私の名前はジロギン。

HUNTER×HUNTERなどの漫画考察や、怪談・オカルト・都市伝説の考察、短編小説、裁判傍聴のレポートなどを書いている趣味ブログです!

【オカルト考察】JR駒込駅にあった『幻の二重階段』の現在と真相

私の名前はジロギン。

 

街中を歩いていて、不思議な造りをしている建物を見かけたことはありませんか?

変な位置に窓がついていたり、一部分だけ壁の色が異なっていたり……

こういうのを『トマソン建築』と呼ぶらしいですね。

 

今回考察するのは、そんな不思議な造りをした建物にまつわるオカルトな話。

東京都にある山手線の駅の1つ『駒込駅』のホームには、階段の上に作られた階段、その名も『二重階段』があったというのです。

上の階段は普通に使えるようになっているものの、重なった下の階段はどこにもつながっていなかったとのこと。

 

ネットの掲示板を見ると、二重階段が作られた背景として怪しげな理由も投稿されていました。

そこで、駒込駅の二重階段の現在を調べ、噂の真相を考察してみました。

5ちゃんねるに投稿された「JR駒込駅の二重階段」

2008年に、JR駒込駅の二重階段の話が5ちゃんねるに投稿されています。

20 :本当にあった怖い名無し:2008/03/02(日) 13:56:08 id:OMYD0l1Q0

昔、階段から足を滑らせて亡くなった女性がいて、その事件の後、妙に階段から落ちる人が続出。
それでお祓いしてもらったらしいんだけど、効き目なし。

そのうち変な風評も広がってしまったので、駅としては「まぁ階段も古くなっていることだし、丁度いいわ。上と掛け合って
階段を新しく造りなおすぜ!」ってなことで予算も下りて、さてこれから工事だぜーって意気込んだはいいけど・・・。

その古い階段を壊そうとすると、重機がひっくり返ったり、いきなり道具が壊れたりして取り壊す事が出来ない。

ますます地元では変な噂が広がっていて、それを聞いた工事の人も何人か逃げ出したとかなんとか。
駅としては、改札を新たに造るとしても土地やら予算の関係で無理。
最終的に、古い階段に被さる様にして新しい階段を造ることに落ち着いたらしい。

内回りに乗る人は進行方向一番前の車両の右側、外回りだったら進行方向一番後ろの右側のドア窓にへばりついて見て御覧。


奇妙な階段がよく見えるよ。

引用:【東京都】23区の心霊スポットpart13

 

転落事故が多発した階段を改装するために取り壊そうとしたら、何らかの力が働いて工事ができず断念。

以前まであった階段をそのままに、新しい階段を上に作ったことで二重階段が生まれた、という感じの話ですね。

 

この投稿だけを見ると、まるで階段に霊的な何かが取り憑いていて、人間にイタズラしたり工事を妨げたりしているように思えます。

 

そもそも駅は飛び込み自殺などが頻発する、死者が出やすい場所です。

このような投稿を見ると「駅で亡くなった人たちのさまよえる魂が階段に憑依してしまった…?」なんて妄想してしまいます。

 

果たして、この投稿にある話は本当なのでしょうか?

どれくらい信憑性があるのか、私のできる範囲で調査してみました。

実際に二重階段は存在したのか?

まず気になるのは「本当に駒込駅に二重階段が存在したのか?」ということ。

二重階段が存在したという事実がなければ、この投稿は調査するまでもないただのデマになります。

 

ということで、Googleで「駒込駅 二重階段」「駒込駅 階段」などと検索してみることに。

しかしヒットするのは、先ほどの5ちゃんねるの投稿だけでした。

 

やはり二重階段はデマだったのか…とあきらめムードになりながらも、念のためTwitterでも検索してみることに。

すると、なんと!このようなツイートを見つけました。

どうやら駒込駅に二重階段があったというのは本当の可能性が高いです!

 

この方のツイートによると、写真は1988年1月のもの。

そして1960年代には二重階段の存在を確認していたとのこと。

つまり二重階段は今から50〜60年くらい前には存在しており、少なくとも30年ほど前まではその姿を残していたことになります。

 

こんなにはっきりとした写真があるとなると、調査する価値は十分にありそうです。

現在の二重階段はどうなっている?

30年ほど前までは存在していたと思われる、駒込駅の二重階段。

では、2022年の現在はどうなっているのでしょうか?

実際に駒込駅まで足を運んでみました。

 

これまで集めた情報をまとめると、二重階段がある場所は以下のとおり。

内回りに乗る人は進行方向一番前の車両の右側、外回りだったら進行方向一番後ろの右側のドア窓にへばりついて見て御覧。

という5ちゃんねるの投稿。

駒込駅の巣鴨寄り階段の陰

というツイート。

 

とりあえず私は5ちゃんねるの投稿を信じ、新宿駅から山手線外回り電車の最後尾に乗り、向かって右側のドアにへばりついてみることにしました。

 

およそ十数分後に駒込駅に到着。

降りた位置はツイートにあったとおり、ホームの巣鴨寄りで、確かに階段がありました。

その影が二重階段となっているはず……

安全を確認しつつ、件の階段の陰を撮影してみました。

f:id:g913:20220418195629j:image

二重階段……なさそうじゃない?

