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【テニスの王子様】竜崎先生が不二・河村ペアを組ませ続けた理由

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大石・菊丸ゴールデンペア以外にダブルス適正のあるプレーヤーがおらず、「団体戦ではダブルスが穴」と言われ続けてきた青学。オーダーを決める竜崎先生(手塚部長・大石副部長)も組み合わせに迷っていたようで、さまざまなペアが試行されてきました。

最終的に乾・海堂ペアが発掘されましたが、彼らと同じくらい組むことが多かったのが不二周助・河村隆ペアです。

不二くんは他校にも名が知れ渡った青学No.2。河村くん(タカさん)は並の選手なら返球すらできないパワーショットを打てるプレーヤー。2人ともシングルスに起用した方が、チームとしてメリットが大きいように思われます。それでも、竜崎先生が不二・河村ペアを組ませ続けたのはなぜか、考えていきます。

不二・河村ペアが組まれた試合と勝敗

まずは、作中で描写・言及がある限りで不二・河村ペアが組まれた試合と、その勝敗をまとめます。

  • 地区予選の水ノ淵→6-0で勝利
  • 地区予選の不動峰戦→棄権負け
  • 都大会の秋山三中戦→6-0で勝利
  • 都大会の山吹戦→3-6で敗北
  • 全国大会の比嘉中戦→7-5で勝利

5試合出場し、戦績は3勝2敗。さらに全国の氷帝戦ダブルス1は大石くんが復帰しなかった場合、不二・河村ペアが起用されていたことを匂わせるコマがあるため、6試合出場していた可能性があります。ただ氷帝最強の宍戸・鳳シルバーペアに対して不二・河村ペアが勝てた可能性は極めて低く、もし試合をしていたら戦績は3勝3敗になっていたでしょう。

 

不二・河村ペアの戦績をどう感じるかは人それぞれですが、個人的にはあまり高くないという印象です。

不二くんは本気を出せば手塚くんに匹敵する実力のシングルスプレーヤー。タカさんはパワーで一般プレーヤーをねじ伏せられる上、対戦校のパワープレーヤーと打ち合える貴重な戦力。そんな2人をダブルスに起用して勝率60%……しかも勝った試合のうち2試合は、青学からするとはるか格下の相手。強豪校(ネームド校)が相手だと比嘉中の1勝しか上げられていません。それなら極端ですが、関東〜全国レベルのチームが相手のときはダブルス一枠を捨て試合にして、シングルスを強化した方が青学の団体戦としての勝率も上がると思われます。

竜崎先生が不二・河村ペアを組ませ続けた理由

やはり不二くん、河村くんともシングルスで高い実力を発揮する選手だと考えられます。

この2人を度々組ませ続けたのはなぜか。竜崎先生の考えを、青学の状況を踏まえて考察します。

シングルス陣の負担軽減

地区予選〜都大会序盤で対戦するような学校が相手なら、青学はしっかりオーダーを組まなくても、レギュラーたちのポテンシャルだけでほぼ確実に勝てるでしょう。

ダブルスに関していえば、ダブルス適正が全くないリョーマ選手を起用しなければ、相性などをあまり考慮しなくても余裕で勝てると思われます。なんなら、ダブルス2にカチロー・カツオペア、ダブルス1に荒井・堀尾ペアを出して2連敗したとしても、シングルス陣だけでカバー可能です。

 

しかし都大会上位〜関東大会以降になるとそうはいきません。青学にとって格上である全国レベルのチームと戦う可能性が高まります。作中では関東大会1回戦でいきなり氷帝と戦った青学。氷帝は全国大会常連校で、当時の青学とは同等かそれ以上の戦力を誇る強豪です。初戦から補欠選手同士の試合にもつれ込むほどの接戦になりました。

氷帝のような強豪チームが相手だと、1試合の負けが団体戦の結果に大きく響きます。そうなると、さすがの青学もダブルスを捨て試合にするなんて悠長なことはできません。ダブルスで連敗すればシングルス陣の負担が重くなり、1試合も負けられない状況から、選手たちは必要以上にプレッシャーを感じてしまうことでしょう。

 

