私の名前はジロギン。

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【怖い話】深夜の見回り

 

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私の名前はジロギン。

 

これは1年半ほど前の話になる。

私は「気胸」という肺に穴が開いてしまう病気、というか、怪我と病気の中間ぐらいのものにかかってしまい、手術、そして入院を余儀なくされてしまった。約5日間ほどの入院。入院をするのは初めての経験だった。

私は4人部屋で入院することとなった。4人部屋はベッドが4つ置いてあり、カーテンで仕切りがしてあるだけだ。正直プライバシーの事を考えると個室の方が良かったが、個室は集団部屋とは比較にならないほど費用がかかってしまうのだ。お金に余裕のない私にとっては、むしろ集団部屋にしてもらってラッキーだったと考えるべきだろう。

 

私が入院していた時には、もう1人同じ部屋に患者がいた。仮の名前として「Aさん」としておこう。Aさんは男性ですでに70歳近く、当時23歳だった私とは親と子以上の年齢差があった。かなり細身な方で、表情からは優しそうな印象を受けた。結婚はしていらっしゃらなかったようで、私が入院していた期間はお見舞いに来る人も特に見なかった。

Aさんは膵臓の疾患で入院しており、1ヶ月近い療養が必要となっていたそうだ。Aさんは私よりも前に入院しており、私より後に退院する予定だった。内臓系の病としては私もAさんも同様だったので、Aさんは私に奇妙な親近感を覚えたようだ。Aさんも寂しかったのか、私によく話しかけてくれたし、新卒のサラリーマンだった私に自身の現役時代の経験やサラリーマンとはなんたるかみたいな教訓などいろいろ話してくれた。入院中は退屈だと聞いたが、私としては話し相手のAさんがいたので、やることには困らなかった。

 

病院内は21時に消灯時間となる。電気が消え、Aさんも私も寝静まる。Aさんとお話をするのは寝る前くらいまでだった。夜の間にはお互い接触すらしなかった。

私の元には、夜間1時間おきくらいに女性の看護師さんが見回りにやってきてくれて、私の体調などを調べてくれていた。夜9時から朝の6時まで、8〜9回来てくれていたと思う。極力音を立てず、私の睡眠の邪魔にならないように気を遣って調べてくれているのだが、さすがに私も一晩で2〜3回くらいは看護師さんが来たことに気がつき、目が覚めてしまう。まぁ寝たふりをしていたが。その度に、「夜勤の仕事も大変だろうな」などと思っていた。

 

あっという間に5日間の入院が終え、私は退院となった。退院の手伝いに来てくれていた母と荷物をまとめ、部屋を後にする。Aさんは母親の手前、私に話しかけずにいてくれたが、さすがに5日間も一緒に生活を共にしてきたAさんに挨拶せずに帰るのも気が引けた。私は母親には先に部屋を出てもらい、Aさんに別れの挨拶をすることにした。

 

ジロギン「Aさん、いろいろとお話ありがとうございました。まだ入院は続くと思いますが、お体にお気をつけください。」

 

Aさん「ありがとう、君も頑張れよ。でも寂しくなるなぁ・・・君、可愛い寝顔していたのに。」

 

私はゾッとした。どうやら、夜中に私のことを見回りに来ていたのは、看護師さんだけではなかったようだ。