実践することで、流れが青学側に傾きます。
さらに、試合の序盤から飛ばしまくっていた向日くんが終盤に体力切れ。まともに行動できなくなり、忍足くんVS英二・桃ちゃんという構図になってしまいました。
結果、4-0でリードしていた忍足・向日ペアは、4-6と6ゲーム連続で取られ、逆転負け。急造ペアを前にした油断が勝敗を分けたと言っても過言ではないでしょう。
実はこの忍足・向日ペア、関東大会前に氷帝内で行った宍戸・鳳ペアとの試合にも負けています。宍戸・鳳ペアも急造ダブルスで、しかも宍戸さんは正レギュラー落ちしていたことから油断してしまったそうです。やっぱり舐めプしたのでしょうね。
氷帝の全力がお披露目となった関東大会。その初戦で登場した忍足・向日ペアが舐めプで逆転負けしたことで、氷帝の舐めプイメージが強まってしまったように思います。
寝てばかりのジローくん
対戦相手だけでなく、「テニスそのものを舐めているのではないか?」と思わされるのがこの男、ジローこと芥川慈郎くん。
彼は関東大会の青学戦にて、応援せずずっと寝ていました。自分の試合が始まってもしばらく寝ぼけており、睡魔に襲われまくってしまう体質の様子。それだけでなく、OVAでは練習中も寝ていてサボりまくっていることが判明。何のためにテニスをやっているのか、ジローくんの頭の中を覗いてみたくなるほど、テニスよる睡眠が優先なのです。
本人は舐めプしているつもりはなく、ただ眠いから寝ているだけなのでしょうが……あまり褒められた態度ではないですよね。それでも、不二先輩の弟・裕太くんを15分で倒すほどの実力を持っているから、正レギュラーとしての地位を確立できているのでしょう。実力主義の氷帝だからこそといった感じでしょうか。他の部活なら、めちゃくちゃ怒られてそうです。
そんなジローくん、青学の不二先輩との試合では得意のマジックボレーを封じ込められ、1ゲームしか取れず……今までサボってきたツケが全て回ってきたかのように惨敗してしまいました。
この惨敗が影響してか、全国大会での青学戦でジローくんは補欠に……これも実力主義だからこそですね。負ければ普段の素行の分も自分に返ってきて、立場が一気に悪化してしまう……ツラい……(一応、ジローくんは全国大会の1・2回戦には出場しているので、完全に干されたわけではありませんが)
リョーマを警戒しない日吉くん
関東大会での氷帝VS青学の試合は、2勝2敗1ノーゲームで補欠同士の試合で決着をつけることになりました。
氷帝からは、次期部長と言われる準レギュラーの日吉若2年くんが出場。対するは、青学期待のルーキー・越前リョーマ。両校の未来を担う若獅子対決です。
リョーマは1年生で、中学の大会に出場するのは今年が初めて。さらに小学生の頃はアメリカにいたので、日本ではほぼ無名の選手だったことでしょう。相手に舐められてしまうのも仕方ありません。
しかし、都大会の時点でリョーマは、他校にも名が知れ渡っているプレーヤーを倒しています。「左殺し」の不二裕太くんに、山吹中の怪物・亜久津仁くん……その活躍、実績は、青学と同じ東京都内の学校である氷帝にも伝わっていたはず。現に跡部様は、ストリートテニス場でリョーマを見たとき「あの亜久津を倒した」と、認識していました。
つまり、氷帝内でリョーマは、警戒すべき選手の一人だと認められていたと思われます。
では実際にリョーマと対戦した日吉くんはというと……目の前のリョーマをよそに、自分が試合に勝って正レギュラーの座に着くことしか考えてませんでした。
リョーマのツイストサーブを食らい、ようやくエンジンをかけましたが、そもそもの実力差を覆すことはできず……ドライブBの連打という、戦略も何もない「逆舐めプ」により敗北。
リョーマは1年生といえど、アメリカのジュニア大会を4連覇し、都大会を無敗で勝ち進んでいます。公式戦に出られない準レギュラーである日吉くんが舐めて良い相手ではありませんでしたね。
ゲーム感覚で持久戦を楽しむ跡部様
氷帝にこれほどまで舐めプ癖が根付いているのは、絶対的王者であり、部員にとってカリスマでもある跡部様の影響かもしれません。
跡部様は持久戦を得意としているスタミナお化け。長時間のプレーで相手を疲弊させつつ、ずば抜けた眼力(インサイト)で弱点を見抜き、そこを突きまくる……肉体的にも、精神的にも「敗北」の2文字を与える。そのようなプレースタイルで戦います。
しかし、全国大会にて跡部様の持久戦はゲーム感覚でやっているだけということが、榊監督の口より明らかにされました。
跡部様は相手を平伏させるため、守備的なプレーでわざと試合時間を伸ばしている。けれど、実は超攻撃型のテニスを得意としており、もっと早く相手を仕留めることが可能……そう、跡部様にとって持久戦は遊びだったのです。
跡部様本人も、手塚部長と試合をした際に「30分もあれば俺様は誰にだって勝てる」と考えていました。また、宍戸さんが「20分で試合を終わらせる」とイキっていたときも「俺なら15分だ」と返していました。
このことから、榊監督の発言は嘘でも間違いでもないのでしょう。跡部様は今までめちゃくちゃ舐めプをしてきたと……氷帝の舐めプ癖を辿ると、源流は跡部様にあるのではないかと……
ただ、跡部様の舐めプと他の部員の舐めプには決定的な違いがあります。それは、跡部様は「舐めプをしても、負けてはいない」ということです。
舐めプしても良いんです。負けなければ。完全実力主義の氷帝において、テニスは試合結果が全て。舐めプしても勝てばオールOK!その辺、跡部様はしっかりやってきたのだと思われます。
舐めプしてもなお負けないなんて、跡部様みたいな、ガチのマジの同世代最強格プレーヤーでないと無理でしょうけどね。氷帝正レギュラー全員に跡部様と同じ基準を求めるのは酷ってものです。
氷帝が脱・舐めプをするには?
