誰に対してもフラットに接するゴン。
「実は他人にあまり興味を示さない」からフラットなのかもしれません。
そんなゴンが深く根にもち、憎悪の感情を向けたキャラクターもいます。
今回は、他人に強い負の感情を抱くことの少ないゴンが、深く根にもったキャラクターを3人紹介。そこから、ゴンがどんなタイプに負の感情を向けるのかを考えてみます。
ネフェルピトー
まずはキメラ=アント王直属護衛軍の1匹、ネフェルピトー。
ピトーは、ゴンが恨みを通り越して自発的に殺意を向けた数少ない、いや唯一のキャラクターです。
キメラ=アント編まで、敵対した人物の命までは奪おうとしなかったゴン。グリードアイランドで数多の殺人を犯してきた爆弾魔(ボマー)たちでさえ、戦いの後は傷を癒すなど温情をかけていました。連続殺人鬼のビノールトにも悪意を抱いていませんでしたね。
そんなゴンが、異常なほどの殺意をピトーに向けたことに、読者の多くが驚愕したことでしょう。
自身はもちろん仲間にも殺人をさせまいとしてきたゴンが、ピトーに殺意を抱いた背景には、カイトの存在があります。
ゴンと親交が深い人物のうち、初めて戦いの中で命を失ったのがカイトでした。
カイトの命を奪ったピトーは、ゴンにとって「自分の大切な人を殺した」初めての存在。だからこそ激しく激昂し、ピトーを殺すという行動につながったのです。
これまでゴンが敵の命を奪わなかったり、キルアに暗殺の仕事をやめさせるようゾルディック家に直談判しに行ったり、クラピカに幻影旅団への復讐をやめさせたいような言動を取ったりしていたのは、良くも悪くも、ゴン自身が直接の被害者ではなかったからだと思います。
ゴンはゾルディック家から直接何かされたわけではない。幻影旅団に大切な存在を奪われたわけでもない。だからこそ一般的な観点である「殺人は良くない」という考えを、第三者の視点から主張できていたのではないでしょうか。
それに、ピトーを前にしても冷静なキルアに対してゴンが「キルアは良いよね。関係ないから」と言ったことも、ゴンの中に「第三者だから冷静でいられる」という意識があるからかもしれません。
しかしカイトの件に関しては、ゴンがピトーという敵の直接的な被害者になりました。被害者の立場になると、ゴンでさえ激しい憎悪を敵に向けるというのは、これまでのゴンの意趣返しにさえ感じます。
冨樫先生は狙って描いたのかな?狙ってそうだな……
ヒソカ
ゴンとヒソカの因縁は、ハンターハンター序盤の大きなテーマでもありました。
287期ハンター試験の4次試験にて。ヒソカの受験ナンバープレートを奪うために、釣竿で素振りをしていたゴン。この練習が実戦でうまくいき、ゴンはヒソカの隙をついてプレートを奪うことに成功します。
しかし、ゴンがヒソカを狙っていたように、ゴンも別の受験生から狙われていました。その受験生がゲレタという男。ゲレタはゴンに毒の吹き矢を打ち込み、ゴンのプレートを奪ったのです。
毒で動けなくなるゴン。意識が朦朧とする中、姿を現したのはヒソカでした。
そしてヒソカの手には、切断されたゲレタの首が……実はヒソカのターゲットがゲレタだったのです。
ヒソカは、自身からプレートを奪ったゴンの実力と才能を評価し、44番のプレートをゴンに預けます。しかしゴンは「いらない」と意地をはり、プレートをヒソカに返そうとします。ゴンは自分の甘さ・弱さを理解し、ハンターとしての戦いに負けたと感じていたのです。
そんなゴンの意志をヒソカは一蹴。否、ゴンの顔面をぶん殴ることで「今のゴンならいつでも殺せること」「その上でゴンは生かされていること」を実感させます。
そしてヒソカは、ゴンが顔面をぶん殴り返すことができたら改めてプレートを受け取ると言い残し、その場を去りました。
この出来事以降、ゴンはずっとモヤモヤを抱え続けます。ハンター試験に合格したものの、ヒソカに殺されていたかもしれないのも事実。
そこでゴンは、ヒソカにカリを返すため、天空闘技場で修行することを決意。
ヒソカも、そんなゴンの考えを知ってか知らずか、ゴンの跡を追い、天空闘技場に姿を現します。
2人の因縁は、天空闘技場200階クラスでゴンがヒソカの顔面を殴るまで、数カ月続きました。ゴンにとっては、人生で初めて劣等感を覚え、見返したいと思った相手がヒソカだったのではないでしょうか。
ゴンはヒソカを恨んでいたというよりは、「どうしてもギャフンと言わせたい」という執念を抱き続けていた感じですかね。
