2年生の時点で全国大会まで進出した大石・菊丸ゴールデンペアを擁していた青学。
しかし、他にダブルス向きのプレーヤーがいないという極端なチームバランスをしており、「ダブルスが穴(弱点)」という課題を抱えてきました。
そんな中でも海堂・乾ペア、不二・河村ペアが実戦レベルにまで仕上がり、何とかダブルスでも勝ち星を上げてきたものの、シングルスと比べて不安定な状態が続いていたことは否めません。
青学の「ダブルスが穴」問題……来年以降、さらに深刻化するのではないかと思うのです。その理由と、問題を少しでも解消するための案を考えました。
青学の「ダブルスが穴(弱点)」問題について
先述のとおり、青学は大石副部長と英二くん以外にダブルス向きのプレーヤーがおらず、団体戦においてダブルスが弱点になるという課題を抱え続けてきました。
選手の数は足りているので、シングルス枠に入れないメンバーをダブルスに回すという形でオーダーを組んでいたものの、その場しのぎに過ぎません。ダブルスが強い学校と戦えば、ピンチに陥る可能性大。
しかも、団体戦は前半にダブルス2試合、後半にシングルス3試合を行うという流れで進みます。合計5試合のうち、先に3勝したチームが団体戦として勝ったことになるので、ダブルスで2勝することは非常に重要なのです。
反対にダブルスで2敗してしまうと、残りのシングルスで1敗もできず、チームとして綱渡りの状態になります。
そのため青学としては、ダブルスの強化が必須だったのです。
大石・菊丸ペアは2年生で全国大会まで勝ち進んだ強豪ダブルス。彼らがいるだけで、団体戦の勝率はグッと上がります。しかし、大石・菊丸ペアも昨年の全国では1勝するのがやっとで、もっと強いペアがたくさんいる状況。確実に勝てるわけではありませんでした。
実際に作中では、聖ルドルフの赤澤・金田ペア、立海大の仁王・柳生ペア、氷帝の宍戸・鳳ペアに敗れています(最終的に大石・菊丸ペアが全国最強となりましたが)。
全国まで進出した大石・菊丸ペアでも敗北する可能性があるくらい、ダブルスは群雄割拠。その中で勝ち抜くとしたら、いくら青学が粒揃いといえど「とりあえずの数合わせで組んだペア」では力不足でしょう。
作中では海堂・乾ペア、不二・河村ペアを度々出場させることで、全国大会でも勝ち星を上げられるダブルスに進化しましたが、彼らは特別にダブルスの練習をしていたわけではなく、「協調性がありそう」ということで組まされていた面が強めです。
しかも、海堂くんと乾くんに関しては、「海堂くんのブーメランスネイクを完成させるため」という、かなり局所的な理由で組んだのがそもそもの始まりでしたからね。2人ともシングルス枠で試合に出るために、ダブルスを踏み台にしていた感じがあります。結果として手塚部長、不二先輩、リョーマというシングルス3強の枠には入れず、そのままダブルス要因に収まりました。
このように、青学は大石・菊丸ペア以外のダブルスに関しては「とりあえず色々組ませてみて、何とか形になりそうなペアが全国までに見つかった」という感じです。「ダブルス向きのプレーヤーがおらず、ダブルスが団体戦の弱点になる」という根本的な問題は、解決できていなかったと思います。
「ダブルスが穴(弱点)」問題が深刻化しうる要因
青学のダブルスに関しては「何とかなった」感が強め。問題解決のためにはダブルスプレーヤーを部内で発掘・育成することが必要だったと思いますが、特にそんなことはせず、やったことといえば「組めそうなペアを実戦で試すのみ」でした。
このままだと、来年以降の青学はダブルスの穴がさらに広く、深くなってしまうのではないかと思うのです。その要因を具体的に挙げていきます。
ダブルスプレーヤーの欠如
青学の貴重なダブルスプレーヤーである大石副部長と英二くんは3年生。今年で卒業してしまいます。すると、青学内からダブルスプレーヤーがいなくなってしまうのです。
大石副部長、英二くんだけでなく、他のダブルス枠を担当してきた不二先輩、乾くん、タカさんもいなくなってしまう……全国レベルのダブルスを経験してきたプレーヤーが、これでもかと減ってしまうことになります。
残された2年生の海堂くんと桃ちゃんも、全国レベルのダブルスを経験していますが、来年は彼らをダブルスで起用できない理由があるのです。これについては後述します。
