私の名前はジロギン。
今回紹介するのは、加藤 結衣(かとう ゆい:仮名)さんという女性が体験した話。
恋い焦がれる気持ちが燃え上がり過ぎてしまったエピソードです。
悪魔の棲む家
1年ほど前。
加藤さんは、夫が職場の女性と不倫していたことを知った。
結婚してから1ヶ月ほど経つと、夫の帰りが遅くなる日が増えた。
仕事が忙しいという雰囲気ではなさそうだったため、怪しく思った加藤さん。
夫を問い詰めると、同僚女性と関係を持っていることを白状した。
加藤さんと不倫相手の女性に面識はない。
しかし、既婚者と関係を持つなんてまともな女ではないだろうと思った。
夫は「不倫相手に対して恋愛感情はない」と言い、関係を解消することを加藤さんに約束した。
それから2週間ほど経ったある日のこと。
時刻は18時過ぎ。
仕事を終えて夕食の材料を買い、自宅のあるマンションに帰ってきた加藤さん。
夫の帰りを待ちながら、夕食の準備をしていた。
その最中、玄関の方からカチカチという音と、何かブツブツ呟く声が聞こえた。
音は間違いなく加藤さんの部屋の外から聞こえてくる。
そっとドアを開けた。
黒いパーカーに赤いスカートを履いた女性が廊下にしゃがんでいた。
女性は加藤さんに気づくと、睨みつけるような表情を浮かべた。
直後、ニヤリと怪しげな笑顔を見せ、足早に去っていた。
女性に見覚えはなかった加藤さんだが、それよりも妙な臭いが鼻を突くのが気になった。
足下を見ると火がついた新聞紙の束が置かれていた。
臭いの原因は新聞紙に染み込んだアルコールと焦げ。
このままでは大火事になると思った加藤さんは急いで風呂場へ行き桶に水を組んで新聞紙にかけた。
火が大きくなる前に鎮火できたが、マンションの廊下の壁が溶け出していた。
加藤さんはすぐ警察に通報。犯人と思われる女性の身なりを伝えた。
その日のうちに女性は逮捕された。
加藤さんの自宅マンション付近を歩いていたところを警察に職務質問され、カバンの中からライターとアルコール度数の高い酒瓶が見つかった。
さらに、女性は加藤さんの夫と不倫関係にあった張本人だと判明。
夫は「恋愛感情はなかった」と言っていたが、女性の方はかなり深い感情を抱いていた様子。
裁判にかけられた際、女性は犯行動機として「悪魔の棲む家を燃やして浄化しようと思った」と語った。
悪魔とは2人の関係を断った加藤さんのことだろう。
女性は加藤さんに対して強い恨みを抱いていた。
そして、家に加藤さんしかいない時を狙って放火しようとしたのだ。
判決は懲役2年。
裁判では反省の気持ちを述べて二度としないと誓っていた女性だが、恋の炎を完全に鎮火できたのかはわからない。
「刑期を終えた彼女がまたやって来るかもしれない」という恐怖がいまだにつきまとっている、と語ってくれた。
※ご本人や関係者に配慮し、内容を一部変更しています。
私たちは互いに「悪魔」になりうる?
加藤さんが炎に気づくのが少し遅ければ、大事になっていた事件だと思います。
マンション全体に火が回っていたかもしれません。
間一髪の恐ろしい出来事だと感じました。
「悪魔の棲む家」……この言葉も気になります。
加藤さんの視点で見れば、この女性こそ「悪魔」だと思いますが、その逆も然りだったようです。
自分の平穏を脅かす存在が「悪魔」なのだとするなら、私たち人間は互いに「悪魔」になりうるのかもしれません。