ここからだとわかりにくいので、一度改札を出て二重階段が見えそうな場所に移動してみました。

 

そして撮影した写真がこちら。

f:id:g913:20220418195708j:image

ありませんね

どうやら古い階段はすでに撤去されて、『キュービクル』という電圧を変換する機械を入れた箱を置くスペースになっているようです。

見てみたかったですが……5ちゃんねるの投稿ですら2008年とかなり前のことですからね。

撤去されていても不思議ではありません。

二重階段はいつ頃なくなったのか?

ここでさらに気になるのが、古い方の階段はいつ撤去されたのかということ。

引用させていただいたツイートから1988年までは存在していたようですが、そこから現在まで30年以上経っています。

あまりにも間隔が空きすぎていますね。

 

5ちゃんねるに二重階段の話が投稿されたのが2008年ということを考えると、その頃(2000年代初頭)までは存在していた可能性が高そうです。

 

もう少し特定するヒントが欲しい……

そう思い私は、改札にいた駅員さんに勇気を出して聞いてみることにしました。

駅員さんなら何か知っているのではないかという、1つの可能性に賭けて…

お仕事中のところすみません。いま駒込駅の研究をしていまして…昔、ホームに階段が二重になっているところがあると聞いたんですが…

はぁ……?

この駅員さんの反応を見た時点で「十中八九ご存知ではないんだろうな」という気持ちが私の心の中に芽生えました。

でもあきらめない!ここまで調べたのだから!1%でも可能性があるならそれに賭ける!

今はもうなくなっているようなのですが、いつ頃まで二重の階段があったかわかりませんか?

いやぁすみません、ちょっとわからないですねぇ…確かに今は二重の階段はないですけどね…

1%の賭けに敗北!至極当然!

 

20代後半〜30代前半くらいの若い駅員さんだったので、昔のことまで把握されていなかったのかもしれませんね。

もっとご年配の方なら知っていたかも……?

お仕事中なのにご丁寧に対応していただき、ありがとうございました。これからも山手線使いまくります。

こんな感じで、駅員さんからの回答は得られませんでした。しかし、ヒントは得られました。

20代後半〜30代前半くらいの駅員さんが知らないということは、二重階段はこの世代が働き始める前にはなくなっていた、という仮説が立てられそうです。

仮にこの駅員さんが32歳で、大卒で働き始めたとしてもおそらく10年ほど前(2012年ごろ)には二重階段はなくなっていたのではないでしょうか?(駅員さんが中途採用でつい数日前から働き始めた可能性も否めませんが…)

 

調べる範囲が狭まってきました。

5ちゃんねるの投稿があった2000年代初頭から2012年ごろまでの間に駒込駅で改装工事が行われていたとしたら、そのタイミングで二重階段がなくなっている可能性が高そうです。

そこで今度は駒込駅の歴史から、改装工事が行われた年代を調べてみました。

 

これがビンゴ!

2006年に駅舎の改装工事を行っていました。

引用:駒込駅 - Wikipedia

 

ソースがWikipediaというのがちょっと怪しいところですが、ここまで詳細に書かれていることから、信じても問題ないのかなと。

しかも、改装工事を行ったのは北口・南口側。

ここは私が撮影した写真にあった、もともと二重階段があった場所です。

 

5ちゃんねるの投稿が2008年3月。

つまり投稿の1年半ほど前には、二重階段はなくなっていたのではないでしょうか。

投稿主はそのことを知らず、まだ二重階段があると思って投稿したのでしょう。

 

投稿に書かれた二重階段の確認方法が電車の中から見る方法だったことを考えると、投稿主は駒込駅のユーザーではなく、過去に何度か電車で通過したことがある程度の知識で書き込んだではないかと思われます。

そのため、駒込駅の変化までは把握しきれていなかったと考えられそうです。

5ちゃんねるに投稿されたような事故はあったのか?

ここまで情報がそろうと、5ちゃんねるの投稿がなんだか現実味を帯びてきます。

次に調べたのは、駒込駅で起きたという「人々が階段から転落した」「階段を壊そうとしたら重機がひっくり返り、道具が壊れた」という事故が実際に起きたのかどうかです。

 

引用させていただいたツイートによると、二重階段は1960年代にはあったとのこと。

ということは、これらの事件はもっと前に起きたことだと思われます。

少なくとも60年以上前の事件なると、よっぽど大きなものでない限りインターネットでは情報が出回ってい場合が考えられます。

実際にネットで調べてみても、該当しそうな情報は得られませんでした。

 

そこで、図書館のオンラインデータベースで過去の新聞記事から駒込駅で発生した事故を調べてみました。

オンラインデータベースを使えば、明治時代に発行された新聞記事でも検索できます。

 

「人々が階段から転落した」「階段を壊そうとしたら重機がひっくり返り、道具が壊れた」なんて不可思議なネタで、しかもそれが多くの人が使う駅で起きた事だとしたら、ちょっとくらい新聞に取り上げられているのではないか……?

