怪談話やホラー映像などでよく出てくる幽霊って、
黒くて長い髪の白装束を着た女性
である場合が多いですよね。
貞子とか伽倻子とかのイメージで黒髪ロング白装束の女性に対してこわいというイメージを抱いてしまいがちです。
もう幽霊のフォーマットみたいになってますよね。
こんなやつです。怖くてすみません。
まぁ黒髪ロングの女性っていうのはわかるんです。そういう髪型の女性はたくさんいますから、黒髪ロングの方が亡くなって、幽霊になったんだなと。
しかし、白装束を普段からお召しになり、白装束を着た状態でお亡くなりになられる方はまずいないんじゃないかなと思います。
白装束着せるのって「おくりびと」さんのお仕事ですよね。
白いワンピースだったとしても、そうピンポイントで白いワンピースを着ている方が亡くなられらているわけではないと思います。
ということは…
黒髪の長い女性の幽霊は亡くなってから幽霊になるまでの間に着替えている
と考えるのが定石でしょう!
しかも一様に白い服に着替えています。
そこから導き出された私の仮説は、
黒髪ロングで白装束の女性の幽霊は、「幽霊の派遣会社に登録されている派遣幽霊」
という説です。
どういうことなのか、具体的に例を挙げてみたいと思います。
都内R市D町0-0-0
A子さん(27)は仕事からの帰宅途中に交通事故に出くわした。
ひき逃げだった。車のナンバーを覚えるなんて暇もなく、A子さんは軽自動車に引かれて亡くなってしまった。
A子さんは気がつくと、真っ暗闇の中にポツンと佇む小さな事務所の前に立っていた。
なるほどとA子さんは思った。
「この事務所で天国に行くか、地獄に行くか精査されるんだな。とりあえず事務所に入ってみて、今までの人生でやってきた良いこと悪いことを洗い出されて、精査される。大丈夫。天国に行ける自信はある。この前もノラ猫にエサあげたし。でもノラ猫の被害に困ってる人にとっては私の行為は悪い行為か…善と悪は背中合わせってわけかい!」
A子さんが事務所に入ると、受付カウンターにバーコードハゲでスーツ姿の小太りな男性が1人。その奥の席に事務員のおばちゃんがパソコンで作業をしている。
男性がA子さんに声をかける。
「あー、新入りさんね。じゃあ登録するから、ここ座って。」
差し出された椅子に腰掛け、カウンターを挟んで男性と向き合うA子さん。
「私は天国ですか?地獄ですか?どっちに行くのですか?」
A子さんの質問に疑問の表情を浮かべる男性。
「はぁ?天国にも地獄にも行かないよ。
あなたには幽霊として現世に戻って働いてもらうから。」
今度はA子さんが疑問の表情を浮かべる。
「幽霊?働く?死んだら天国か地獄に行くんじゃないんですか?死んでも働かなきゃならないんですか?」
A子さんの矢継ぎ早の質問に男性は答える。
「あなたは確かに死にんだけど、いろいろ未練があったよね?「彼氏が出来たことがない」という。それで幽霊になった。
そういう未練を抱えた人はね、うちにちょうどいいのよ。うちも幽霊が必要だし、あなたも現世に残れば未練を晴らせるかもしれないし。
あっ!天国も地獄もないよ。死んだら幽霊になるか消えるかだけ。幽霊になった人は派遣幽霊としてうちで働いてもらうから。」
唖然とするA子さんは恐る恐る質問を続ける。
「じゃあ私は幽霊として…働くの?働くって何すればいいの?ていうか死んでも働かなきゃならないの?これが日本の労働社会?」
男性は答えた。
「日本じゃなくても、働かなくてどうやって幽霊としてやってくの?ちゃんとうちでお給料もらって、食べ物とか買わないと!」
驚くA子さん
「買うの!?どこで!?」
男性は答える。
「そういう闇の業者がいるんだよ。お化けだからといって、何でもありではないんだよ残念ながら。」
がっかりといった面持ちのA子さん。
男性はカウンターの下から書類を出し、A子さんの派遣登録を始める。
