私の名前はジロギン。

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【怖い話】押したのは誰?

 

私の名前はジロギン。

 

時刻は18時30分を回っていた。その日私は、大学時代の友人・Mくんと飲む約束をしており、仕事終わりで待ち合わせ場所に向かっていた。待ち合わせ場所は、私が勤める会社のある駅から電車で20分ほど離れた駅前。19時に待ち合わせだったので、丁度くらいに着く予定だ。

 

Mくんは大学時代も頻繁に遊んでいた男友達で、社会人になってからも何度も会っていたのだが、ここ3ヶ月くらいは顔を合わせていなかった。お互いサラリーマンをしているので、今日話すことといえば「どちらがより悪い環境で働いているか自慢」みたいなことになると思う。

 

すでに帰宅ラッシュが始まっており、ホームはかなり混雑していた。できるだけ混んでいない出入り口から乗りたいと考えていた私は、ホームをひたすら歩き空いているところを探していた。

1ヶ所だけ、誰も待っていない乗車位置があったのでそこに並んだ。電車が来るまであと3分ほど。スマホで2ちゃんまとめを見ながら待つことにした。その時だった。

 

 

 

ドッ!

っと背中を何者かに強く押された。誰かが偶然ぶつかったという感じではなく、明確に線路に落とそうという意図を持って、手のひらで背中を押された感じがした。

私は不意の出来事に驚きながらも、なんとか踏みとどまり、線路に落ちずに済んだ。後ろを振り返って犯人の姿を確認しようと思ったが、帰宅ラッシュの混雑したホームの上では、誰が犯人だか判別がつかなかった。

 

そのまま線路に落ちていたら非常に危険だった。スマホを見ていたことで周囲への注意が散漫になっていたと思う。私は押された背中あたりにゾゾッと寒気を感じた。日本は平和と言われているが、それは「比較的」という前提条件が付く。もっと細かい視点で見れば犯罪は毎日起きている。

いつ自分が犯罪に巻き込まれるかわからない。私の意識を改める出来事になった。

 

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Mくんと飲み始めて30分ほど。大学時代は「どれくらいお酒を飲んだか自慢」をしていたが、案の定今回は「どれだけ悪い環境で働いているか自慢」大会になっていた。

ふと会話が途切れた時に、私はMくんにさっき電車のホームで背中を押された話をした。

 

ジロギン「さっきここに来る前なんだけど、ホームで電車待ってたらさ、誰かに背中押されたんだよね。マジで危なかったわ。電車来てたらひかれて死んでたよ。」

 

Mくん「マジかよ!?なんで命狙われてんだよ!?酔っ払った時にそこらへんのサラリーマンと喧嘩して、向こうが覚えてたとか、そんなことなかったか?」

 

ジロギン「いやないよ!俺喧嘩とか絶対しないし!なんだろうな・・・理由がさっぱりわからん。」

 

Mくん「まぁ誰にどんな恨み持たれてるかなんてわからないしな。で?その押してきた男の顔とか見たの?」

 

ジロギン「いや、見てない。もう帰宅ラッシュで人混みができてたからさ、確認できなかったよ。」

 

Mくん「こえーな。俺も気をつけないとな。」

 

楽しい時間に少し水を差してしまった感じは否めなかったが、お互い何があるかわからないので気をつけようということになった。

 

 

 

23時半頃。私はMくんとの飲みが終了してすでに家にいた。久しぶりにとても楽しい時間を過ごせた気がする。あまり人と話すのが得意ではない私ではあるが、たまには思い切り喋るのも悪くない。

そんな余韻に浸りながらも、ふと夕方に自分は線路に落とされ殺されかけたことを思い出した。もしかしたら今頃死んでいたかもしれないと考えると、ゾッとした。死ぬのが怖いのもそうだし、今日Mくんと話した時間のような、楽しい出来事まで体験できなくなってしまうことに怖くなった。

 

・・・ん?

・・・ちょっと待てよ・・・

Mくんのやつ、何で私の背中を押したのが「男」だってわかったんだ・・・?

 

 

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(この話はフィクションです)