現在の3年生世代が卒業すると、ダブルス向きのプレーヤーを他の部員から発掘・育成することの重要性がさらに高まります。が、青学の部内体制を考えると、それができるかどうか非常に微妙なのです……
部内のシングルス偏重
青学は団体戦に出場するレギュラーを、校内ランキング戦にて決めています。部員を4つのブロックに分けて総当たり戦をし、各ブロックの上位2人、計8人をレギュラーとするシステムです。
この校内ランキング戦ですが、全てシングルスで行われます。大石副部長、英二くんもシングルスでブロックを勝ち上がった結果、レギュラーに選ばれているのです。ダブルスの戦績は考慮されていません。
つまり青学でレギュラーになって団体戦に出場するためには、シングルスで強くないとダメなのです。となれば、部員たちはシングルスで勝つことを想定して練習に励むでしょう。
青学の「ダブルスが穴」問題の根本的な原因は、この「シングルス偏重の部内体制」だと思います。シングルスの戦績でのみレギュラーを決めるなら、部員たちはシングルスの練習しかしなくなってしまいますよね。
確かに、シングルスが強い2人を雑に組ませてもそこそこ強いダブルスはできます。が、それでは全国のガチダブルスプレーヤーたちには歯が立ちません。特にテニプリ界では、ダブルスプレーヤー同士で組んだペアでないと、最強にはなれないのです。
ならば、青学はシングルスの部内戦だけでなく、ダブルスの部内戦も行い、シングルス枠とダブルス枠、それぞれでレギュラーを決めるべきだと思います。そうすれば、「シングルスではなくダブルスでレギュラーを目指そう」と考える部員が増え、ダブルスプレーヤーの育成にもつながるのではないでしょうか。
この件について、詳しくは以下の記事でまとめています。
ダブルスの経験を積んだ海堂くん&桃ちゃんが来年はシングルス枠
先ほど、「海堂くんと桃ちゃんは全国レベルのダブルスを経験した」と書きました。2人とも、シングルスで団体戦に出場した回数が少なかった分、ダブルスで青学の勝利に貢献してきました。
海堂くんは、乾くんとのダブルスが大石・菊丸ペアに次ぐ鉄板ダブルスになっていた印象です(関東大会で組み始め、全国決勝まで5回出場)。桃ちゃんは、最初こそダブルスポンコツだったものの、様々な選手と組む中でダブルスプレーヤーとしての才能を開花させました(リョーマ、海堂くん、英二くん、タカさんと組んで勝利を上げた)。
この2人の経験値は、来年もダブルスで発揮されることでしょう。さらに、U-17日本代表合宿でもトレーニングを積み、格段に強くなりました。
では、来年の青学で海堂くん、桃ちゃんをダブルスに起用するべきかというと……そんな余裕なし!!
現在の3年生が卒業することでダブルスプレーヤーが大幅に減る青学ですが、シングルスプレーヤーもいなくなってしまうのです。しかも、リョーマは来年アメリカに留学している様で、青学にいるかどうかわかりません。
このような状況では、全国大会とU-17合宿を経験した海堂くん・桃ちゃんはシングルスに起用し、確実に2勝上げられるようオーダーを組む他ないでしょう。あるいは、海堂くん、桃ちゃんをそれぞれ別の部員と組ませてダブルス1・2として出場させる方法もありますが……ペアが噛み合わなければ2敗する可能性があります。そもそも海堂くんも桃ちゃんもシングルスプレーヤー。やはりシングルスで起用してこそ真の実力を発揮してくれます。
他校もU-17合宿を経験した選手がいる環境で、海堂くん・桃ちゃんをダブルスに回すのはかなりリスキー。となると、この2人以外の選手にダブルスを担当してもらう必要があります。そこでもネックになってくるのが「校内ランキング戦をシングルスでしかやらない体制」……他の選手もほとんどシングルスプレーヤーだと思うんですよね。荒井先輩とかも。
青学の「ダブルスが穴(弱点)」問題の解決策
ここまでに挙げた要素だけを見ても、来年の青学において「ダブルスが穴」問題が深刻化することは、ほぼ確実。このままでは、全国大会連覇どころか、都大会や関東大会を勝ち抜けるかどうかすら危うくなるでしょう。
そんな青学の危機を解消するにはどうすれば良いのか……対策を考えてみました。
ダブルスの校内ランキング戦を行う
