魚人海賊団船長にして元七武海の一人でもあったジンベエ。
ジンベエは初登場時からルフィの兄・エースと親交があり(元々戦ったことはありましたが)、要所要所でルフィを助けてくれて、麦わらの一味に入団しそうな勢いですね(ワノ国編で正式に仲間となりました)。
すっかり「心優しい海賊」のイメージが付いているジンベエですが、東の海(イーストブルー)時点でのジンベエの評価は「極悪非道な魚人の海賊の頭」というイメージでした。
正直、ワンピースを序盤から追ってきた身としては、ジンベエが悪い海賊だったパターンも読んでみたいなと思ってしまうのです。
ジンベエとは?
(引用:ONE PIECE 64巻46P/尾田栄一郎)
ジンベエザメの魚人です。七武海加入時点での懸賞金は2億5000万ベリーでしたが、インペルダウン脱獄と頂上戦争への参入により改めて4億ベリー以上の懸賞金がかけられました(ワノ国編後は11億ベリーにまで上昇)。
元魚人海賊団船長・フィッシャータイガーの死後、新たなる船長として魚人海賊団を率いていました。
元々は魚人島・リュウグウ王国の兵士だったことと、魚人島を守るために尽力してくれたことからも、海賊ながら魚人達の間では厚い人望を誇っています。
ルフィとはエース救出時に協力関係となり、以降は魚人島での一件を含め、すっかりルフィの味方となっています。
若干荒々しい面があるものの、人情に厚く、忠義を尽くそうとする、一般的なイメージにある海賊らしからぬ面をジンベエは持ち合わせています。
得意技は自らの体を使った「魚人空手」で、他の魚人が使う魚人空手とは威力が桁違いです。
もちろん魚人なので水中戦も得意としています。
ジンベエが悪い海賊というイメージ
イーストブルー編を読んでいた私は、当時まだ小学校低学年くらいだったと思います。
ジンベエが登場したのはその何年も後なのですが、名前だけはすでに明らかになっていました。
賞金稼ぎのヨサクが、アーロンパークに乗り込もうとするルフィとサンジに、いかに魚人が恐ろしいかを語っていた時にジンベエの名前を挙げたのです。
同じく魚人の海賊団であるアーロン一味を率いていた船長・アーロンの悪行は、作中にあった通りです。
ナミの住んでいたココヤシ村やその周辺の村々を支配し、ナミを捕らえて海図を書かせる生活を強いていました。
またナミの代理母であったベルメールさんも殺害しています。イーストブルーでは実質最強の海賊だったと言えます。
当時の子供達にとって、アーロンはかなり恐ろし存在でした。ルフィがしょっぱなから海に沈められてしまった時は、絶望しかなかったです。
当時を知る人たちにとっては魚人=アーロンのイメージであり、魚人は人間を蔑み、力では敵わない存在なのだと思っていたことでしょう。
で、そのアーロンよりも上にいる存在がジンベエとヨサクは説明していました。
いや、肩を並べたと言っていましたね(実際アーロンはジンベエに全然かないませんでしたが)。
さらに海上レストラン・バラティエでは、ジンベエと同じく七武海の一人であった鷹の目のミホークがゾロを圧倒していました。
そのことからも「ジンベエ=ミホークと同じくらいの強さ且つアーロン並みの残虐性を持っている」とイメージしてしまうのも無理はなかったですね。
さらに言うと、そんな残虐なアーロンをイーストブルーに解き放ったのがジンベエなのだとヨサクは説明していました(確かにそうなのですが、ジンベエにも事情がありました)。
アーロンを戯れにイーストブルーに攻め込ませ、ナミたちを苦しめていたジンベエに対して、当時の読者は悪い印象を抱いていたことでしょう。
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蓋を開けてみると
ただ、ジンベエが登場してみると、「とてもいいやつじゃん!」と、それまでの印象がガラリと変わるほどの活躍を見せてくれました。例えば
- ルフィのエース奪還に協力(途中、ジンベエザメを援軍として呼び寄せてくれたり、命をかけてルフィを赤犬から守ったりしてくれた)
- 魚人島での戦いにも加勢。瀕死のルフィに自身の血を分け与えた。
- 四皇・ビッグマムに逆らってでもルフィ達に協力
- カイドウを倒すためワノ国(鬼ヶ島)に乗り込んだルフィたちに協力
などなど・・・随所でルフィ始め麦わら海賊団を助けてくれる頼もしい存在となっています。
そもそも、ジンベエはヨサクの噂にあった極悪非道な海賊などではなく、むしろ仁義を通そうとし、人間や他の魚達とも仲良くしようと考えている、魚人としても海賊としても良い意味で変わり者でした。
さらに七武海でありながら、白ひげと海軍が戦争をするときには、投獄されてもなお海軍の見方をしなかったほど熱い男でしたね。
「おいおいおいおい、話が違うじゃないかヨサクよ!ジンベエいいやつすぎるじゃん!」と、ジンベエを悪役だと思っていた読者としては、ある意味拍子抜けだったかもしれません。
本来はホーディの役割がジンベエだったのかな?
