私の名前はジロギン。
今年の1月・・・と言ってももう1年近く前になるのか。
私は肺に穴が空いてしまう病気「気胸」にかかってしまい、人生初めての手術を受けた。自分としてはそんなに不安もなかったし、初めての経験で少し楽しみな感情もあったが、こういう時はお医者さんや看護師さんがいろんな言葉で不安を取り去ろうとしてくる。
思い出すなぁ、あの時、執刀医の先生が、
「気胸は君みたいなスラっとしたスタイルのいい人がかかりやすいから『イケメン病」なんて言われてるんだよ!はっはっはっ!」
と言ってくれ、励ましてくれたのだが、イケメンとスタイルがいいのは必ずしもセットではないのだ。スタイルがいいからといって必ずしもイケメンとは限らない・・・そんな残念な気持ちになった。
気胸の手術はそれほど難しい手術ではないそうなのだが、患者は「全身麻酔」によって眠らせられる。さすがに麻酔なしで手術したら死んでしまうだろう。私も呼吸器から麻酔を吸い、眠っているうちに手術が行われた。
手術における麻酔の管理は「麻酔科医」と呼ばれるお医者さんが行う。患者さんの容体を見ながら麻酔の量を調節していく。麻酔が切れれば患者さんの体に多大な負担がかかってしまう。実際に手術するわけではないが、陰ながら手術を支える大切な存在だ。
全身麻酔が効くまでに麻酔科医の方と少し話したのだが、なんだか麻酔科医という職業がかっこよく感じてしまった。いや、そん麻酔科医さんがイケメンだったとかそういうことではなく、麻酔科医の仕事がかっこいいなと思ったのだ。お医者さんはみんなマスクしてるからイケメンかどうかわからないのよ。
手術直前、私に麻酔を投与している最中の麻酔科医さんとはこんな感じの会話をした。
麻酔科医さん
「まだ私の声聞こえますか?」
ジロギン
「はい、聞こえます。」
麻酔科医さん
「あれ?結構麻酔の耐性あるのかな?・・・どうですか?聞こえますか?」
ジロギン
「はい、聞こえますね」
この後、一瞬にして手術が終わっていた。
本当に「手術という過程を吹き飛ばした」ように手術が終わっていた。これは不思議な感覚だ。
一体どこに麻酔科医のかっこよさを感じるのかと思うだろう。
かっこいいじゃないか、
人の意識を自在に操れるというところが!
瞬時に人を眠らせ、手術が終わるまで何をしても起きない状態にする。
こんなの黒魔道士しかできないと思っていた。麻酔科医は黒魔道士に等しい力を持っている。人の意識を沈めてしまうなんて、恐ろしい能力だ。
さらに麻酔科医のかっこいいところ。これは想像だが、私を眠らせた後に麻酔科医さんと執刀医さんはこういう会話をしていたと思うのだ。
ジロギン
「はい、聞こえますね・・・ZZZ」
ジロギン眠る
麻酔科医さん
「やっと眠ったか・・・」
執刀医さん
「意外と時間がかかったな。」
麻酔科医さん
「ああ、手間とらせやがって。しかし驚いたぜ、この若造、ゾウを眠らせる量の麻酔を打ち込んだってのに、5分以上持ちこたえやがった。常人なら1分足らずで眠っているはずなのだが・・・」
執刀医さん
「なにっ!?ゾウを眠らせる量を耐えていたのか!?こいつ何者だ?」
麻酔科医さん
「わからない・・・だが俺たちの仕事は、目の前の患者が何者であれ、完璧に手術を行うこと。違うか?」
執刀医さん
「・・・ああ。その通りだ。余計な詮索はせず、ただ手術に集中しよう。」
麻酔科医さん
「よし、それじゃあ、手術を始めよう。メス!」
執刀医さん
「それは俺がやるんだよ。」
きっとこんな感じになっていたのだと思う。
完全な厨二病だ。でもこんな会話ができる職業が他にあるだろうか?いや、まずない!
麻酔科医という職業のかっこよさを感じてしまう。
なぜもっと早く麻酔科医のかっこよさに気がつけなかったのだろう。あと5〜6年早く気胸になっていたら麻酔科医を将来の職業として選んでいたかもしれない。
麻酔科医さんの年収は平均1000万〜1300万くらいでとても収入は多い。
しかし麻酔科医さんの数は全国的に足りず、手術に引っ張りだこな状況で、多忙を極めるらしい。その中で患者さんの容体を注意しながら麻酔の量を決めていく緻密な作業を行わなければならないなんて、相当厳しい。
手術は夜になることもある。夜が苦手な私には辛い仕事だ。
さらに現実を見るなら、麻酔科医になるためにももちろん大学の医学部を卒業しなければならない。まずその関門を乗り越え、さらに研修医期間などを経て麻酔科医になれる・・・って道険しすぎぃぃぃ!!これは本気で麻酔科医になろうと思わなければなれない道だろう。私には無理だな。
医療ドラマだとやはり手術の執刀医となる外科医がメインに置かれることが圧倒的に多いが、手術を下支えする麻酔科医にももっとスポットを当てていいのではないかなと思う。
とそんなことを考えていたら、
「麻酔科医ハナ」
という漫画があるようだ。
新人麻酔科医の主人公・華岡ハナ子を通して麻酔科医の世界を描く漫画のようだ。
私は読んだことがない。これを機に読んでみようかな。