そう思っていた時期がボクにもありました。

朝日新聞、毎日新聞の2つを調べてみましたが、ヒットする記事はなし…

これほど目立ちそうな事件を大手新聞社が取り扱わないとは考えにくいことを踏まえると、5ちゃんねるに投稿された話の「事故に関する部分」は、正確ではない可能性がありそうです。

 

ただ、次の項目で解説しますが「もしかしたらこの出来事が5ちゃんねるの投稿にあった話を生んだきっかけなのでは…?」と考察できそうな記事が見つかりました。

なぜ怪しい話が5ちゃんねるに投稿されたのか考察

5ちゃんねるに投稿された怪しい話が生まれたきっかけではないか?と思える記事は、1927年8月16日の朝日新聞に掲載されていました。

 

記事の内容を要約すると、

駒込駅は1924年(大正13年)5月に改築されましたが、以降も飛び込み自殺が多発しました。

そのような状況から駒込駅は「魔のホーム」と呼ばれ、従業員たちも恐れていたそう。

そこで駒込駅は1927年8月18日にホームと近くの踏切に祭壇を作って、自殺者の大追悼会を開きました。

この記事の内容を載せているサイトも見つけました。

furushimbun.cocolog-nifty.com

 

この情報から考察すると、かつての駒込駅は「魔のホーム」と呼ばれるほど飛び込みが多く、自殺者の大追悼会を行っています。

こういった出来事が事実と異なる形で伝わり、奇妙な二重階段と紐付き

  • 「人々が階段から転落した」
  • 「お祓いしてもらったらしいんだけど、効き目なし」
  • 「階段を壊そうとしたら重機がひっくり返り、道具が壊れた」

なんて怪しげな話になったのではないでしょうか。

というより、5ちゃんねるに投稿した人が事実と異なる捉え方をしてしまった、といった方がいいかもしれませんね。

 

このことから私の考えとしては、

「5ちゃんねるの投稿は、二重階段があったという点については真実の可能性が高いが、そのほかの部分についてはかなり疑問が残る」

という感じです。

なぜ二重階段が生まれ長年そのままにされていたのか考察

残る疑問は「なぜ二重階段が生まれ、長年そのままにされていたのか」という点。

この点については、答えにつながる確かな情報をつかめないままでいます。

 

ただ、関係しそうな新聞記事は見つけました。

1956年(昭和31年)8月24日の毎日新聞に掲載された記事です。

 

内容を要約すると

当時、国鉄(日本国有鉄道)による駒込駅舎の建設計画がありました。

しかし、その計画が進められない問題も発生していました。

1955年4月から駒込駅周辺の住民が「駅の建設促進派」と「反対派」の2つに分かれ、対立していたのです。

 

国鉄は、区画整理が進んでいた駒込駅南口広場に新駅舎を建設し、北側都電車庫口(現在の北口と思われる)を閉鎖する方針を明らかにしました。

これがきっかけとなり、促進派と反対派が生まれました。

 

反対派は「駒込駅の乗降者の6割は北口利用者である」ことを示し、閉鎖に反対。

しかし北口を残すとその分駅員を動員する必要があり、国鉄は予算の関係で計画が進められず、一時見合わせの状態が続いていました。

 

1956年に入って、両派閥の妥協案が成立。

その案というのは「南口に駅本舎を建設するが、北口も残して現行通りの出札事務を行う」というものでした。

この記事を読むと、二重階段はこの「北口を残す」という妥協案の名残りのようにも思えます。

南口の駅本舎は翌年の1957年5月に完成したとのことで、このタイミングで二重階段が生まれたとしたら、引用したツイートにあった「1960年代には存在していた」という証言とも一致しそうです。

 

もちろんこれは私の考察に過ぎません。

他に思い当たる理由としては、

  • 工事の予算が足りなかった
  • 駅舎の構造上、取り壊すことができなかった

などもありえそうですよね。

 

特に1956年の駒込駅舎建設で北口を残すにあたり、予算は当初の800万円から2300万円まで膨れ上がったという記述も新聞にありました。

予算が増えたことで古い階段を取り壊す余裕がなくなった……なんて考察もできそうです。

調査と考察のまとめ

JR駒込駅にあったという『幻の二重階段』についての調査と考察をまとめます。

  • 1960年代には二重階段が存在しており、2006年に撤去されたと思われる
  • 5ちゃんねるの投稿はデマの部分が多いと思われる
  • 5ちゃんねるの投稿が生まれた理由は、かつて駒込駅が「魔のホーム」と呼ばれていたため?
  • 二重階段が残されていた理由には謎が多いが、1955〜56年ごろにあった近隣住民による北口閉鎖反対の動きが背景にあった?

まだまだ不明点は多いですが、とりあえず駒込駅の二重階段はいわくつきのものではなく、別の理由から取り残されていただけの可能性が高いと考えられそうです。

 

ただ、本記事の内容は我流の調査方法で得た情報が多く、憶測による部分あります。

話半分に考えてもらえると幸いです。

もし駒込駅の二重階段についてご存知の情報がありましたら、ぜひコメント欄に!。