私の名前はジロギン。
普段は読んだ本のレビュー記事など書かない私ですが、どうしても紹介したい一冊があり、今回書きました。
それが、ライターの村田らむさん著
『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』
です。
タイトルのとおり、人にまつわる怖い話が収録されている本作。
怪談を毎日3時間は聞く私。
そこいらの怪談では怖がらない自信がありますが、「絶対に体験したくない」と思わせられた話が盛りだくさんでした。
これまで読んだ怪談本の中でもぶっちぎりNo.1の怖さだったため、ぜひ紹介させてください!
- 幽霊より人間の方が何倍も怖いと思う!
- 親の子守唄より怪談を聞いて育ってきた!
- 怪談は怖ければ怖いほど良い!ゾクゾクしたい!
- 『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』はどんな本?
- 『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』のおすすめポイント3つ!
- 『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』の」ちょっと残念だったところ
- 怪談上級者はぜひ読んでみて!
『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』はどんな本?
ライター・イラストレーター・漫画家などとして活動している村田らむさんが体験・収集した「身近に潜む人間たちの狂気を垣間見た話」が収録されています。
村田らむさんといえば、青木ヶ原樹海に何年も通い続けているエピソードが有名ですね。
その他にも、ゴミ屋敷の清掃やカルト宗教団体への潜入取材なども行っており、一般の人ではなかなか立ち入れない世界に足を踏み込んできた人です。
そんな村田さんが出会ってきた人物たちは、超強烈!
- ハムスターを○すのが趣味の女性
- 本物の○し屋
- 蛇を大量に飼育する妻
など……本作に登場する人物を少しだけ書きましたが、並々ならぬ人たちだということが伝わってきませんか?
何といっても恐ろしいのは、彼ら彼女らがどこにでも存在する人間だということ。
一部特殊な業界の人も出てきますが、多くが私たちのすぐそばにいる人たちとなんら変わりません。
「自分の周りにも恐ろしい人がいるのかもしれない…いや、絶対にいるんだ!」と、読み進めるほどに思わせられました。
凄まじい没入感が味わえる作品群です。
村田らむさん以外のレジェンドたちの寄稿も多数
『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』に収録されている怪談は、全部で39篇。
そのうち前半が村田らむさんの体験談や、村田さんが収集したエピソード。
後半が、さまざまなゲストが寄稿したエピソードという構成になっています。
寄稿しているメンバーも、村田さん並みに一癖も二癖もある方ばかり!
- 裏社会の情報を発信する「丸山ゴンザレスさん」
- 事故物件住みます芸人「松原タニシさん」
- 元火葬場職員「下駄花緒さん」
- 怪談最強戦2021チャンピオン「田中俊行さん」
などなど……怪談やオカルト界を代表するレジェンドたちが集まっています。
野球で例えるならイチロー、松井秀喜、上原浩治、大谷翔平などが集まっているみたいな感じでしょうか。
村田さんのエピソードだけでなく、こんなにすごいメンツが誇る「最強の人怖話」まで読める、お得な一冊となっています。
『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』のおすすめポイント3つ!
