私の名前はジロギン。

HUNTER×HUNTERなどの漫画考察や、怪談・オカルト・都市伝説の考察、短編小説、裁判傍聴のレポートなどを書いている趣味ブログです!

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観た感想【ネタバレなし】

私の名前はジロギン。

 

先日公開された、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観てきました。

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私は2〜3歳ごろ、母親がレンタルビデオショップで借りてきた鬼太郎のアニメ3期を観てからどハマりし、各映画や4期、5期、6期、『墓場鬼太郎』を観て、図書館で原作も読んだ、歴30年弱のライト鬼太郎ヲタです。

ただ、最新アニメシリーズにあたる6期は個人的に「イマイチかも」と思っていて、映画化されても観に行かないだろうと思っていました。

しかし、『ゲゲゲの謎』はキャラデザなどは6期ではあるものの、原作の鬼太郎誕生エピソードに関連するストーリーだというではありませんか!

それを聞き、一介の鬼太郎ヲタとして映画館へ行かずにはいられませんでした。

 

本記事では、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観た感想をまとめています。

なるべくネタバレはないように書きました。記事を読んで興味がわいた方は、ぜひ観に行ってみてね!

シリアスミステリー&スプラッターホラー

『ゲゲゲの謎』のストーリーは、村を舞台にしたミステリーものです(ラスト近くは、アニメ鬼太郎に欠かせない妖怪バトルが待っています)。

村の大富豪で、日本の政財界にも通じる龍賀(りゅうが)一族の、相続争いが絡む連続殺人。閉鎖された村で、登場人物たちは「犯人は誰か」と疑心暗鬼に陥る……この展開はまさに、横溝正史の『犬神家の一族』のよう。というか、『犬神家の一族』のオマージュですね。かなりシリアスな展開が続くので、アニメの鬼太郎の雰囲気を想像して観に行くと、大きなギャップを感じるかもしれません。

少なくとも、子どもたちに向けた作品ではありませんね。完全に大人に向けた鬼太郎です。PG12(小学生以下の子どもが視聴する場合、保護者の助言・指導が必要)に指定されてますし。

だからこそ、私のように鬼太郎並みに大人になるスピードが遅い、数十年来の鬼太郎ヲタにとっては、満足度の高い作品になっているのですが。

 

そして「連続殺人」と書いた通り、作中で次々と人が死にます。その死亡シーンが、これまで鬼太郎が放送されてきた優雅な日曜のモーニングタイムでは到底流せないような惨殺っぷり。ある種のスプラッターホラー。グロ系が苦手な人だと、チョイとトラウマになってしまうかも。

でもですね、元々鬼太郎は妖怪をテーマにしたホラー作品。アニメは原作のホラー要素をかなり薄めています。そんな原作ベースの『ゲゲゲの謎』を、わざわざお金を払ってまで映画館に観にくる人は、きっと骨の髄まで怪奇に取り憑かれたホラー好きでしょう。「これくらいやってもらわなきゃ物足りないぜ!」と感じられるはず。たぶん。

血がブシャーッて噴水みたいに出たり、体がバラバラになったり、眼球などの臓物が飛び散ったりしても平気な人ならノープロブレム!

格差社会が一つのテーマになってるのが現代ともマッチ

主人公の一人である水木(みずき)という男は、成り上がることを目的に、龍賀一族が隠す秘密に近づきます。

水木が自身の社会的身分を憂い、成り上がろうとする姿は、今の日本社会を生きる私たちにも通じる部分があるなと感じました。

現代日本では身分の差はないとされているものの、貧富の差は存在しています。『ゲゲゲの謎』は約70年前の日本が舞台であり、現代とはまた異なる環境ではありますが、当時も今も貧富の差に悩む人がいることは変わらないのだなと感じました。

今、収入による格差を感じる人は、水木という男の感情や行動を見て共感する部分が多いと思います。良くも悪くも、現代社会に刺さるテーマでした。

私はすっかり水木に感情移入してしまいました…

目玉おやじの体術がヤバい

『ゲゲゲの謎』は水木と鬼太郎の父・目玉おやじによるバディものの要素が強く、2人が協力しながら、村と龍賀一族の謎に迫っていきます。

水木は特殊能力など持たない一般人のため、派手なアクションを担当するのは目玉おやじ。この目玉おやじのアクションシーンは必見です!いや、目玉おやじのアクションを見ずに『ゲゲゲの謎』の何を観るのか?と言い切れるくらいに見逃し厳禁!ヌルヌル作画で、製作陣の気合いを感じます。

