あの猫は去年死んだうちの猫だったんだって!」
友人が話している。見間違えただけだろうと私は呆れかえっていたが、友人は続けた。
「毛の色も同じだし、『マロン』って名前呼んだらこっち向いたから、間違いないんだって!」
友人が見た部分の毛の色が同じだっただけ。
人間の声がしたから振り向いただけ。
死んだら生き返るわけがないと私は冷たく言い放つ。
友人の勘違いではあっただろうが、そう思いたい気持ちもわからなくもない。
私もハムスターやウサギ、モルモットなどを飼ってきた。
死んだ時は悲しいし、生き返らないかなぁと思ったことは何度もある。
「生き物を飼うことの意味は、『生き物の命には限界があるんだと理解すること』にある。
生き物を飼い、その生き物の死に直面することで命の重さを人は知る。
こういった経験がないと、命を粗末に扱ってしまう。」
私の言葉は冷たかった。酔っ払っていたのもあるだろうが、今となっては少しひどい言い方だったなと反省している。
案の定、友人は怒りモードに突入。
その後もしばらくお互いの主張を繰り広げ、その日は解散となった。
電車を乗り継ぎ、私は最寄駅に着いた。
夜の24時過ぎ。明日は休みだから、夜更かししても問題ない。
そんなことを考えて夜道を歩いていると、1匹の猫が佇んでいた。
全身黒い猫。夜というのもあって見えにくかったが、真っ黒だった。多分女の子の猫だった。
そういえば友人の猫も黒かったと言っていた。
申し訳なさもあり、友人に謝るつもりで、
私はその猫を撫でようとした。
しかし猫は、夜の月に届きそうなくらい鋭い声をあげ、私に拳を一撃食らわせた。
触るなと言わんばかりの攻撃性に満ちた顔をしたまま、猫は夜の帳に消えていった。
あの猫はもしかしたら、友人の猫だったのかもしれない。
友人の仕返しを私にしたのかもしれない。
人間関係は大切にしようと思った。