魚人島の存在も作中序盤ですでに匂わされていたので、ジンベエとルフィは魚人島で戦うことになると予想されていました。
しかし、実際の魚人島編ではジンベエはルフィの味方で、敵はアーロンの意志を継ぐ魚人ホーディ・ジョーンズとその部下(とバンダー・デッケン9世)でした。
(引用:ONE PIECE 62巻150P/尾田栄一郎)
ホーディは七武海でもないですし、なんなら自身の故郷である魚人島からもほとんど動いていない、海賊としてもまだまだ新参者でした。
これまでに七武海や海軍大将などと戦いを繰り広げてきたルフィにとっては、ホーディはまず負けることがないであろう敵だったと思います。
しかも、ホーディより強い魚人のジンベエが味方でしたからね。ホーディではルフィ及び麦わらの一味を追い詰めることはやはりできませんでした。
本来ならば、このホーディの役割がジンベエだったのかもしれません。
前評判としては残虐非道で、七武海の一角で、さらにアーロンをも手なずけていた海賊・ジンベエが魚人島最大の敵だったとしたら、魚人島編はもっと盛り上がったかなとも思います。
正直ジンベエとルフィのガチバトルを期待していた読者も多かったはず・・・私もその一人です。ジンベエは悪い海賊だと思っていたので、ルフィとの戦いは楽しみでした。
まぁ、どのみちかなり強いジンベエがルフィの仲間になりそうなので、それはそれで良いことではありますが。
ジンベエを見る角度によっては・・・
基本的に、ルフィたち麦わら海賊団の視点でワンピースを読んでいる私たち読者としては、ルフィたちの味方をしてくれるジンベエは良い海賊だと思えます。
しかし、ジンベエを見る角度によっては、ジンベエだって悪い海賊となり得るとも思うのです。
やはりジンベエの動きによって一番被害を受けたのは、ココヤシ村の人たちでしょう。
ジンベエは、これ以上アーロンが人間に敵意を持たないようにと、アーロンの釈放の代わりに七武海加入を決意しました。
しかし結局アーロンの人間に対する考え方は変わらず、むしろ敵意は大きくなってしまいました。
ジンベエにも事情はあったとはいえ、実際に苦しんだ人がいたのは事実。
ナミはジンベエを責めたりはしませんでしたが、他の村人の中には自分たちが苦しんだ元凶はジンベエにあると思っている人もいることでしょう。
見方考え方によってはジンベエを悪だと捉える人もいるわけです。
ヨサクは別に嘘をついていたわけではなく、そういったジンベエの諸々の行動の結果、被害を受けた人間からのジンベエの評判をルフィ達に伝えたにすぎなかったのです。
ルフィもエースを救い出そうとインペルダウンに侵入した結果、多くの囚人を解放することになりました。そのせいで被害を受けた人も多いのではないかと思います。
正義と悪は非常に曖昧なもの。一方では正義でも他方では悪であることはざらにあります。ジンベエも捉え方によっては悪い海賊とみなされてしまうかもしれませんね。
ジンベエ=敵は読者の勝手なイメージ
正しく言うと私は、ジンベエが悪い海賊であって欲しかっというよりは、ジンベエがルフィの敵として立ちはだかって欲しかったという感じですかね。
ジンベエがルフィの味方になってくれるのは、読み手としてはすごく安心感がありますし、これからのストーリーも面白くなりそうです。
ただ、ジンベエに対する期待は、長いこと「アーロン以上に凶悪で強い魚人」というものだったと思いますので、ルフィとジンベエが敵として対峙するストーリーも読みたかったなと今でも思います。
まぁ「ジンベエ」という名前から、「他の魚を襲うこともなく、プランクトンを食べる比較的大人しいジンベエザメの魚人=優しい魚人」と考えることもできましたけどね。
ただヨサクの話すイメージから、今のジンベエを予測するのは難しかったのではないかなと思います。尾田先生に多くの読者が意表をつかれた形になったのではないでしょうか。