私の名前はジロギン。
前回、洒落怖に投稿された「落ちてくる」という怪談を考察しました。
初の試みでしたが、自分とても面白く感じ、怪談をまた別の観点で楽しむことができました。
今回はその第二弾。同じく洒落怖に投稿された「ロッカー」という話を考察していきます。
【洒落怖】ロッカー
ロッカー
ある日会社の更衣室に行くと開け放した
一人用のロッカーの前に別の部署の先輩がへたりこんでいた。
ロッカーをのぞくと、その先輩の同僚の女性が
キッチリと体を折り畳むようにして入っていた。すごく異様な光景で悲鳴をあげそうになったが平静をよそおい
「何してるんですか?」と質問すると
彼女はその状態のままごく冷静に「ヨガの瞑想」と答えた。しばらく先輩と二人言葉なくへたりこんでいると
彼女はため息をついてロッカーから出ていった。
彼女はその後すぐ退職したが仕事も丁寧で常識的な人だったので
更衣室に行きその時のことを思い出すと今でも不思議な気分になる。
考察
この「ロッカー」という怪談、シンプルながら不気味さが伝わってくる話です。
しかし、文章からは読み取れない点がいくつかあります。
- 同僚女性が入っていたロッカーの形状は?
- 女性の体勢は?
- 女性がロッカーに入っていた目的は本当にヨガ?
- 女性が退職してしまった理由は?
これらを考察すると、「ロッカー」がさらに面白い話になりそうです。
上記4点を中心に考察していきます。
ロッカーの形状は?
まずは、同僚の女性が入っていたロッカーの形状について考えていきましょう。
文中では「一人用のロッカー」とだけ記載されていますが、ロッカーには様々な種類があります。
例えば、縦長のロッカー。
ドラマや映画などのイメージでしょうか、会社の更衣室というとこのロッカーを想像してしまいます。
あるいは、駅にあるコインロッカーのようなタイプ。
こちらは大人が入るのは難しいでしょう。それこそ体を折り畳まなければ。
となると、同僚女性はコインロッカータイプに入っていたのかなと思われますが、縦長のロッカーに入っていたパターンも考察してみます。
どんなポーズで入っていたのか?
次に同僚女性がどのような体勢で入っていたのかを考えていきます。
文中にある「体を折り畳むようにして入っていた」という表現をそのまま受け取るとしたら、同僚女性の体勢はこんな感じか、
こんな感じだったと思われます。
そのままロッカーに入っていたということは、こんな感じか、
こんな感じで入っていたということでしょう。
難度はかなり高そうですが、非常に体の柔らかい人であればできなくはない所業です。
ただ、このイラストのせいでしょうか、あまり怖くないかも……?
この光景を見たらむしろ笑ってしまいそうな気がします。
話の雰囲気を崩さないためにも、イラストをちょっと怖い感じにしてみます。
こんな感じでロッカーに折り畳まれた同僚が入っているのを不意にみてしまったら、かなりビックリしてしそうです。
ロッカーの形状に関わらず怖いですね……
体を折り畳むポーズはヨガにあるのか?
筆者に何をしているのか聞かれた同僚女性は、「ヨガの瞑想」と答えています。
ヨガとは、精神統一をして心身を整える健康法の一種で、様々なポーズを取ることが知られています。
実際のヨガに「ロッカーに入れそうな体を折り畳むポーズ」があるのかどうか調べてみました。
参考にしたのはこちらのサイト。
ありました。
この2つの体勢は、体を折り畳むという表現に近いポーズではないでしょうか。
同僚女性が言った「ヨガの瞑想」は、その場で考えた言い訳とは断定できません。
言葉通り本当にロッカーの中でヨガをしていただけの可能性もあるということです。
なぜロッカーの中でヨガをしていた?
ここまでの考察をまとめると、
体を折り畳んでロッカーに入れそうなヨガのポーズは存在する
→同僚女性は本当にヨガ目的でロッカーに入ってた…?
いやいやいや!これだけじゃ納得できない!!
