クロロは、クラピカの「律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)」により、念能力の使用と旅団員への接触を封じられてしまいました。
その念を外すため、ヒソカに除念師の捜索を依頼。
以前ネオンが行ったクロロの占いを頼りに、グリードアイランド(G.I)で除念師探しを開始したヒソカ。
G.Iには幻影旅団のメンバーも乗り込んでおり、新入りメンバー・カルトの能力で除念師・アベンガネを発見。
その後ヒソカがアベンガネと交渉し、クロロの依頼を達成しました。
アベンガネがG.Iに参加した目的は、G.Iをオークションで落札した大富豪・バッテラ氏が提示したゲームクリア報酬だったと思われます。
しかしゴンが初のクリア者になったときには、バッテラ氏はG.Iクリアの目的を失っており、プレイヤーたちへの報酬支払いは白紙に。
それを知ってか知らずか、アベンガネは「ゲームの成功報酬はお前達にくれてやる。オレは一足先に現実へ戻り、除念で大儲けだ」と、ゲームを放棄してヒソカと共にクロロの除念に向かいました。
アベンガネがお金目的で参加していたことと、「除念で大儲け」という言葉から、ヒソカはアベンガネに、金銭の引き渡しを条件にクロロの除念をお願いしたのだと考えられます。
ではヒソカはアベンガネにいくらの報酬額を提示したのでしょうか?考察していきます。
アベンガネとは?
G.I編以降、どうなったかが一切不明なアベンガネ。
まずはアベンガネがどんな人物だったか、簡単に振り返りましょう。
「オレはアベンガネにくっついて過ごしていた期間があるから、ヤツについて誰よりも詳しいぜ」という念獣は読み飛ばしてください。
アベンガネは、ゴンたちと同じタイミングでG.Iに参加したプレイヤーの1人。
バッテラ氏が提示したゲームクリア報酬を目当てに、プレイヤーとして名乗り出たようです。
アベンガネはG.Iのプレイ開始直後に、グループでゲームクリアを目指す集団(ハメ組)に加入。
カードの効果を瞬時に把握するなど、群を抜いて高い知能を見せました。
しかしハメ組には、爆弾魔(ボマー)の1人としてゲーム内でプレイヤーを●害していたゲンスルーが最古参メンバーとして潜伏。自身の念能力「命の音(カウントダウン)」で他のメンバー全員に爆弾を仕掛けており、爆弾の解除を条件に、長い時間をかけてメンバーが集めたカードを引き渡す取引を持ちかけました。
ゲンスルーが仕掛けた爆弾は、対象者の心拍数と連動してカウントダウンが進み、平常時でも1時間で起爆。興奮したり、負傷したりして心拍数が上がるとカウントダウンのスピードも速くなるという仕組み。
この爆弾の仕組みを見抜いたのもアベンガネでした。
圧倒的に爆弾魔たちが有利な取引で、悪逆の限りを尽くしてきたゲンスルーが条件を守るわけもなく……カードを手に入れた時点で爆弾を解除ではなく起爆させ、ハメ組を壊滅させました。
ただ一人生き残ったアベンガネ。
実はアベンガネこそクロロが探し求めていた除念師であり、自身の能力でゲンスルーたちが爆弾を起爆させる前に除念していたため、被害を逃れたのでした。
「なんだよ自分だけ助かりやがって!他のハメ組の連中も助けてやれよ!」と思う念能力者諸兄もいるかもしれません。
しかしアベンガネの除念能力は、複数人に対して使える万能な能力ではないのです。
アベンガネは念と森の精霊の力によって、かけられた念の強さに応じた大きさ・見た目の念獣を具現化。かけられた念をその念獣が食べることによって除念します。