先ほども書きましたが、校内ランキング戦はシングルスだけでなくダブルスも行いましょう。そして「ダブルスで能力を発揮する選手」を発掘するのです。
あるいは、「シングルスの勝敗で決めたレギュラーの中から最適なペアを見つける」という目的でランキング戦を行うのも良いと思います。とにかくぶっつけ本番で新規ペアを試すのではなく、ダブルスに適性のある選手の発掘や、実戦で活躍できそうなペアの試行を青学の部内にて行うのです。
シングルスでは実力的にイマイチな選手でも、ダブルスでレギュラーになれる可能性があるとわかれば、ダブルスの練習に励むことでしょう。その選手をレギュラーに起用することで団体戦におけるダブルスの安定感が上がります。
また部内で実戦に近い形で様々なペアを試せる機会があれば、試合ごとにレギュラーの組み合わせをコロコロと変える必要がなくなります。オーダーを考える竜崎先生の負担が減りますし、レギュラーも新しいペアとの組み合わせで混乱することもなくなるでしょう。
ダブルスの校内ランキング戦を行う……これだけで青学のダブルス問題はいくらか解消されると思うのです。
ダブルスの練習を増やす
ダブルスを強化するには、当然そのための練習が必須です。普段の練習メニューにダブルスを強化するものも含めましょう。
現在の青学でもある程度やっているとは思いますが、その割合を増やすか、校内ランキング戦(ダブルス)で発掘したダブルスプレーヤーにダブルスの練習を徹底させるのです。練習メニューから見直し、青学のシングルス偏重を変えていきます。
練習メニューの考案は、大石副部長と乾くんに協力してもらうとベストだと思います。
大石副部長は天性のダブルスプレーヤーで、試合経験も豊富。短時間のアドバイスでダブルス初心者だった桃ちゃんを実戦レベルに成長させるくらい、ダブルスのコツを知り尽くしています。
そして乾くんもダブルスの試合を数多く経験しましたし、何より青学レギュラーを成長させるための練習メニューを考案してきた張本人。
この2人の知識と知恵を借りれば、ダブルス向きの練習を考えることなどチョチョイのちょいでしょう。
不動峰の協力を得る
青学と同じ地区にあり、練習試合を行うなど交流が多い不動峰に協力してもらってダブルスを伸ばすという方法も効果的だと思います。
不動峰は、本来ならシングルス枠を担う神尾くん、伊武くんもダブルスをこなしていました。橘さんからダブルスのノウハウを教え込まれていたのでしょう。OVAの描写ですが、橘さんは獅子学中時代に千歳くんとダブルスを組んで西日本大会に出場していました。シングルスはもちろん、ダブルスも高いレベルで習得していたに違いありません。
そんな橘さんに指導してもらったからこそ、神尾くんも伊武くんも、ダブルスで戦えたのだと思います。
他にも、山吹中の全国レベルのダブルスに勝った内村・森ペアもいますから、不動峰はダブルスが強いチームと言えます。
不動峰と合同練習、あるいは練習試合を行なってダブルスのノウハウを吸収する……これも青学のダブルス強化に大いに役立つでしょう。不動峰と青学は近所なので、お互いに行き来しやすく、練習もしやすいはず。
部員数やコートの数が少ない不動峰にとって、環境がバッチリ整っている青学で練習できるのはとても良い機会。合同練習や練習試合を持ちかけられたら、断る理由はないと思うのです。
特に桃ちゃんと神尾くんは仲が良さそうですからね。そこら辺の連絡も取りやすいのではないかと思います。
青学の「ダブルスが穴(弱点)」問題は解決できる
青学が抱える「ダブルスが穴」問題は、このままの体制で放置していた場合、深刻化するでしょう。では解決策がないかというと、そうではありません。いくらでもやりようはあると思うのです。
正直、今までの青学はダブルスに関して弱点のまま放置し、小手先の対策だけでなんとかしようとしていた感じがありました。手塚部長たち世代は才能あふれる選手が揃っていたため、それでも何とかなりましたが、来年以降は同じようにはいかないでしょう。
特に、既存の部員から新しいダブルスプレーヤーを発掘できるかどうかに、来年の団体戦ダブルスの命運がかかっていると思うのです。
荒井先輩、池田先輩、林先輩、カチローくん、カツオくん、そして堀尾……君らに託すぞ、青学ダブルスの未来!!