青学には大石・菊丸ゴールデンペアがいるので、強豪チーム相手でもダブルスで最低1勝は上げられそうです……が、意外と負け試合が多い大石・菊丸ペア。「ゴールデンペア」なんて輝かしい通り名をつけられているものの、2年生で全国大会に進出した際は1勝するのがやっとだったとのこと。いかに大石・菊丸ペアが強いといえど、それは青学内での話で、当時は関東・全国で勝ち上がれる確証はなかったのです。

やはり青学ダブルスはとても不安定で、後続のシングルス陣にかかる負担が大きくなりがち。そのためもう1組、少なくとも1年前のゴールデンペア並みに戦えるダブルスが必要でした。

このように考えていたであろう竜崎先生の中で有力候補だったのが、不二・河村ペアなのだと思われます。

比較的協調性の高い不二くんとタカさん

青学のダブルスが穴と言われる理由は、レギュラー陣それぞれの個性が強すぎるため、シングルスでならその個性を発揮できるものの、ダブルスになるとペアと上手く噛み合わなくなること。つまり頑固なシングルスプレーヤーばかりということですね。

青学のレギュラーを決める校内ランキング戦がシングルスでしか実施されないため、レギュラーになるにはシングルスプレーヤーとしての力を鍛えなければならないことも、ダブルスが手薄な状況に拍車をかけていると思います。

 

また作中序盤では、桃ちゃんとリョーマがダブルスNG状態。桃ちゃんは公式戦でダブルスに起用される中で適性を見出していきましたが、リョーマは協調性がなさすぎるため、『新テニスの王子様』になっても自他共に認めるダブルス適正ゼロプレーヤーのまま。つまり青学レギュラー8人のうち2人が、ダブルス無能だったということです。

ゴールデンペアを除くと残りのレギュラーは、不二くん、タカさん、海堂くん、関東大会から復帰した乾くん、手塚部長となります。

海堂くんは青学随一の陰キャで他の部員との交流は少なめ。乾くんは実際にペアを組んだ海堂くん・柳くんが肌身で感じるほど生粋のシングルスプレーヤー。そして地味にダブルス描写のない手塚部長。リョーマと同じくダブルスNG説が濃厚か……?

 

残る不二くんはレギュラー陣の大半と会話をしている描写があり、1年生の堀尾たちに試合の解説をすることもある隠れコミュ強。

バーニングではない主人格が表に出ているときのタカさんは、他の部員と衝突することのないであろう、やや気弱で丸い性格です。

人間性を考えると、不二くんとタカさんは青学レギュラーの中でも協調性が高い方で、組ませればとりあえずダブルスとしてそれなりの形にはなるでしょう。竜崎先生も2人の性格を考えて、ダブルスに起用していたのだと思われます。

それ以外のメンツで組むと試合がまともに進行するかも怪しい……例えば、初期の頃の桃ちゃんと海堂くんを組ませたら、試合中にケンカし始めましたからね。プレースタイルとしては決して悪い組み合わせではないのですが、相手チームや審判に迷惑がかかりますし、ケンカが大ごとになれば試合どころではなくなってしまいます(それでも組ませていた教育者・竜崎スミレ監督の肝の座りっぷりは、さすがと言うべきか……)。

大石・菊丸ペアと同じく守備&攻撃の組み合わせ

ダブルスは人間ができたプレーヤー同士が組めば勝てるというわけではありません。ペア同士のプレースタイルがマッチすることも重要です。そのため、竜崎先生は不二・河村ペアに関して、性格面だけを見て選出したわけではないと思います。

 

不二くんはカウンターを得意とする守備的なプレーヤー。タカさんは比嘉中戦でドロップショットを打っただけでギャラリーがビックリするほどのストローカー(バコラー)で、攻撃的なプレーを得意としています。実際に2人のプレースタイルは、不二くんが「カウンターパンチャー(ベースライン付近で守備的なプレーをするスタイル)」で、タカさんが「アグレッシブベースライナー(ベースライン付近で攻撃的なプレーをするスタイル)」です。2人はそれぞれ守備と攻撃の専門家ともいえるため、組ませることでお互いに攻守を補い合えるペアになるだろうと、竜崎先生は期待していたのではないでしょうか。

 