アベンガネ1人分の「命の音(カウントダウン)」を外すだけでも、身の丈ほどある念獣が具現化されました。これをハメ組メンバー数十名全員に施したら、巨大な念獣だらけになり、ゲンスルーに勘付かれる可能性が高かったでしょう。
しかも具現化された念獣は、念をかけた者が死ぬか、アベンガネが念の解除条件を満たすまで消えません。
つまりアベンガネの除念は、念を取り除くというより「一時的に肩代わりする」という意味合いが強く、かけられた念が強いほどアベンガネにかかる負担も大きくなるのです。
アベンガネ1人でハメ組全員の除念をするのは、ほぼ不可能だったでしょう。
ゴンたちが爆弾魔3人との戦いに勝利し、拘束したことで、アベンガネは「命の音(カウントダウン)」の解除条件である「ゲンスルーの体に触れながら『ボマーつかまえた』と言う」を危なげなくクリア。
無事、念獣は消え去り、G.Iを出てヒソカと共にクロロの除念に向かったのでした。
バッテラ氏のG.Iクリア報酬は500億ジェニー
話を進める前に、もう1つ振り返っておきたいことがあります。
それは、バッテラ氏がプレイヤーに提示したG.Iのクリア報酬です。
バッテラ氏はG.Iをクリアした者に500億ジェニー支払うことを約束。
その理由は、事故の影響で長い間昏睡状態にあったバッテラ氏の若い恋人を治療するためでした。
バッテラ氏は恋人を治せる可能性のあるカードを現実世界(G.Iの外)に持ち出したいと考えていました(あと自分が若返ることも)。しかしそれにはゲームのクリアが必須なため、莫大な報酬の支払いを条件に有能なプレイヤーを集めていたのです。
しかし冒頭で記載したとおり、ゴンがゲームクリアする前にバッテラ氏の恋人が死去し、バッテラ氏はゲームをクリアする目的を失ってしまいました。
最終的に成功報酬の500億ジェニーのうち7割(350億ジェニー)をツェズゲラ組が、40億ジェニーをゴレイヌさんが受け取る形になり、満額受け取るプレイヤーは出ませんでした。
ヒソカがアベンガネに提示した報酬金額は?
では本題。
クロロの除念の成功報酬として、ヒソカはアベンガネにいくら提示したのでしょうか。
作中で明言されてはおらず、あくまで「少なくともこれくらいの金額では?」という予想にはなってしまいますが、さまざまな描写から考えてみます。
ヒソカは脅したわけではなさそう
まずはじめに、ヒソカがアベンガネに提示した成功報酬が0ジェニーという可能性はほぼなさそう。
正確にいうと、
「クロロを除念しないと●すよ♠︎」
などとアベンガネを脅して、強制的に除念させた可能性はないということです。
このように考える理由は、アベンガネがクロロを除念する前に「大儲けだ」と心の中で言及しているため。
ヒソカと交渉している段階で、「大儲け」と感じる金額を提示されたからでしょう。
ヒソカの実力はゲンスルー以上でしょうし、バックには幻影旅団もついてましたから、アベンガネ1人を脅そうと思えば簡単にできたはず。
しかしそれではアベンガネが行方をくらませたり、自分で命を絶ってしまったりして、再度除念師を探す手間が発生するかもしれません。
ハンターハンターの世界といえど、除念師を見つけるのは雪男を見つけるくらい難しいことらしいので、せっかく見つけたアベンガネを逃す真似はしたくないはず。
アベンガネが確実にYesと答える条件を提示したのは確かでしょう。
アベンガネはいくらなら納得するか?