なぜロッカーの中でヨガをする必要があったのか!その考察をしなければ終われません!
同僚女性の目的を文中から読み取ることはできませんし、その目的がわからないからこそこの話が不気味なわけで……
なぜロッカーの中でヨガをしてたのか、心霊的な観点と現実的な観点から考察していきます。
取り憑かれていた?
本来ありえない行動を人間が取るとき、その人は霊に取り憑かれている可能性があります。
同僚女性は丁寧で常識的な人だったということなので、ロッカーの中でヨガをするようなタイプではなさそうです。
何らかの霊に取り憑かれて、彼女自身も考えられない行動を取ってしまった……という可能性もゼロではありません。
筆者や先輩に見つかった後の同僚女性の反応も気になります。
もし、同僚女性がロッカー内ヨガを社内の誰にもバレないようにやっていたとしたら、見つかった時にすごくあせるはず。
そんな様子を見せることなく、同僚女性は冷静に立ち去っています。この反応も普通ではないように感じます。
何者かに操られてロッカーに入れられていた……?
しかし、それにしても目的が不明すぎる……幽霊の仕業だとしたら、私たち生きた人間には理解できない目的を持っていても不思議ではないとは思いますが……?
あるいは、悪霊が同僚女性に取り憑き、ロッカーに入れて圧死させようとしていたとか?
このパターンだとしたら、寸前で発見した先輩と筆者のファインプレーですね。
生き霊?
あるいは、そもそも同僚女性が霊体だった、いわゆる生き霊の可能性も考えられそうです。
生き霊となってロッカー内ヨガをしているのを先輩と筆者が見かけてしまった……
ちょっと無理がありますが、次のようなケースなら全くありえないこともないのかなと思います。
同僚女性は、ヨガを始めたばかりだった。
目的は、意中の男性を落とすべくダイエットするため。
しかし、体が硬くてできないポーズがたくさんあった。
どうすればいいか考えた同僚女性は思いついた。
「ロッカーを矯正装置として使おう!」と……
鉄製のロッカーであれば、硬い体を強い力で締め付けることが可能。
一人暮らしでパートナーもいないし、スポーツジムに通うお金もない同僚女性にとって、ロッカー内ヨガは今できる最善の方法だった。
けれど、そんな非常識なことできない……
誰かに見つかったら恥ずかしいし、怒られてしまうかもしれない……
やりたいのにできない、その気持ちきっかけで同僚女性は生き霊となり、霊体がロッカー内ヨガを実現してしまった……
生き霊は、執念・執着心によって生み出されるという説があります。
そのため、執念につながりやすい恋愛がらみで生き霊が生まれた怪談は非常に多いです。
同僚女性も恋愛成就のためにヨガを始めましたが、うまくいかず生き霊を生み出した。
しかし、ヨガに夢中になるうち目的と手段がこんがらがってしまい、生き霊がロッカーの中でヨガをしてしまった。
…………いやぁ、この考察は無理があるなぁ。
ロッカー内ヨガが同僚女性の趣味だった?
今回の怪談は、心霊的な観点で考察するのは難しそうです。
幽霊や生き霊の仕業という根拠になる部分が文中になく、かなり強引な考察になってしまいます。
もっとシンプルに、現実的に考えてみましょう。
同僚女性は取り憑かれたり、生き霊になったりすることなく普通に趣味としてロッカー内ヨガをしていた可能性です。
目的は生き霊の考察と同じく、ロッカーが矯正装置になると思ったから。
ロッカーの最適さに気づいてしまい、日常的にロッカー内ヨガをやっていたのではないでしょうか。
同僚女性は「丁寧で常識的な人」だったとのことですが、これは筆者の評価であり実際のところどうだったのかはわかりません。
人間はいくつもの顔を使い分けて生きているものです。
家族に見せる顔、友達に見せる顔、恋人に見せる顔、会社の同僚に見せる顔、全て違うはず。
同僚女性は社内で常識的な人の顔を使っていましたが、プライベートではロッカーの中に入ってヨガをするくらいには独特な人だった可能性が充分にあります。
見つかっても冷静だったのは、もはや隠すことができないので開き直ってしまったのではないでしょうか。
会社では「丁寧で常識的な人」という顔を見せているのであれば、筆者や先輩の前で平静を装うのも難しくはなさそうです。
驚かそうと隠れていた?