6期の鬼太郎はバトルの作画に力を入れている印象があり、映画ではそれがさらにパワーアップしてる感じですね。6期の良い部分が存分に発揮されています。

特に目玉おやじが体術で戦うシーンがヤバい……ステゴロだけでも鬼太郎より強そう。

 

序盤から小難しい話が続くので、初見ではストーリーを完全に把握できないかもしれませんが、目玉おやじのバトルさえ楽しめれば、入場料のお釣りが来ます。

目玉おやじは作中の鬼太郎より年上っぽいので、「もし鬼太郎が成長したらこれくらい強くなるのかも?」なんて想像できるのも面白いポイント。

鬼太郎って小学校高学年〜中学生くらいっぽいから、身体能力的にはまだ全盛期を迎えてない可能性が高いんですよね…

原作厨ほどエンドロール後まで席を立つんじゃない!

『ゲゲゲの謎』は、原作のキャラや設定をベースにしたオリジナルエピソードです。キャラのビジュアルも6期のもの。そのため私は、映画の予告映像などを観た段階では、

目玉おやじはこんなにイケメンじゃない!包帯ぐるぐる巻きのミイラ男みたいな怪物だ!

などと思い、原作準拠じゃないなら観ない!と、悪しき原作厨っぷり全開でした。

しかし『ゲゲゲの謎』は、原作や『墓場鬼太郎』で描かれた、鬼太郎が生まれるよりも前の話。つまり、なぜ目玉おやじが包帯ぐるぐるになってしまったのかなど、原作では無かった部分を描いているのです。だから原作とストーリーが違うのは当然。別の時間軸の話なのです。

 

そして、私のような原作厨ほど、『ゲゲゲの謎』を観るときはエンドロールが終わっても映画館の席を立たないでください。もし『ゲゲゲの謎』がサブスクなどで配信されたとしたら、ブラウザバックしないでください。

エンドロール後に、きちんと、原作厨にも配慮した展開が用意されています。

その展開を詳細に書きたい……けど『ゲゲゲの謎』の根幹に関わる部分であり、完全なネタバレになるため書けない……

少なくとも私は、エンドロール後のシーンを見て原作厨発言を撤回したくなりました…反省反省&反省

映画館では泣いてる人がたくさんいた

これもネタバレになってしまうので詳しく書きませんが、陰鬱な展開が続くものの、感動できるシーンがしっかり用意されています。

映画館では泣いている人がいたのでしょう。鼻をすする音が至るところから聞こえてきました。

かくいう私も、そのシーンで泣きそうになった一人。でも30歳を超えたソロ鑑賞中のオジサンが映画館で号泣していても誰も助けてくれないので、我慢しました。もし家で見ていたら無理でしたね。涙腺崩壊していたでしょう。

歳を取ると涙腺が緩むといいますので、大人ほど涙してしまうかもしれません。

鑑賞の際はハンカチかティッシュ、感動展開に弱い人はバスタオルのご用意を。

やっぱり鬼太郎は名作だなって、痛感させられました

強いて言うなら……

個人的には大満足で、あと4回は見たい『ゲゲゲの謎』。

でもあまりにもベタ褒めすると、これから観る方の中でハードルが不必要に上がってしまいそうですし、私が『ゲゲゲの謎』製作サイドの回し者だと思われてしまうかもしれないので、無理やり苦言を呈してみようと思います。

正直不満はほぼ無いのですが、めちゃくちゃ強引に絞り出しました。

小さい子向けではない

先述のとおり、『ゲゲゲの謎』は大人向けに作られた鬼太郎作品という印象です。

序盤は『犬神家の一族』をオマージュしたミステリー展開で、家督の相続という、子どもたちからしたら「何それ美味しいの?」みたいな話が続きます。妖怪もなかなか出てきませんし、肝心の鬼太郎すらほぼ登場しませんので、鬼太郎目当てに見に来た少年少女がいたら、ポカンとしてしまうかもしれません。

 

さらに時代背景の理解が求められるのも、『ゲゲゲの謎』が子ども向けではない理由の一つ。太平洋戦争(第二次世界大戦)後の経済回復を目指している日本が舞台であり、水木は戦地だった東南アジアに出兵していた帰還兵であることなどが分からないと、「何でビジネスパーソンの水木が戦地にいたの?」と疑問に感じてしまうかも。当時は戦後間も無くで、第二次世界大戦中に徴兵されて軍人だった人がたくさんいたんですよね。