竜崎先生が攻守を補い合うダブルスを欲していた背景には、大石・菊丸ペアの存在があると思われます。

大石・菊丸ペアは、英二くんがアクロバティックなネットプレーで攻撃を担当。後方から大石くんが英二くんをサポートし、守備を担当するという戦い方が基本です。このスタイルで2年生の時点で全国大会まで勝ち進んでいます。大石・菊丸ペアの成功体験から、竜崎先生は第二のゴールデンペアを生み出すべく、守備担当に適任そうな不二くんと、攻撃担当に適任そうなタカさんを組ませていた。このように考えることもできそうです。

 

また、ここからはメタ的な話になりますが、『テニスの王子様』で高い実力を発揮しているダブルスは、ゴールデンペア以外にも攻守のバランスが取れたペアが多い印象です。

例えば、立海大のジャッカル・丸井プラチナペアは、ジャッカルくんがベースライン付近で守備に徹し、ブン太くんがネットプレーで攻撃に徹します。ベースラインから攻撃する難しさをネット際でブン太くんが、ネットプレー中にロブで頭上を抜かれたり、速いパッシングショットが来たりしたときの対応をベースライン際でジャッカルくんが行うことで、お互いの弱点を補いつつ、それぞれが得意分野に徹する仕組みづくりができているのです。

氷帝最強の宍戸・鳳シルバーペアも、宍戸さんが超反応とカウンターライジングで守備(攻撃も兼ねる)に回り、サービスゲームでは鳳くんの「ネオスカッドサーブ」で一撃必殺の打球を叩き込むという、やはり攻守のバランスが取れたダブルス。

作者の許斐先生は、「強いダブルス=ペア同士がお互いのプレースタイルの弱点を補い合い、攻守のバランスが高いレベルで安定している」と描いているように、個人的には感じます。

全国大会前半まで大石・菊丸ペアが組めなかった

青学ダブルスの要である大石・菊丸ペアですが、大石くんが関東大会直前に手首を怪我し、全国大会前にその怪我が再発したことで関東大会〜全国大会前半までゴールデンペアを組むことができなくなりました。

入れ違う形で乾・海堂ペアを発掘できたので、なんとかつなぎとめることができましたが、やはりゴールデンペアを欠いた青学のダブルスは大きな穴です。

その穴を少しでも埋めるべく、特に全国大会前半は不二・河村ペアを起用していたと思われる竜崎先生。ゴールデンペア、乾・海堂ペアを除くと最も実戦経験が多いのが不二・河村ペアなので、不二くんとタカさんがダブルスに回されるのは必然だったといえます。

 

もしゴールデンペアが全国大会終盤でも復活できなかったら、不二・河村ペアが起用され続けたかもしれません。しかし、そうなると青学は全国優勝できなかったでしょう。

青学として不二くんをシングルスで起用しないという舐めプで立海大に勝つなんてことはできませんでしたし、タカさん以外が四天宝寺の銀さんと戦えば⚫︎され、物理的にレギュラーが1人減る事態になっていました。

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竜崎先生的に不二・河村ペアはピンチヒッターのようなダブルスだった?

全国の比嘉中戦では勝ち星を上げたものの、勝率が高いとはいえない不二・河村ペア。おそらく竜崎先生もそのことはよく理解しており、この2人のダブルスが青学にとってベストな組み合わせだとは考えていなかったでしょう。

やはり不二くんは青学No.2として、相手校のエース・準エース級選手と戦わせるべき人材ですし、タカさんは対パワープレーヤー要因として起用した方が輝きます。

不二・河村ペアは、青学のダブルス模索時代に組まれた回数が多かったことから、ゴールデンペア不在時にも起用され続けた、ピンチヒッター的なダブルスと見るべきでしょうね。竜崎先生としては、不二・河村ペアよりも乾・海堂ペアの方がダブルスとして期待していたと思われます。全国決勝という最重要な立海大戦で、不二・河村ペアではなく乾・海堂ペアが出場したことが、その証明ではないでしょうか(タカさんが大怪我していたので、乾・海堂ペア一択ですが)。

 

正直、不二くんをダブルスに使うのはもったいなさ過ぎるので、乾・海堂ペアが組めるようになり、不二くんをいつでもシングルスに回せるようになったのは青学にとって僥倖中の僥倖。あとパワープレーヤーがいるチームと対戦する際、タカさんをシングルスに回してもダブルスの戦力が落ちないのも大きなメリットですね。