氷帝の舐めプ癖がこの先も深刻化すると、来年、再来年とさらに実績が悪化する可能性があります。特に跡部様が卒業し、イギリスへ留学してしまうであろう来年以降は、今までの体制だと他校に足元を掬われてしまうでしょう。というか、作中で既に不動峰に油断して大敗し、「全国大会常連校」という氷帝の輝かしい実績が崩壊しかけたんですよね。
氷帝にとって「脱・舐めプ」は必須でしょう。では、どうすれば良いのか。私なりに考えてみました。
地区大会・都大会でも正レギュラーを起用
氷帝は都大会と関東大会で早期敗退したという事実を受け入れ、地区大会・都大会という、準レギュラーを起用してきた大会から正レギュラーを投入し、全力で挑むようにしましょう。
榊監督が主導して、チームの意識改革を行うのです。
「本来なら試合に出場できない準レギュラーにも試合を経験させる」という方針は素敵だと思います。しかし、氷帝は実力主義を掲げ、全国No.1を目指すテニスの超強豪校。部員たちは思い出作りのために氷帝テニス部に入ったわけではなく、本気でテニスをやりたいと思っているはず。そして「実力で試合に出られないのならば仕方なし」という覚悟を持っていることでしょう。
お情けで準レギュラーを起用し、結果として関東・全国大会に出場すらできないのであれば、氷帝というチームの存在意義に関わります。そんな中途半端を許容できるような人間は、氷帝テニス部に入らないのではないでしょうか?
一方で、200人以上の部員の中から選ばれた正レギュラーは、関東・全国でも勝ち上がれる実力を備えているはず。そんな正レギュラーを起用する前に負けてしまっては、実力主義の意味も薄れてしまうと思います。
また、氷帝が団体戦メンバーの半分以上を準レギュラーで固めても都大会で優勝できたのは、過去の話。来年以降の都大会は青学、山吹、不動峰と、全国を経験した猛者たちが揃う激戦区になります。
特に青学は全国大会で優勝しましたから、その実績を見て有望な小学生が青学に進学する可能性が極めて高いでしょう。リョーマのようなルーキーが2〜3人そろうなんてことも考えられるかもしれません(立海大BIG3みたいに)。
そして来年の不動峰はめちゃくちゃ強い……!今年の団体戦メンバーのうち、橘さん以外の6人が来年も残留。全員全国大会で1回以上勝利を挙げています。それから不動峰は公立校です。学費の問題で私立校には通えないけれど、強豪校でテニスをやりたいという小学生の進学先としてピッタリ。やはり来年、スーパールーキーが入部するかも。
氷帝にも戦力となる新入部員が加わるとは思いますが、他校も同じくらい、あるいはそれ以上にパワーアップする可能性があります。
都大会は以前のように、準レギュラーを使っても勝てる大会ではないと自覚するべきしょう。
宍戸さんによる指導
氷帝には、舐めプの極地から微塵の油断もない選手へと進化を遂げた男がいます。そう、宍戸さんです。
宍戸さんは橘さんに敗北した後、己の弱さを実感し、後輩の長太郎くんと血のにじむようなトレーニングに励みました。そしてテニススキルを磨き上げるだけでなく、心を入れ替えることにも成功、どんな相手にも油断せず、全力で挑む強い精神を手に入れました。
敗北の淵を経験した宍戸さんは、後に出場したすべての試合で勝利。しかも、U-17W杯後に開催された立海大との親善試合ではシングルスで柳生くんに勝ちました。柳生くんは立海大のレギュラー選手で、全国区プレーヤー。宍戸さんにとって格上の相手でしたが、ど根性で勝利をもぎ取ったのです。
このような宍戸さんの精神こそ、今後の氷帝に最も必要なものでしょう。
おそらく宍戸さんは氷帝の高等部に進学するはず。来年も中等部と同じ敷地内で生活しているでしょう。高等部でテニスをやるとしたら、そっちはそっちで大変だと思いますが、時間があるときに宍戸さんに中等部にも顔を出してもらうべきです。そして後輩たちに「宍戸マインド」を植え付けていきましょう。
宍戸さんとダブルスを組んできた長太郎くんには「宍戸マインド」が十分受け継がれていると思いますが、次の部長である日吉くんは氷帝の舐めプ癖を色濃く継承しています。なんてったって、日吉くんの目標は舐めプの王・跡部様だったわけですからね。
しかし、日吉くんに跡部様ほどの実力を求めるのは無理がある。ならば、「宍戸マインド」に染め上げましょう。「宍戸マインド」を持てば、全国区プレーヤーに匹敵する力を発揮し得る……日吉くんと跡部様の間にある実力差を埋めてくれるかもしれないのです!
幸いなことに、跡部様は来年イギリスに留学するので氷帝の敷地内にはいません。その隙に宍戸さんが氷帝テニス部を支配し、「宍戸王国(キングダム)」に作り変えるのです!
そうすれば、来年は実力で全国大会に出場できること間違いなし!