問題は、アベンガネがいくらならゲームクリアを放棄してでもクロロの除念を引き受けてくれるかです。
自然に考えるなら、バッテラ氏が提示したクリア報酬500億ジェニー以上でなければ納得しないでしょう。
しかしそれは除念の条件にもよると思うのです。
先述のとおり、アベンガネの除念によって生み出された念獣は、念をかけた者が死ぬか、アベンガネが念の解除条件を満たさない限り消えることはありません。
つまりアベンガネは自身の能力でクロロを除念できたとしても、新しくクリアしなければならないハードル(クラピカが死ぬか、クラピカの念の解除条件を満たすこと)が生まれることになります。
もしクラピカの死or念の解除がG.Iのクリアより簡単だとアベンガネが判断すれば、仮にヒソカから提示された金額が500億ジェニーより低くても納得した可能性があります。
これまで誰もクリアしたことのないG.Iをクリアするよりも個人のかけた念を取り除く方が簡単で、500億はもらえなくても、例えば300億もらえるのだとしたら、除念を優先する方が賢い選択だといえます。
アベンガネのように頭の切れる人間なら、単純に金額の多寡だけで考えず、労力に対して割りに合う金額かどうかを重視するでしょう。
しかもクロロ除念の依頼人はヒソカおよび幻影旅団です。
彼らが「念をかけた者(クラピカ)のことを知っており、除念後に始末する」などの条件を付け加えれば、アベンガネにとっては解除条件を自力で満たす必要もないですし、具現化した念獣が消える可能性も非常に高く、さらに好条件に感じるはず。
アベンガネは能力を発動するだけ。あとはヒソカと旅団が念をかけた者を始末するのを待てば良いのであれば、500億ジェニー未満でも除念を引き受けたのではないでしょうか。
バッテラ氏のクリア報酬は満額得られなかった
G.Iのクリア者が出る前にバッテラ氏の恋人が死亡してしまったため、ゴンたちがゲンスルーらとの戦闘準備をしている頃には、どのプレイヤーもクリア報酬を満額得ることはできない状態になっていました。
ツェズゲラ組は違約金として7割(350億)を得られたそうですが、それはツェズゲラたちが長年にわたってバッテラ氏のサポートをしてきたためです。バッテラ氏に長い間仕えてきた分の報酬といっても良いかもしれません。
一方、ゴンたちと同じタイミングでG.Iに参加したゴレイヌさんは、バッテラ氏と交渉しても40億ジェニーもらうのがやっとでした。しかも、この40億はゴン・キルア・ビスケと4人でシェアするための金額であり、ゴレイヌさん1人の分け前は10億ジェニー。成功報酬500億ジェニーの1/50です。
この交渉の場にアベンガネがいたとしても、もらえた金額はゴレイヌさんと同額程度だったと考えられます。
しかもゴレイヌさんは個人でゲームを進め、入手が最高に難しい「一坪の海岸線」のゲットに貢献した上での10億ジェニーです。
アベンガネがハメ組消滅後にどのくらいゲームを進めていたのかは分かりませんが、念獣を連れながらゴレイヌさんと同じくらい進められていたかというと、疑問が残ります。
もしゴレイヌさんほど進んでいなかった場合「ゲームクリアの可能性が低かったプレイヤー」とみなされ、報酬はさらに減額されていたかも。
このように考えると、ヒソカは500億ジェニーなんて高額を提示しなくても、数十億ジェニーくらいでアベンガネを納得させられたかもしれません。
ただし、アベンガネとヒソカが交渉したのはレイザーとのドッジボール戦のすぐ後と見られ、この時点ではバッテラ氏が成功報酬の支払いを白紙にした件を知るプレイヤーはいませんでした。
バッテラ氏の側近ともいえるツェズゲラもゲームプレイ中で、クリアすれば500億ジェニーをもらえると思っていた様子。
だとすると、アベンガネもクリア報酬は500億ジェニーという前提でゲームをプレイしていたと考えられ、ヒソカから提示された金額が500億未満ならば、そのままゲームを優先した可能性があります。
念獣を具現化しないと除念の報酬金額を決めるのは難しい
ヒソカか幻影旅団がクラピカを始末してくれるのであれば、アベンガネにかかる除念の負担は大幅に軽減されるでしょう。
しかしそうでない場合、アベンガネが自力でクラピカを始末するか、念の解除条件を満たす必要があります。
幻影旅団員は旅団のために命を落としたパクノダの意思を汲み取ってクラピカへの報復は断念していたようですし、団員がクラピカをどうこうする条件は出さなかったかもしれません。
そしてアベンガネの除念によって生み出される念獣は、かけた念の強さに応じて姿を変え、強いほど巨大かつ醜悪な見た目になる様子。
単なる金目当てで個人的な恨みのない相手に仕掛けたゲンスルーの爆弾を除念した場合でも、アベンガネが驚愕するほど大きな念獣が生まれていました。
