東京都はテニスの強豪中学が集まる激戦区です。
昨年度の関東大会で準優勝だった氷帝に、ベスト4の青学、ダブルスが2組とも全国へ進出した山吹、日本各地から選手をかき集めている聖ルドルフ、全国区プレーヤーの橘さんと後輩たちによって復興した不動峰……
こんな鬼強チームが参加する東京都大会から関東大会へ勝ち進むには、上位5位に入る必要があります。
作中の都大会では、1位青学、2位山吹、3位不動峰、5位氷帝となり、強豪校が順当に(氷帝はギリギリでしたが)関東大会へ進出を決めました。
その中で異色の存在が、4位の銀華中。実力で都大会ベスト4まで進んだのに、なぜか部員全員そろいもそろってビビり&卑劣。紛れもない強豪校なのですから、せめてテニスの腕前くらいは自信を持って良いと思うんですけどね……
今回は地味に強豪校・銀華中について、紹介したいと思います。
銀華中テニス部の実績
冒頭で紹介したように、銀華中は都大会ベスト4に入りました。部長の福士ミチルくんを筆頭に、準々決勝では北条中という学校を倒したそう。青学のデータマン・乾くんが「あの北条中と倒した」と評価し、独自に銀華中へ偵察しに行くほどでしたから、北条中は都内の強豪校の1つだったのでしょう。そんな学校を倒してのベスト4です。
ちなみに北条中は5位決定戦で負けた後、亜久津くんにボコボコにされていました(物理的にではなくテニスで)。
準決勝で青学と対戦することになった銀華中ですが、選手全員が突然の腹痛に襲われ棄権負け。その後、3位決定戦で不動峰と戦ったと思われます。不動峰との試合について、描写は一切なし。しかし、銀華中の最終順位は4位だったので、不動峰には負けたと見て間違いありません。
ベスト4まで勝ち進んでから連敗してしまいましたが、「東京都大会4位」という成績は、昨年度優勝校で第1シードだった氷帝よりも上。実に誇らしいものです。
そして関東大会へ進んだ銀華中。トーナメントの抽選で、初戦から立海大附属中と戦うことが決まりました。立海大といえば、関東大会・全国大会ともに連覇している最強のチーム。さすがの銀華中といえど、全く歯が立たなかったようです。描写なく敗退していました。
それでも何とか再起を図ろうと、銀華中は青学の強さの秘訣である乾特製ドリンクを入手。それをベースに作った栄養ドリンク「銀華三昧」を全員で一気飲みし、パワーアップを狙います。が、あまりにも刺激が強すぎたのでしょう。全員病院送りとなりました。
銀華中の作中での最終実績は、「東京都大会4位、関東大会初戦敗退」です。全国大会まで駒を進めることはできなかったものの、テニスの強豪校と言って差し支えない結果でしょう。
銀華中の選手個人も警戒されている
銀華中は都大会ベスト4まで進出しただけあり、個々のレギュラー選手も他校から警戒されています。作中では、図書館にいた手塚部長と大石副部長が銀華中の選手について話していました。
以下は大石副部長の発言です。
「レギュラーの層も厚いようだ。福士に田代、鈴木」
「レギュラーの堂本、パワーサーブは定評あるよ。身長もあるしやっかいだ」
手塚部長は「中学テニス界で最もプロに近い男」と言われる全国区プレーヤー。そして大石副部長は、2年生の時点でダブルスで全国大会へ勝ち進んだゴールデンペアの一角。
全国レベルのこの2人から警戒されていた銀華中の選手たち……その真の実力は侮れません。
成績をさらに伸ばせたかもしれない銀華中
銀華中は、後述する「ある事件」をきっかけにプライドがへし折れ、弱腰になってしまいました。しかし、もしかしたら「都大会4位」よりもっと好成績を残せていた世界線があったかもしれないのです。
銀華中は、都大会準決勝で対戦することになった青学の前評判に恐れをなしていました。それでも試合直前まで棄権するつもりはなく、戦意は消えていなかったのです。
そんな銀華中の意思を完全に折った存在がいます。そう、青学のスーパールーキー・越前リョーマ。リョーマは都大会準決勝の数日前、同級生の桜乃ちゃんと朋ちゃんにテニスを教えている最中に、練習をしていた銀華中と接触。部員全員を次々と倒し、壊滅させました。
この「事件」が、銀華中に強いトラウマを植え付けたのです……リョーマが青学に在籍していることを知り、銀華中の面々は試合前に心が折れてしまいました。
ただでさえ名門と名高い青学と戦わなければならないプレッシャー……リョーマと再会したことで呼び起こされたトラウマ……これらが重なり、銀華中は選手全員が腹痛に見舞われ、テニスどころではなくなってしまったのです。
結果として青学戦は棄権負けとなった銀華中ですが、真っ向から試合をしていれば、勝敗はどうなったかわかりません。もしかしたら青学に勝利し、続く決勝で山吹にも勝ち、都大会優勝を果たしていたかも?