実際に『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』を読んでみて、個人的に「ここが良かった!」と思ったポイントを3つ紹介します。
ここまでで既に良いポイントに触れてきてしまった感もありますが…他の視点でのおすすめポイントをまとめました。
- 1話が短くてサクサク読める
- 変な脚色がない
- 文字だけで怖いのがすごい
1話が短くてサクサク読める
収録されている39篇すべてが1話あたり数ページでまとめられています。
電車の1駅間で読めてしまう話がほとんどでした。
個人的には短いエピソードをサクサク読める方が好きなため、とてもありがたかったです。
読書が苦手という人でも、負担にならずに読めるのではないかと思います。
変な脚色がない
1話が短い理由として、エピソードを変に脚色したり、盛ったりしていないということが考えられます。
どのエピソードも、実際の出来事ことを淡々と書いているような印象でした。
これは本記事の前半で触れたリアリティにもつながっていると思います。
私はこれまでに怪談本を数多く読んできて
「うわぁここから完全に創作だ〜タイトルに実話怪談って書いてあるのに〜」
と感じてしまうほど急展開に入る作品にもたくさん出会ってきました。
具体的には
- 幽霊(怪異)と円滑にコミュニケーションができる
- 怪異の真相を知る老人が最後の締めとしてやってくる
- 居合わせた友達が都合よくオカルトに精通している(霊感が強い、知り合いに霊媒師がいる)
- 異形な村人たちに追いかけられ○されそうになる
- 霊媒師が幽霊と戦い始める
- 主人公だけが異世界に飛ばされる
など。
その怪談が実際にあったことなのか確かめようがないので、このような展開になっても創作と言い切れないのは事実です。
しかし…やっぱりどこか現実味がない気がします。
本自体が『実話怪談』と銘打っていなければ良いと思いますが、これで実話と言い張られるのはちょっとな…というのが私の意見です。
フィクションのホラー小説ならありだと思いますけどね。
『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』は、このような展開がほぼありません。
「こういう人がいた」という事実だけを書いているので、リアリティMAXです。
だからこそオチがなく、何も解決しないまま終わってしまうエピソードも多いのですが、それが恐怖を助長させているとように思います。
狂人が野に放たれたままという恐怖ですね。
文字だけで怖いのがすごい
文字だけで読み手を「怖い」と思わせるのは、とてもハードルが高いことだと思います。
例えばホラー映画なら、不気味なモンスターが突然現れたり、大きな音が突然鳴ったりすれば視聴者は驚きます。
映像と音声があれば、そんなに怖くないホラー映画でも視聴者を一時的に「驚かせる」ことは比較的簡単にできるんですよね。
でもそれは「驚く」だけで「怖い」とは違うのではないかと私は思っています。
「驚く」という感情はその一瞬だけ。時間が経てばすぐに忘れてしまうもの。
「怖い」という感情は頭の中に粘り強く残り続け、風呂場で頭を洗っているときにふと思い出すもの。
これが私が思う「驚く」と「怖い」の違いです。
『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』に収録されているエピソードを読んで湧いてくる感情は、一時的にびっくりする、驚くとは別物です。
脳が「うわぁこんな経験絶対にしたくない…」という感情をベチャベチャの黄色い液体としてにじみ出し、それが脳髄に絡みつくような感覚になります。
一言で表すなら「胸くそ悪い話」が多いですね。一種のトラウマになりそうな話といいますか…
エピソード自体が怖いからこそ、映像や音声がなくても文字だけで「怖い」と思わせられるのでしょう。
あと、ホラー小説でよくある
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すKOろすKOROすKOROSUKROSUKRSKRSKRSKRS」
みたいな、文字を繰り返しまくって狂気を表現するようなこともありません。
こういったやや単純な表現に頼っていないのも、エピソードだけで読み手に十分な恐怖を与えられるからこそなのだと思います。
『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』の」ちょっと残念だったところ
ここまで『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』を超ゴリ推しししてきましたが、ちょっと残念だったところもあります。
実は『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』に載っているエピソードには、村田らむさんがYouTubeやブログ、Webメディアなどで発信しているものもあるのです。
そのため、昔から村田さんのファンという人は知っているエピソードが多いかもしれません。
私も村田さんのことは以前から知っており、既に聞いたことのある話も半分くらいありました(それでも怖かったですが)。
ただ、本のどこにも「完全新作」みたいなことは書いていません。
そのため昔から村田さんのことを知っている方は「既知の怪談が多いかもしれない」という理解の上で買うことをおすすめします。
村田さん以外の方が寄稿したエピソードもたくさんあるので、そちらを楽しむのも良いでしょう。
怪談上級者はぜひ読んでみて!
ネタバレがないようにレビューしたため、伝わりにくい部分もあったかと思います。
とにかく知ってほしいのは、『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』という作品は
- 人にまつわる怖い話の短編集
- 超リアルで胸くそ悪い話ばかり
この2つの特徴があるということです。
あまり怪談に触れていない人がいきなり読むと、心臓がキュッと縮こまりすぎてしまうかもしれません。
どちらかといえば、脳に酸素と一緒に怪談も供給し続けているような、怪談上級者におすすめな一冊です。
極上の恐怖を味わえる『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』。ぜひ読んでみてください!