もっとシンプルに考えるなら、同僚女性は社内の人を驚かそうとしてロッカーに入っていたという可能性もあります。
ただ、この可能性はかなり低いと個人的に考えています。
理由は、筆者と先輩に見つかった後の同僚女性の反応です。
驚かそうとしているのであれば、筆者や先輩のリアクションを見て、
「驚いてやんのー!狙い通りー!!Yeah!!」
みたいなことを言うのが自然でしょう。
しかし、同僚女性はそのような仕草を全く見せることなく立ち去っています。
単に驚かそうとしていたとは考えにくいです。
狭いところが好き?
もっともっとシンプルに考えてみましょう。
同僚女性は狭いところに入るのが好きで、見つかった言い訳として「ヨガの瞑想」と言った。
つまり、性癖がバレてしまったパターン。
性癖は人の数だけ存在するもの。
どんな性癖があっても不思議ではありません。
同僚女性はロッカーのような狭くて暗いところに入るのが大好きな人だったのではないでしょうか。
ロッカーは冷たくなっていると、入った時のヒヤッとする感じがたまりません。
また、自分の周りが囲まれているということに安心感を覚えます。
誰からも干渉されない空間、それがロッカー。自分だけの世界がそこにあるのです。
薄暗いのもいいですよね。周りが見えないからこそ集中できたり、自分の内面を探る環境としても最適!
……私はロッカーに入る性癖があるわけではないので、同僚女性の気持ちはわかりません。
ただ、唯一言えることとしては「自分の変わった性癖は他人に知られたくないもの」。
同僚女性も、ロッカーに入るのは見られたくなかったはず。
だからこそ、見つかった後にため息をついたのでしょう。「ついに見つかってしまったか」というため息です。
ロッカー内ヨガが趣味だったのか、性癖だったのか……
どちらにせよ同僚女性にとっては隠しておきたいものだったのではないでしょうか。
退職した理由
ロッカー内ヨガ事件の後、同僚女性はすぐに退職してしまいました。
この以前に退職が決まっていたのか、あるいはロッカー内ヨガがバレてしまったのが恥ずかしくてやめたのか、定かではありません。
もし後者であれば、この会社ではロッカー内ヨガができなくなってしまったから退職し、別の環境を探しにいったのではないかとも考えられます。
この部分も文中から読み取れないため、真相は闇の中です。
まとめと怪談の感想
では、「ロッカー」の考察をまとめます。
今回は、心霊的な観点での考察は成立しないものとし、現実的な観点での考察のみまとめます。
- ロッカー内ヨガは女性の趣味or性癖だった
- ロッカーはヨガの矯正装置として最適だった
- 「丁寧で常識的」な彼女には知られざる一面があった(ロッカーでヨガをしちゃうくらい独特な感性の人)
- 隠しておきたい趣味or性癖がバレてしまい退職した(真相は不明)
この「ロッカー」という話は、同僚女性が取り憑かれているとか、霊体とかではなく人間だからこそ怖さが際立つと思います。
「同僚がロッカーの中に体を折り畳んで入っていた」なんて話だったら、ちょっと面白く感じませんか?
肝心なのは、普段は常識的な人がありえない行動を密かにとっていたという事実を垣間見てしまうことの恐ろしさだと思うのです。
「ロッカー」を怪談として捉えるのであれば、考察も現実的な観点(同僚女性の人間性)のみにまとめるべきだと考えました。
私が「ロッカー」をいい怪談だなと感じたのも、身近な人の知られざる一面を見たことがあり、それがジワジワと怖く感じた経験があるためです。
その話も、このブログで取り扱えればと思います。