私の名前はジロギン。

HUNTER×HUNTERなどの漫画考察や、怪談・オカルト・都市伝説の考察、短編小説、裁判傍聴のレポートなどを書いている趣味ブログです!

【短編小説】ボケとツッコミの比率がおかしいクラス

阿寒 底和(あかん そこわ)は、今日から高校1年生になった男子。

新しい学校に、新しいクラスメイト。阿寒が進学した高校には同じ中学出身の人はいないため、完全に見知らぬ環境だ。

だが、阿寒は中学時代からとても明るい性格で、どんな環境でも前向きに適応してきた。いわゆる陽キャだ。

阿寒が一発ボケをかませば、クラスのみんなが笑う。阿寒の周りには常に人だかりができているような、そんな性格をしている。だから、初めての環境でも阿寒は臆さない。

 

体育館での入学式が終わり、教室に入った阿寒。

席は名簿の順番で決められており、出席番号1番である阿寒は、教室前側の入口近くの席になった。

担任教師は、50代前半くらいの男性。白髪に茶色いスーツを着た、どこの学校にも1人はいそうな量産型のオジサン先生だ。

担任は教卓に両手をつきながら、口を開いた。

 

担任「これから皆さんには、自己紹介をしてもらいます。名前と、クラスのみんなに知ってほしいことを1人ずつ前に出て発表してください。では、名簿順でいきましょう。1番目は、阿寒くん、お願いします」

 

新学期の初っ端にやりがちな自己紹介。阿寒も過去に何度か経験がある。名前が「あ」から始まる阿寒は、自己紹介で最初になることが多かったため、トップバッターは慣れっこだ。

もちろん、多少の緊張感はある。その一方で、阿寒はチャンスだとも感じていた。

この自己紹介でボケをかまし、ウケをとり、クラスの人気者のポジションを、誰よりも早く獲得する……そのチャンスだと。

席を立ち、教卓の前まで歩く間に、阿寒の脳みそはフル回転。脳内で「このクラスで放つ最適なボケ」を構築した。

 

阿寒「初めまして!阿寒 底和です!名前が阿寒なので、中学生の頃は望月(もちづき)と呼ばれてました!」

 

男子生徒「いや全然関係ねぇじゃん!」

 

阿寒の後ろの席、つまり出席番号2番の男子生徒が、まるで狙い澄ましたかのようなツッコミを入れた。

「そうそう、そのツッコミが欲しかったんだ」と、ドヤ顔になる阿寒。

もしかしたら出席番号2番の彼とは、良いボケ・ツッコミの関係になれるかもしれないと、阿寒は思った。

 

男子生徒(出席番号3番)「一文字も合ってねぇし!」

 

続けて、さらに後ろの席の男子もツッコミを入れる。クラスメイトの全員が声を出して笑う。阿寒が想像していた以上の反応の良さだ。

阿寒のノリが見事にマッチする、良いクラスに配属されたと感じた。

 

男子生徒(出席番号4番)「タコとタコスくらい違うわ!」

 

さらに後ろの男子もツッコミを入れた。

 

男子生徒(出席番号5番)「中学校の友達、センスどうなっとんねん!」

 

男子生徒(出席番号6番)「しょーもな!陳腐すぎるセンスだわ!」

 

男子生徒(出席番号7番)「こんなしょーもないセンスのヤツがいる中学から来た阿寒も、しょーもないやつ確定なぁ!」

 

男子生徒(出席番号8番)「阿寒だけに寒さは一級品だわ!」

 

男子生徒(出席番号9番)「あんま近づかんどこうかな。要注意だわ、阿寒」

 

男子生徒(出席番号10番)「阿寒に近づいたらアカンってな」

 

男子生徒(出席番号11番)「お前上手いこと言うなぁ〜!オレ、戸口(とぐち)!仲良くしようぜ!あの阿寒とかいうヤツと席離れててよかった〜」

 

男子生徒(出席番号12番)「辛辣だなぁ戸口!まぁ阿寒が滑ったのが悪いけれども!」

 

男子生徒(出席番号13番)「もっと阿寒のことイジってやれよ!かわいそうじゃん!せっかく、クラスのムード盛り下げてくれたのによぉ!」

 

男子生徒(出席番号14番)「盛り下げたヤツを褒め称えてどうすんねん!ほっとけほっとけ!」

 

男子生徒(出席番号15番)「引っ込め〜阿寒〜!そして二度と学校来んな〜!」

 

女子生徒(出席番号16番)「二度と来るなはひどいでしょ!せめて『今日のところは帰れ!』くらいに収めときなよ!」

 

女子生徒(出席番号17番)「つーかなんか、阿寒臭くね?息?息が臭い?」

 

女子生徒(出席番号18番)「確かに臭っ!阿寒お前、今すぐ消臭剤食ってこい!」

 

女子生徒(出席番号18番)「このカメムシ野郎!」

 

女子生徒(出席番号19番)「野郎っていうか、もはや人間ではないんじゃね?」

 

女子生徒(出席番号20番)「じゃあゴミ!」

 

女子生徒(出席番号21番)「ゴミムシ!」

 

女子生徒(出席番号22番)「ゴミムシダマシ!」

 

女子生徒(出席番号23番)「ゴミムシダマシという異名を持つ詐欺師!」

 

女子生徒(出席番号24番)「人間に戻ってるやんけ!阿寒を人として扱うなよ!」

 

女子生徒(出席番号25番)「っていうか阿寒、いつまで教卓立ってんねん!お前が授業すんのか!?」

 

女子生徒(出席番号26番)「無理に決まってるだろ!このアホヅラ、どう見ても最下位で合格した落ちこぼれやん!」

 

女子生徒(出席番号27番)「まぁウチらの担任よりはいい授業しそうではあるな」

 

女子生徒(出席番号28番)「分かるぅ!担任の無能感やばいよねぇ〜!阿寒と拮抗した無能」

 

女子生徒(出席番号29番)「こんな無能2人も抱えて、ウチのクラスやっていけるんか?マジでクラス替えしてほしいわぁ。もちろん阿寒と、担任のオッサンとは違うクラス希望」

 

女子生徒(出席番号30番)「I came from America as an exchange student. However, I feel like returning to my home country. I also feel nauseous(私は交換留学生としてアメリカからやってきました。しかし、もう母国に帰りたい気分です。あと吐き気がします)」

 

ーーーーーーーーーー

 

翌日

黒板の前に立つ担任

 

担任「阿寒くんは一身上の都合で、しばらくの間、休学することになりました」

 

<完>