「そういうわけだから、A子さん、これから幽霊として頑張って。A子さんが死んだのは…都内R市D町0-0-0ね!あぁ、ちょうど良かった!一昨日ここの担当だった人が成仏しちゃったんだ。『生き別れたネコと再開できたから成仏して仕事辞めます』ってね。本当、いい場所で死んでくれた!」
苦い顔をするA子さん。
「そんな言い方やめてくださいよ。ところで、幽霊としての派遣の仕事って…やる意味あるんですか?」
男性はそれをこれから話そうと思ってたところだぜと言いたげな顔で答えた。
「幽霊になる人ってね、正直なところ、幸せに死ねなかった人がほとんどなのよ、自殺だったり他殺だったり。
でね、何がいけないかって、そうやって「自分の命も他人の命も粗末にする人がいる」こと。あなたたち幽霊の仕事は、「自殺をしたら悲しい幽霊になってしまうんだ」とか、「他人を殺したら、相手が幽霊となって脅かしに来るんだ」とかいうことを人々に思わせて、命を粗末にする人を少なくするのが仕事。
これ以上幽霊になるような不幸な死に方をする人を減らすために、不幸な死に方をした幽霊の力が必要ってわけね。やっぱり経験者が1番説得力あるからさ。
そんなわけで、この仕事にも意味がある。」
真面目な顔になり少し黙り込んだA子さん。
男性はカウンターの下から今度は段ボールを取り出し、こう言った。
「じゃあ早速配置についてもらうよ。まずこのユニフォームに着替えて!」
男性は段ボールから「白装束」を取り出した。
「それって、ユニフォームなんですか!?女の幽霊がよく来てますけど、それって御社のユニフォームだったんですか!?」
男性は驚きながら答える。
「そうですとも!このユニフォームは江戸時代から続くうちの伝統のユニフォーム!これが1番怖がられるんだから!」
男性が熱弁を振るっていると、奥に座ってパソコンで作業していたおばちゃんがA子さんに声をかけた。
「私の後ろのカーテンが更衣室だから、着替えな!」
A子さんは言われるがまま更衣室で、ユニフォームに着替えた。
「まさか私がこの白装束を羽織ることになるとは…」
男性がA子に話しかける。
「A子さんはちょうど黒髪ロングだから、貞子っぽくて怖がらせるのに向いてるよ!
エース!うちの次期エース!それじゃあ事務所を出てもらえる!そうするとR市D町0-0-0に戻れるから!」
A子さんは焦りながら聞いた。
「ちょっと待ってください!仕事の目的は聞きましたが、具体的に何をすれば…」
男性はA子さんの背中を押しながら事務所の扉に向かい、答えた。
「ただ立って怖い顔をするだけの誰にでも出来る簡単な仕事!
勤務時間は夏は19:00〜翌4:00、冬は17:00〜6:00!日の入りから日の出までって覚えておいて!冬場は勤務時間が長くなるよ!
1週間おきにシフト提出してね!
時給は880円で、生前使ってた口座に25日に振り込むから!
福利厚生は一切なし、死んでるからね!
ということで、よろしくっ!」
男性が事務所のドアからA子を外に押し出すとA子さんは確かに自分が事故にあった場所に戻っていた。
以降A子さんは「0-0-0の女」として都市伝説になるほど有名な幽霊として万を超える人間を脅かした。
ユニフォームは1ヶ月も来ていると雨風で結構ボロボロになるので、あの事務所から月一で届く。
何人脅かしても、A子さんの「彼氏を作りたい」という未練は晴れず、むしろ人が逃げていき、未練は深まるばかり。
また今日もA子さんは誰かを脅かしている。
あのユニフォームを着て…
こういう経緯があって、女性の幽霊は白装束を着ているのだと私は考えました。
死後の世界のことは誰にもわかりませんので、私の考察も一説として認められますよね?
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