歴史の授業を受けていないうちは、このような時代背景を知る機会も少ないと思います。そのため、小さい子は終盤の妖怪バトルが始まるまで何のこっちゃ分からないままストーリーに置いて行かれてしまうかもな、と感じました。

鬼太郎シリーズなので、やはり「妖怪もの」

ミステリー作品によくある展開が、その地に伝わる伝承などになぞらえて、人間が連続殺人を行っていくというもの。どれだけ怪死が続こうとも、全て人間が何らかのトリックを使って実行したのであり、怪奇現象が起きたわけではない。それを探偵が解決するのが、ミステリーの定番です。作品としての見せ場は、探偵が犯人を特定し、トリックを明らかにするシーンにあります。

 

『ゲゲゲの謎』の序盤は、まさに村をテーマにしたミステリーもの。ですが、やはり鬼太郎シリーズは「妖怪もの」であることを忘れてはいけません。殺人犯の正体やトリックを深く考えることにあまり意味はなく「妖怪のせいなのね!そうなのね!」というオチになります(ネタバレになってないよな?大丈夫だよな?)。

なので、作品冒頭からミステリーチックな難しい話が続きますが、全部を理解しようとせず「今までのアニメ鬼太郎とは比較にならないほど重くて、グロめな話だなぁ」くらいに見ててもいいかなと。

それに、水木の目的も、目玉おやじの目的も、龍賀一族内で発生している事件の犯人を特定することではありません。龍賀一族内の殺人というミステリーは、おまけ要素。『ゲゲゲの謎』で私たち視聴者が楽しむべきは、

  • 水木と目玉おやじの関係性
  • 鬼太郎が生まれる前の目玉おやじと鬼太郎ママがどんな感じだったのか
  • 妖怪バトル

に尽きますね。

特にバトルシーンは作画がめっちゃ良いので、子どもも大人も興奮できますよ

自堕落キャラの皆口裕子ボイスはオレに効く

これは私個人の問題です。

龍賀一族の一人に丙江(読み方は「ひのえ」?だったと思う)というキャラクターが登場します。この丙江は、行きずりの男性と一夜を共にしたり、酒浸りになったりしている、いろんな意味で大人な女性なのですが、彼女の声を担当しているのが皆口裕子(みなぐちゆうこ)さんなのです。

(あれ?この動画の3人とも『ゲゲゲの謎』に出演してる…野沢さんは目玉おやじ役、古川さんはねずみ男役)

皆口裕子さんといえば、『DRAGON BALL』のビーデルなど、しっかり者の女性キャラを演じているイメージがあります。そのため『ゲゲゲの謎』で、自堕落な女性キャラから皆口裕子ボイスが発せられるなんて予想していませんでした。

私は生まれ変わったら皆口裕子さんの声帯を手に入れたいと思っているくらいの、皆口裕子ボイス好き。さらに演じるキャラクターのギャップまで上乗せされたら、

次に皆口裕子ボイスが聞けるシーンはいつ来るのだ!早く丙江さんをお出ししてくれぇ!

と興奮し、鑑賞中にやや集中できなくなってしまいました。

これは完全に私個人の問題ですし、作品の悪い部分ではなくむしろ良い部分で、「皆口裕子さんwith自堕落キャラ」を見るがために、あと4回くらい鑑賞したいと思っている節があるほどです。

皆口裕子ボイスはオレ効く。止めてくれ(もっとやってくれ)

鬼太郎シリーズ好きは見に行くべし!

正直に言うと私は、鬼太郎のアニメ6期は作画こそ良いものの、オタクに媚びた感じがして、あまり好きではありませんでした。

猫娘がスレンダー化したのはまだ我慢できたのですが、目玉おやじがイケメン化して、指から超破壊力の「霊丸(指鉄砲)」を撃ってるのを見たときは「ついにやっちまったな……」と愕然としたものです。

あとスマホやSNSが普及した現代社会に、無理やり妖怪をねじ込んでいるようなストーリーも受け入れられなかった部分だったかも。

 

しかし『ゲゲゲの謎』は、そんな6期アレルギーの私でも大満足な内容でした!

鬼太郎の原作をベースとしたストーリー×6期の作画クオリティという、良い部分を掛け合わせた集大成とも言える作品でしょう(いや集大成なんて言わず、まだまだ鬼太郎シリーズは作り続けてほしいのですが)。

事細かにストーリーまで書きたいところですが、やはり実際の映像で観てほしい!

長年鬼太郎を追ってきたファンなら満足できる確率99.99999999%!ぜひ映画館へ!

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