結果的に、ゴンはヒソカとの試合に敗北。しかし、ハンター試験のときとは比べ物にならないほど成長したゴンをヒソカは高く評価。次に戦うときは天空闘技場ではなく、ルールのない外の世界で戦うと約束します。ゴンも、実力差はあったものの、ヒソカとの距離が縮まりつつあることを実感した様子。
ゴンはまだヒソカに勝っていませんし、ヒソカもゴンの成長を楽しみにしているようなので、2人の戦いはこれからも続くでしょう。ただ、ハンター試験から続いたゴンのモヤモヤは、ヒソカと戦うことで一旦解消できたように思えます。
ツェズゲラ
最後はツェズゲラ。オークションでグリードアイランドを落札しまくっていた大富豪・バッテラ氏が雇っていたプロハンターです。ハンターとしての活動は全て金のためと公言している一ツ星(シングル)ハンター。
ゴンはグリードアイランドを競り落とすことができなかった場合の保険に、バッテラ氏と交渉してプレイヤーとして雇ってもらう計画を練っていました。
その際に、ゴンとキルアの実力を測ったのがツェズゲラ。ツェズゲラはゴン・キルアに「練を見せてみろ」と要求し、2人は言われた通り、念の基礎である「練」をやってみせます。が、ツェズゲラの判定は不合格。
実は「練を見せろ」とは、プロハンターの業界用語で、裏の意味がありました。言葉通り「練」を見せることではなく「修行の成果を見せること」だったのです。
そんな言葉の意味さえ理解していないゴンとキルアをひよっこだと判断したツェズゲラは、不合格の判定を出したのでした。
一方でツェズゲラは、2人の「練」からその才能は感じ取っていた様子。評価こそ辛辣だったものの、ゴンとキルアの潜在能力は高く買っていたのでした。
そんなツェズゲラの思いを知らないゴンとキルア。特にゴンはツェズゲラに散々言われたことをかなり根に持っていました。サバサバしているゴンにしては珍しく、ツェズゲラの罵倒を頭の中で反芻している描写がありましたね。
これが「ツェズゲラを見返してやる」という気持ちにつながり、ゴンは「ジャンケングー」の元となる「硬」を習得できたのですが、ゴンにここまで根に持たれるとは、ツェズゲラは他人を挑発する力もシングルハンタークラスです。
その後、グリードアイランド内でビスケによる厳しい修行を積んだゴンは、大きく成長。ツェズゲラが得意とする垂直跳びで勝利したこともあってか、ゴンのツェズゲラに対する怒りは、16m80cm以上の彼方へとすっ飛び、ツェズゲラという人物に若干興味すら失っていたようにも見受けられました。
そして、レイザー一味とのスポーツ対決に臨むべく、ツェズゲラと一緒にビーチバレーの練習に励んだゴン。このときにはもう、ゴンの中に以前のような恨みつらみは無くなっていたと思われます。
ゴンがゴンさん化しなくてよかったね!ツェズゲラ!
ちなみにツェズゲラは、グリードアイランド内でレイザーの力を見て、ドッジボールから逃げ出そうとしたプレイヤーに対し、口では「ドッジボールに参加しなくて大丈夫」的なことを言いながら、心の中では「ちっ…生半可な覚悟でG・Iに来た愚図……!自力では何1つ前に進めないくせに口ばかりは1人前のウジ虫共めが」と罵倒していました。
ここまで長尺の罵倒フレーズを、心の中とはいえスムーズに思いつくあたり……ツェズゲラはゴンとキルアに限らず、常日頃から他人を罵倒しまくっており、罵倒癖がついていた可能性があります。
ツェズゲラが一番まともという恐ろしきメンツ
ピトー、ヒソカ、ツェズゲラ……ゴンが根に持ったキャラクターを並べてみると、まさかのツェズゲラが一番まともそうという、恐ろしいメンツになりました。
ピトーはキメラ=アントとして多くの人間を殺戮・実験材料にしてきましたし、ヒソカはプロハンター界隈でも有名な殺人鬼。この2人は、ゴンに限らず恨みを持たれても仕方がないことをしています。
ツェズゲラは口が悪いだけで、殺人鬼ではないですし、人間として尊敬できる部分が5cmくらいはあるし、シングルハンターとして社会的な地位を築いているのも事実。最終的にゴンと一緒にビーチバレーの練習をしていたことも考えると、ゴンがツェズゲラに恨みを抱いたのは、かなりイレギュラーなケースだったと考えるべきでしょう。
基本的にゴンは、他人の目から見てもヤバい行動をしていて、自分や自分の大切な人に明確な危害を加えた者でなければ、負の感情は向けないということですね。
ただ、ゴンは根に持たないと爆弾魔(ボマー)ですら無罪放免にしちゃうくらい甘々。なので、実はゴン自身かなりヤバめな人物であることも否めない……