しかも、都大会で優勝できれば関東大会でシード枠に入り、初戦で立海大と戦う事態も回避できました。作中では都大会を優勝してシードに入った青学が初戦で氷帝と戦うことになりましたが、これはくじ引きの結果です。銀華中が優勝してシードに入っていたら、氷帝ではなく別の学校との初戦になっていた可能性が考えられます。そうなれば銀華魂が炸裂!優勝は難しかったと思うものの、初戦敗退は免れたかもしれません。
ほんのちょっとしたボタンのかけ違いで、銀華中はさらに成績を伸ばせた可能性があるのです。
銀華中の問題点
ポテンシャルはありそうな銀華中ですが、現実は残酷。都大会ベスト4に進んだ後、青学、不動峰、立海大と連敗し、彼らの夏は幕を閉じました。成績は良いのに、負け続きで引退したことは、将来苦い思い出になることでしょう。
しかも、成績で見ると格下である聖ルドルフからU-17日本代表合宿の参加者が出ているのに、銀華中からはゼロ。散々な扱いを受けております。
強豪校であるはずの銀華中が悲しき末路を辿ってしまった理由には、彼らが抱えるいくつかの問題点が影響していると思われます。その問題点を見ていきましょう。
練習せずに見知らぬ少女をいじめる
リョーマにテニスの練習を見てもらっていた桜乃ちゃん。良いところをアピールしようと力んでしまい、ボールをホームランしてしまいます。
リョーマの似顔絵を描いた、桜乃ちゃんにとって特別なボール。そのボールは運悪く、練習中だった銀華中のコートに入ってしまうことに……
ボールを探すため、銀華中のコートに入ることを許された桜乃ちゃんでしたが、嫌がらせを受けます。なんと、部長の福士ミチルくんが練習用のボールを撒き散らし、桜乃ちゃんがボールを探すのを妨害したのです。
それでも必死に探す桜乃ちゃん。しかしボールは見つかりません。それもそのはず、桜乃ちゃんのボールは福士くんたち銀華中部員が先に見つけ、隠していました。
銀華中は桜乃ちゃんに対して何か恨みがあったわけではありません。ボールを探しに偶然やってきた初対面の桜乃ちゃんを、練習を中断してまでいじめただけ。完全に無意味な行為なのです。
こんなことを、部員全員で結託してやっている銀華中……練習をしようよ、練習を!桜乃ちゃんのボールを見つけたなら、すぐに渡して帰ってもらい、練習を再開しようよ!
練習そっちのけで見知らぬ少女をいじめる。このような体制の銀華中では、大会で勝ち進むのにも限界があるでしょう……
対戦相手を過大評価
青学と戦う直前、銀華中のメンバーは青学レギュラーたちの恐るべき実力を、噂ベースで語り合っていました。
確かに青学レギュラーはめちゃくちゃ強い。銀華中が恐れをなすのも仕方なし。しかし、過大評価な面もあったと思うのです。
例えば桃ちゃんについて。銀華中は「桃ちゃん得意のダンクスマッシュで死人を出した」という噂を信じ込んでいました。これは、準々決勝の青学vs聖ルドルフで、桃ちゃんが柳沢くんに放ったダンクスマッシュのことを指しています。柳沢くんは、桃ちゃんの全体重が乗ったダンクスマッシュを顔面にモロにくらい、失神。そのまま棄権負けとなりました。
この出来事に尾ひれはひれが付き、「死人を出した」という噂になって銀華中に伝わってしまったようです。柳沢くんは生きています。
実際に目にしたわけではない噂話を信じて恐れをなしてしまう銀華中。ちょっと弱腰過ぎる気がします。都大会ベスト4まで進んだその実力こそ、本当に信じるべきもの。もっと自信を持って試合に臨まなければ、勝てる勝負さえ捨ててしまうことになるでしょう。
もしかしたらU-17日本代表合宿についても、本当は声がかかっていたのに「バケモノたちが集まる修羅の場だ」などといった恐れから辞退したのかもしれません。……もったいない!実にもったいないぞ銀華中!
栄養ドリンクで小手先の強化を図ろうとする
関東大会で敗北した銀華中。これで福士くんたち3年生は引退となりました。中学生の部活の大会に出場することはないでしょう。
ではテニスそのものを辞めてしまうのかというと、そうではない様子。銀華中の面々は引退後のその先、おそらく高校進学後のテニスを見据えて、自分たちの強化を図ろうとしていました。その精神、素晴らしい。
ですが、方法が良くなかった……学校に帰って練習をするのではなく、特製栄養ドリンク「銀華三昧」を飲むことでドーピングしようとしてしまったのです。その結果、全員病院送り。しばらくテニスができない状態になったであろうことは、想像に難くありません。
青学を真似ようと思ったのでしょうが、「あらゆる栄養素がぎっしり詰まった特製ドリンクを飲めば強くなれる」という安易な考えで、小手先の強化方法を実践してしまったのは大きな間違い。
たしかに青学の選手たちは、乾くん特性の「乾汁」を練習中に飲まされていました。しかし、乾汁を飲んで強くなったわけではありません。気絶するほど強烈な味の乾汁を練習のペナルティとすることで、各選手に「絶対に飲みたくない」という意識を芽生えさせ、気を引き締めるための道具として使っていました。
つまり、青学の選手たちは乾汁を飲んだから強くなったわけではなく、飲まないため今まで以上に練習に集中したから強くなったのです。
その点を勘違いした銀華中……安易な強化を図ろうとした結果、凄惨な事態を自ら招いてしまいました。今後は「練習の量と質を見直して強くなる」という、根本的なことに目を向ける必要があるでしょう。
銀華中よ、生まれ変われ!
都大会4位という銀華中の実績は、誰が見ても素晴らしいもの。きっと来年は、東京都内の強豪校に数えられていることでしょう。
ただ、青学や氷帝、山吹、不動峰といった全国大会へ進出するような鬼強チームと本当の意味で肩を並べるには、改善すべき問題がいくつもあるようです。
リョーマによる奇襲、都大会と関東大会での敗北、「銀華三昧」による食中毒……これらの出来事は銀華中にとって大ピンチだった反面、現状の問題点を浮き彫りにし、変えていくチャンスだったとも思うのです。
銀華中よ、今こそ生まれ変われ!そして来年は、都大会、関東大会、全国大会を制覇するのだ!!ハァァーーーッ銀華ぁ!!