私の名前はジロギン。

HUNTER×HUNTERなどの漫画考察や、怪談・オカルト・都市伝説の考察、短編小説、裁判傍聴のレポートなどを書いている趣味ブログです!

【ヒトコワ】赤ん坊

私の名前はジロギン。

 

今回紹介するのは、町田 玲美(まちだ れいみ:仮名)さんという女性から聞いた話。

約10年前、町田さんが大学生の時のエピソード。

 

赤ん坊

両親の帰宅が遅くなるとのことで、この日、自分で夕食を用意する必要があった町田さん。

 

近所のスーパーでカレーの材料を買い、レジ前にできた列に並んだ。混雑する時間帯で、町田さんの前には10人ほどが会計を待ったいた。

 

4つレジがあったのだが、町田さんの並んでいるレジだけ全く先に進まない。あまりに遅いため列を抜け、別のレジで会計をする人もちらほらいる。並んでいる人が減っていき、レジに近づいたことで町田さんは遅延の原因に気づいた。

 

『また並び直せっていうの!?何で!?おかしいでしょ!?』

『私の財布が盗まれたらどうすんのよ!?責任取れるの!?』

 

30代前半くらいの女性がレジで店員に怒鳴りつけているのだ。身長が高く、腰まで伸びた茶色のストレートヘアの、一見すると美人な女性。背中にはおんぶ紐で赤ちゃんを背負っている。怒鳴られているのは町田さんと同い年くらいのアルバイトの女の子。

 

女性が何に激怒しているのかはわからない。最初から見ていたわけではないのも理由の一つだが、それ以上に女性の言葉に一貫性がないのだ。支離滅裂。ストレスをそのままぶつけているかのよう。

 

店員も何に対して謝ったらいいのかよくわかっていない様子で、とにかく「すみません、すみません」と繰り返していた。

 

並んでいても埒があかない。そう思った町田さんは隣のレジを利用することにした。会計中も背後から女性の甲高い怒鳴り声が聞こえてくる。

 

『何で私がこんなに怒ってるのかわかってんの!?理解力なくて困るわ!?ほんと腹立つ!』

『この店の程度が知れるわ!?アンタみたいなの雇ってる時点でもうこの店は終わってんのよ!』

 

聞くに耐えない罵詈雑言。割って入り、店員を助けてあげたいが、関わると厄介な目に遭うのは確実。赤ちゃんも連れているのにこんなに怒鳴るなんて、どんな母親なんだ。町田さんの中で女性に対する呆れや怒りに近い感情が込み上げてきた。せめてできることとして、後ろを振り返り、女性を睨みつけてやることにした。

 

怒鳴る女性の右肩から赤ちゃんの顔が見えた。遠目で見てもわかるプラスチック製の赤ちゃん。人形だ。確かメ●ちゃんという名前。CMで見たことがある。もちろん瞬きひとつせず、女性の体が動くのに従ってグラングランと揺れている。

 

町田さんは、感情に任せてこの女性に関わるべきではないと判断し、寒気を感じながらスーパーを後にした、と語ってくれた。

※ご本人や関係者に配慮し、内容を一部変更しています。