クラピカは同胞を殺された恨みを込めた念をクロロにかけていましたから、アベンガネの除念で生まれる念獣は、ゲンスルーの爆弾の比ではない大きさ・厄介さだったかもしれません(「命の音(カウントダウン)」はゲンスルーとサブ・バラの3人で扱う念だったため、込められた思いが浅くても強力だったとも考えられます)。
アベンガネ自身、除念によってどのような念獣が生まれるか(かけられた念の強さ)はやってみないと分からない模様。
すなわち実際にクロロに会って除念をしないうちは、どのくらい厄介な念獣が生み出され、消すまでにどれくらいの労力がかかるか判断するのは難しかったと思われます。
アベンガネの立場で考えるなら、まずクロロ除念の報酬金額のボーダーをG.Iのクリア報酬と同額にした上で、除念後に生まれた念獣を見てから具体的な金額を決めた方がメリットが大きいでしょう。
例えば、除念の着手金として500億ジェニー、除念成功(念獣が完全に消滅する)でさらに500億ジェニーなどの条件で交渉すれば、アベンガネは除念した段階でG.Iのクリア報酬と同額をクロロから受け取ることができ、除念が成功すれば倍額を受け取ることができます。
この条件なら最低でも500億ジェニー、最高で1,000億ジェニーゲットでき、まさに「大儲け」です。
単発の依頼ではなく継続的な依頼を交渉の条件にした可能性も
除念師は貴重な存在で、幻影旅団内にも除念能力を持つ団員はいません(明らかになっていない)。
しかし、今後もクラピカのように持続する念をかけてくる者がいる可能性を考えると、団長のクロロとしては、アベンガネは是非とも囲っておきたいところでしょう。
クラピカの念によりクロロは旅団員と接触ができなくなり、組織としても瓦解しかけましたからね。
そこでアベンガネに、幻影旅団専属の除念師になってもらうことを条件に、ヒソカ経由でクロロの除念を依頼したという可能性も考えられそうです。
つまりクロロにかけられたクラピカの念を外すだけでなく、今後も同じことがあった場合、アベンガネに除念を依頼するという条件を飲んでもらったと。
そうすれば、例えばクロロの除念が1回100億ジェニーだったとしても、今後も1回100億ジェニーで除念を依頼する契約を結べば、アベンガネは将来的にG.Iクリア報酬の500億以上の金額を得られる可能性があります。
念能力者だろうがお構いなしに攻撃する幻影旅団の性質上、呪いのように持続する念をかけられるケースも多いでしょう。そんな連中が自分の顧客になるのであれば、アベンガネとしては「大儲けできる」と考えても不思議ではありません。
アベンガネの言い値(少なくとも500億ジェニー以上)が妥当な条件か?
クロロの除念だけの単発依頼なのか、継続的な依頼を条件としたのか、どういう交渉が行われたのかまでは描写がないので分かりません。が、どちらにせよアベンガネにかなり有利な交渉だったのは間違いないでしょう。
少なくともヒソカは、アベンガネがG.Iのクリア報酬500億ジェニー以上を受け取れるような形で交渉を成立させたと思われます。
一番手っ取り早いのは、ヒソカから具体的な報酬金額を提示するのではなく、アベンガネの言い値で報酬を支払う契約を結ぶことでしょうね。
おそらく報酬を支払うのはヒソカ個人ではなく幻影旅団でしょうから、旅団を抜けたヒソカとしてはいくらを提示しようが損はありません。
しかも当時の幻影旅団は、マフィアンコミュニティーが開催したオークションから宝を大量に盗んだばかり。緋の眼をはじめ、どの宝も闇市場で億単位の値が付くでしょうから、仮にアベンガネから500億ジェニー以上を希望されても支払うことはできたと思います。
クロロは、宝をひとしきり愛でたら売り払ってしまうようですので、お金はいくらでも用意できたでしょう。
……なんていう考察という名の妄想を進めてきたわけですが、クロロがアベンガネに約束通りの報酬を支払った保証はないんですよね……アベンガネのその後が分かりませんから。
クロロの実力なら、除念が完了して念能力を使えるようになったタイミングで、アベンガネを始末することくらい簡単でしょう。
それに専属契約なんか結ばなくても、アベンガネの除念を見たり質問したりすることで「盗賊の極意(スキルハンター)」で能力を盗む条件を1つずつ満たすことができ、あとはアベンガネを死なない程度にボコボコにして本に手を合わせれば、クロロ自身がいつでも除念できるようになります。
さらに、クロロに念をかけた張本人のクラピカも存命で、ヒソカや幻影旅団が●しに向かった様子はありません。
アベンガネが大金持ちになって再登場しない限り、交渉通りの金額が払われていない可能性はゼロではない……
クロロも「わたし達盗賊、盗むに決まてるね」精神だったら、アベンガネはもうこの世には……