私の名前はジロギン。
年齢25歳。
自宅は東京都ピー区の住宅街にあり、結婚はしていない。
仕事は「ダークネス株式会社」の営業職で、毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。
タバコは吸わない、酒はたしなむ程度・・・
と私の紹介はこんなところにしておこう。
私の勤める会社では、社員全員が『Office240』と呼ばれる能力を携えている。
『Office240(オフィスニーヨンマル)』とは?
サラリーマンが月曜〜金曜の9:00〜18:00の間だけ使用することができる特殊能力の総称!省略して「Office(オフィス)」と呼ばれることが多い!
1人につき1つの能力を保有しているため、その数は全国のサラリーマンの数だけ存在し、専門家も正確な数は把握できていない!
各自が快適な会社員生活を送るために発現させた能力ではあるが、中には能力を応用し、他の社員の仕事を妨害する輩もいる!
どの会社でもこのOfficeを使って、悪事を働く者も多い。もちろんうちの会社も例外ではない。
先日はこんなことがあった
社内で取引先と電話で連絡をするジロギン。
えっ?契約書はファックスした?おっかしいな・・・届いてないんですよね・・・
はい、すみません、3度目ですもんね、恐れ入りますが、もう一度送っていただけますか?
どうした?
いや、この前契約した会社から、契約書をファックスで送ってもらってるんですけど、一向に届かないんですよ・・・
コピー機に付属してるファックスが壊れてるのかもな?
何度確認しても特に故障はなさそうなんですよね・・・
(まずいぞ、このままじゃ明日の営業成績発表でビリになってしまう)
〜翌朝〜
(3カ月連続ビリだ・・・昨日の契約書が届いてれば・・・)
あー!ジロギンくんまた最下位じゃん!ウケるー!そんなに最下位好きなの?だったら一生底辺で這いつくばってろよこのミミズ野郎!
人事部のサトミ先輩!違うんですこれは・・・
(彼女の名前は佐藤サトミ。28歳独身。容姿淡麗な女性だが口が悪い。だが女性から罵られることが嫌いではない私にとってサトミ先輩はどストライクなのだ)
あ、私最下位の人間とのおしゃべりに割く時間ないの。これ以上話しかけると私のOfficeで消し飛ばすわよ?
そ、そんな・・・クソ・・・サトミ先輩に嫌われてしまった・・・何もかも契約書が届かないせいだ!どうなってるんだよ!
はー!やっぱり朝一の、まだだれも使ってない便所でブリブリするう○こは格別に気持ちいな!
これに並ぶ気持ちいことといえば、誰かさんの契約書をシュレッダーでビリビリにすることくらいだなぁ・・・
ブリブリとビリビリ・・・今日も絶好調だ!
(まさか!?)
また始まったよ、大田原係長の「契約書ビリビリ新人いびり」
えげつねぇな、営業成績でビリになりたくないからって他人の契約書をビリビリになんてするか?
大田原シゲル。54歳独身。出世から遠のいたいわゆるダメリーマン。
勤続32年の恩赦から係長になってはいるが、仕事をさぼり過ぎて上層部からの評判は最悪で・・・
しっ!聞こえるぞ!
(新入社員ジロギン・・・頑張っているようだが、オレはそういう若手の鋭意をへし折るのが大好きでね。
志が崩れる音、絶望への喘ぎ声はオレを高揚させてくれる・・・)
それを可能にしているのがこのオレ、大田原のOffice240!
『悪魔の覗き見(ビジョン)』
社内すべてのコピー機に届くファックスを監視カメラのように覗ける能力!
一見役に立たなそうだが、これでいつだれの契約書が送られてきたかが分かる!
この能力でジロギン!お前宛ての契約書がファックスで届いた瞬間にオレが回収しシュレッダーにかける!貴様の成績を落とすことなど容易いわけだぁ!
若いうちは下積み時代なんだ。理不尽な下積みに耐えてこそ立派な社員になれる。
向こう5年は、オレのトレーニングを受けてもらうぞ!まぁ、オレも成績最下位なんてゴメンだしな
〜夜〜
クソっ!私の契約書を捨てているのは大田原係長だと分かった!
だが、なぜ私の契約書だけをピンポイントで捨てられるんだ・・・?
それは係長の能力に関係している。彼はファックスで送られてきた書類の内容を覗き見ることができるんだ
日向(ひゅうが)先輩!そうだったんですね!
(この人の名前は日向ケンジ。28歳独身。入社6年目、若手のホープ。毎月営業成績は上位をキープ。
顔は水嶋ヒロ似のイケメン。完璧すぎて女性社員からは好かれているが、男性社員からは妬まれている)
過去にも大田原係長によって多くの新人が辞めていった。君と同じような仕打ちを受けてね
係長め・・・なんとかやつを地獄に落とす方法はないんですか!?
君のOfficeの能力はなんだったかな?
この私、ジロギンのOffice240は
『空気(クリア)』
気配を消して行動し、自分の居場所や動きを分かりくくする能力!
本気を出せば肉眼で直視されても見えない!
この能力を使ってよく仕事をさぼります!
・・・俺は君のような男が現れるのを待っていた。
君のOfficeと俺のOfficeを使えば、大田原係長に一泡吹かせられるかもしれないな・・・
〜翌朝〜
気配を消しながら書類をコピーし、コピー機を後にするジロギン。
いつの間にコピー機に・・・奴のOfficeか。
だがオレの「悪魔の覗き見(ビジョン)」には何も関係ない。
ほぅら、またお前宛ての契約書が届いたぞ・・・破り捨ててやる!
今月も最下位はお前だ!
コピー機にあったジロギン宛ての契約書をシュレッダーにかける大田原
〜こうしてまた1ヶ月が過ぎた〜
何?最下位がオレだと!?
おかしい!ジロギンのはずだ!やつ宛ての契約書はすべて捨てたはず・・・
本当に捨てたんですかね?私の契約書を?
なんだと!?
あんたが、紙を食べるヤギみたいにシュレッダーにかけていたのは、日向先輩のOffice「虚ろな影(イリュージョン)」によって細工した、ただの白紙だよ!
あんたが見ていたのは幻覚だったのさ!
日向先輩のOffice240
「虚ろな影(イリュージョン)」
は幻覚を見せる能力。
これで白紙をジロギンの契約書に見せかけていた!
そして私のOffice「空気(クリア)」で気配を消し、細工した紙をコピー機にばれないように置いていた。
私のOfficeは本気を出せば、肉眼でも見れないほど気配を絶てる。あなたのOfficeでも、私のOfficeを看破できなかったようだな・・・
ハメられていたのはオレの方・・・?
じゃあお前の契約書はどうやって受け取っていたんだ!?
私宛ての契約書はすべてファックスではなく郵送で送ってもらうよう先方に連絡しておきました。
これであんたの新人いびりも終わりだ!
クソ!日向ぁぁっ!!貴様!手を貸しやがって!
係長、私は何か悪いことをしましたかね?社内規則を破る真似はしていないと思うのですが?もちろん、ジロギンくんもね
クソクソクソクソクソう◯こ共がぁぁっ!
ありがとうございました、日向先輩!
係長も少しは懲りただろう。
そうだ、ジロギンくんに一言。係長の妨害が無くなったのに、ビリから3番目ってのはダメだぞ。
結局ポンコツじゃん!きゃははははは!
・・・