私の名前はジロギン。
当ブログにおいて繰り返し書いてきているのだが、私は超がつくほどの陰キャラでありぼっちだ。スマホにやってくる連絡は企業からのメルマガのみ。深海魚の方が仲間とコミュニケーションを取っているんじゃないかというくらい、闇にまみれた生活をしている。影の中と家の中こそが私の世界だ。
そんな陰キャぼっちな私にとって、夏は激苦手なシーズンである。日照りの時間が長くなり闇が失われていくこともそうなのだが、私のような闇人間にとって死の呪文に等しき言葉を唱えられてしまう機会が多いからだ。その呪文とは、
夏休みどこか行くの?
だ。行くわけがない。友達もおらず目的もないのに、夏休みにどこかへ行くわけがない。そんな予定などあるわけがないのだ。
しかし、この死の呪文を唱えた相手も、私に気を使って呪文を唱えたのだ。何か話そうと思って、話題を振ってくれたのだ。だがそれは、本当に残念なことに、何も予定のない私にとっては死の呪文になってしまう。私は答えに困り、さらに会話を気まずくしてしまう。
夏休みに予定のない陰キャにとって「どこか行くの?」という質問は
ドラクエで言えば「ザキ」
FFで言えば「デス」
ハリー・ポッターで言えば「アバダケタブラ」
なのだ。
先日はいとこに
夏休みどこか行くの?
と聞かれてしまった。
いとこは私と同じ20代なのだが、私とは打って変わって、友達がたくさんいたり恋人がいたりと交友関係は広い。
同じ親族のはずなのに、生きてきた期間もそう変わらないはずなのに、何故ここまで差がついたのか・・・
いとこと会う機会は年に1〜2回ほど。となると多少見栄を張ってもばれることはないだろう・・・と、私は嘘をついてしまった。
一人旅・・・などかな?
全然行く予定はない。一人旅など全く行く予定はない。でも、「友達と旅行するよ!」などと言うとそれはもう嘘というか詐欺レベルに近い。ややぼっち感を匂わせつつ、それなりに楽しい夏休みを送るかのような見栄を張る、自分としても納得のいくラインで「一人旅」と嘘をついた。
まだいとこの呪文詠唱は続く。
一人旅!?どこ行くの?
や、山かな?自然を見に行こうと思うんだ。ほら、都会の喧騒に疲れちゃってさ・・・
えー!いいじゃん!どこの山?富士山?
いや、ち、秩父かな?近場の低い山に登ろうかなって・・・
秩父ね、いいとこじゃん!泊まり?何泊するの?
も、もうこれ以上僕の中身を覗くのはやめてよっ!
ということで私は死に至った。薄っぺらな嘘ではごまかしきれないのだ。
もちろん、いとこは何も悪くない。いろいろ質問をしてくれて、話を盛り上げようとしてくれたのだから。強いて言えば、予定のない私が10:0で悪いのだ。
でもよく考えれば、予定がなくても別に良いはずなのだ。夏休みだから何かしなければいけないわけではない。休みなのだから、休むことが重要なのだ。遠出したら疲れてしまうではないか。
嘘をついてまで、予定があるなんて言い張る必要はどこにもない。
いとこの会話以降私は開き直ることにした。死の呪文への対抗呪文として素直に「夏休みの予定はない。どこにも行かない」と答えることにしたのだ。
そして早速この対抗呪文を使うときが来た。昨日、会社の先輩に同じように死の呪文を唱えられた。
夏休みどこか行くの?
だがもうこの前までの私とは違う。
この死の呪文に対して、私の最大魔力を込めた対抗呪文で、倍返しだ!
いえ、どこも行きませんが?夏休みは夏の暑い時期に仕事や学業などに打ち込むのが厳しいだろうということで、休息の期間としてあるものです。そんな夏休みを使ってあえて暑いところに出向き体力を消耗させようとしているのは愚の骨頂、夏休みをくれた会社や学校、そして国に唾吐く行為では?そもそも質問の前提として「夏休み=どこかに行くもの」とお考えのようですが、それは全員に共通して当てはまる考え方ではなく、私のようにどこにも行かずに直射日光を避けた家の中で静かに回復を図ろうとする者を度外視した考え方ですよね。もし「夏休みにどこかに行く人=どこにも行かない人より優れている」などという考え方をお持ちであるならば・・・
もういい!わかった・・・悪かった・・・俺が悪かったよ・・・
これが世に言う論破というやつなのだろうか・・・私は死の呪文に打ち勝った。
しかしなんだろうか、この感じは。死の呪文に打ち勝ったというのに、心の奥底から、まるで鉄砲水のように勢いよく溢れるこの虚しさのような感情はなんなのだろうか・・・
これが分からない限り、私は今のまま何も変わらないのではないか?そんな気もしたが、とりあえず家に帰ってYouTubeを見ることにしたのだった。
私のように大げさにやる必要はないが、もし「夏休みどこか行くの?」と聞かれて、予定がなかった時は素直に「どこも行かない」と伝えよう。
正直に言っておかないと、今度は
「夏休み〇〇行ったんでしょ?どうだった?」
と感想を聞くさらに強力な迫撃呪文が待っている。
こうなると今度は「予定」という不確定なものではなく、「感想」という実体験を経た確かな言葉が求められる。嘘のハードルが上がってしまうのだ。
やはり対策としては正直に「予定がない、どこにも行かない」と答えるのがいいだろう。何も引け目を感じる必要はない。どんな人気者でも暇な夏はある。上野公園のパンダも人気者だけど、夏休みは基本的に暇なはずだ。大丈夫だ。パンダだって暇なのだから。
やっぱり夏は、クーラーの下で、部屋を暗くして、テレビかパソコンかスマホか夢を見る生活に限る。夏休みも1日も欠かすことなくブログ更新ができそうだ。