私の名前はジロギン。

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【夢物語】おじいちゃんの意外な職業

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玄関の扉を開けると、スーツ姿の男性が立っていた。今日は日曜日だが、男性はきっちり髪を七三分けにして、訪問営業にでも来たかのようだった。


男性は近くに引っ越してきたで挨拶に来たと私に告げ、タオル2枚をくれた。
そして男性は


「私の家に来てください」


と初対面の私を家に招いてきた。
なんとも不思議な気分だ。初対面の男の家に突然招かれるなんて、普通ではありえない。
けれど私はありえないことほど好奇心が湧いてくる性格のため、男の家に向かうことにした。


ちょっと待て?やっぱりおかしい。
男は「近くに引っ越してきた」と言ったが、私が住んでいるのはマンションの一室。
男の口ぶりからすると、マンション内に引っ越してきたのではなく、マンションの近くの家に引っ越してきたという意味に取れる。


男についていくと、案の定マンションを出ることになった。
男の家はマンションから50mも離れていない。
2階しかないような建物で、1階部分は駐車場というか車が1台停められるくらいのスペースがある。部屋の部分には外付けの階段から入れるようになっていた。

 

私たちは階段を登り、男性の部屋に入った。
部屋は10畳ほどのワンルーム。床は畳。台所がある以外には何も家具はないが、部屋の半分くらいが大量の花束で埋まっている。
まるで開店したばかりの飲食店に寄せられた花束のようだ。


花束の中をよく見ると、額に入った男性の顔写真が1枚立てかけられていた。遺影のようだが、写っている男性に私は心当たりがあった。
私の父方の祖父だ。祖父が笑顔で写っている。
確かに祖父は数年前に亡くなったが、何故この見ず知らずの男性の家で祖父が祀られているのか、私にはわけがわからなかった。

 


私は男性に、何故祖父の写真があるのかを尋ねた。男性は答えた。


「私はあなたを探していました。そしてようやく見つけることが出来ました。私は、いや正確には私たちはあなたのお爺様に救われたのです。あなたのお爺様は「光の絆」教の教祖様なのです。」


よくわけがわからない。
教祖様?一体何を言っているのか。
光の絆?明らかにやばい宗教団体の匂いがする。


だが、私は祖父が教祖であったということを否定も出来なかった。
子供の頃、両親に「おじいちゃんは何の仕事をしていた人なのか」を聞いたことがある。
おじいちゃんが現役で働いている姿を見たことがある孫は少ないと思う。
しかし両親は


「いや…うん…まぁ…アレだ…人をな…人を幸せにする仕事だよ…」


みたいな答え方しかしてくれず、結局何をしていた人なのかはわからないままだった。
人を幸せにする仕事ってたくさんあるが、まさか宗教団体の教祖だったとは思わなかった。

 

「光の絆」という団体が危ない団体でなければ良いのだが、念のため男性に、どのようなことをする団体なのかを尋ねた。男性は


「1人で寂しい社会人がみんなで集まって、フットサルとかバーベキューとかをする団体」


と答えた。何だ、教祖とかいうから強かったが、社会人サークルの代表って感じか。
さらに男性は続けた。


「私がこの『光の絆』に入った時にはすでにお爺様は亡くなられていました。古くから入団していたメンバーもお爺様について詳しく知っている者は少なかったのです。お孫さんがいらっしゃることすらも知られてはいませんでした。
お亡くなりになってから、お孫さんとお爺様が写っている写真が見つかりまして。私はお爺様が作ったこの団体に心を救われました。その感謝をお爺様に伝えることは出来ないので、せめてお孫さんには伝えたいと思って、あなたを探していたのです。」


男性は私に深く頭を下げてきたが、自分に見に覚えのないことで感謝されても実感がなさすぎる。
ただ、自分の祖父がどんな形であれ、誰かを幸せにしているとわかったことは嬉しかった。おそらくこの男性以外にも祖父の作った団体に心救われた人はいるようだ。

 


男性は頭を上げ、さらに私にこう告げた。


「ただ問題もあります。お爺様がお亡くなりになってから、団体をまとめる者がいなくなり、輪が乱れることが増えたのです。そこでお孫さんであるあなたにお爺様の後を継いで欲しいのです。継ぐというと大袈裟ですが、お孫さんの名義を借りたいのです。『お孫さんがこう言っている』と言えば、鶴の一声となり乱れもなくなるでしょう。お願い致します。」


実際に団体の運営はこの男性がやってくれるとこのと。私は名義だけ貸せばいい。ならば問題はない。危ない団体でもなさそうだし、私は快諾した。


すると物静かな感じがした男性が、突如両腕を上げて、飛び回るように喜びを表現し始めました。


「やったー!やったー!なんていい日なんだ!私は運がいい!教祖様の教えによれば、今日のような日なら何をやっても成功するはずだ!」


男性は台所に置いてあった鍋を手に取り、窓ガラスに向かって投げた。
鍋が窓ガラスにぶつかり、バリンッガシャガシャとガラスが割れる。破片が外に落ちる。
男性は黒い靴下を脱ぎ捨て、ガラスの割れた窓枠に足をかけた。


「私は何でも出来る!今私はこの2階の部屋からガラスの散乱する地面に飛び降りても、一片もガラスが足に刺さることなく着地できるはずなんだー!!」


男性はそういうと、勢いよく窓から外に飛び降りた。
私は急いで窓の外を見た。地面に男性が直立していた。男性はクルッと顔だけでこちらを見て、私に話しかけてきた。


「すみません…救急車呼んでください…」


私は名義を貸すのをやめることにした。

 


この物語は私が見た夢を元に考えたフィクションです。

 

 

 

 

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