最近キメラアント編を読み返しているので、キメラアント編に登場するキャラクターにフォーカスした記事ばかり書いているような気がします。が、今回の内容についてはかなり気になってしまったので気にせず書きます。
メルエムと護衛軍が占拠した東ゴルトー共和国の宮殿に侵入したゴンたち討伐隊。最初に待ち受けていたユピーと戦ったのはナックル、シュート、メレオロンの3人でした。3人の役割はユピーの足止め(できれば無力化)であり、ナックルがメレオロンの「神の共犯者(パーフェクトプラン)」でユピーに姿を悟られないようにしながら「天上不知唯我独損(ハコワレ)」をユピーに打ち込むことで、ユピーを念が使えない「絶」の状態にしようとしていたのです。そのための囮と時間稼ぎの役を負ったのがシュートでした。
ただですね、この3名での組み合わせでユピーを無力化しようとするのであれば・・・
ナックルではなくシュートとメレオロンが組んだ方が良かったんじゃない?
と思ってしまうのです。
その理由を書いていきたいと思います。
シュートとは?
(引用:HUNTER×HUNTER 20巻197P/冨樫義博)
本名:シュート=マクマホン。左腕がなく、3つの浮遊する手を念で操っている男性です。28歳でUMA(未確認生物)ハンターをしています。ナックル同様モラウの弟子にあたり、キメラアント討伐にも参加しました。チャンスに弱い性格をしており、少々気弱な部分もありますが、基本的には冷静沈着で、熱くなりやすいナックルと対極のような性格をしています。
念能力は「暗い宿(ホテル・ラフレシア)」。一定のダメージを相手に与えると、そのものの一部、または全身をカゴの中に閉じ込められるという能力です。キルアの左眼や、ユピーの体に出現した複眼を奪い取っていました(奪ったことによるダメージは相手にはないようです)。人形となったカイトの死体は全身を捕獲していました。
この「暗い宿(ホテル・ラフレシア)」を使ったほうがユピーを無力化できたのではないかと思うのです。
ユピーとは?
(引用:HUNTER×HUNTER 25巻109P/冨樫義博)
本名:モントゥトゥユピー。キメラアントの一匹で、王であるメルエムを守るために生まれた特別強い力を持つ「王直属護衛軍」に位置するキメラアントです。粗暴な性格と物事を深く考えない点が目立ちますが、その攻撃力、破壊力は兵器と言っても過言ではない力を持っていました。
ナックルやシュート、モラウたちとの戦闘を通して一時は人間に対して敬意を払うような場面も見られましたが、ネテロによって瀕死状態まで追い込まれた王を目の当たりにしたことで、改めて人間を敵と見据えていました。
怒りと共にオーラを一気に放出することで巨大な爆発を起こしたり、また怒りを溜め込むことで自身の体をより戦闘向けに変化させたりと、パワー溢れる能力をいくつも兼ね備えていました。
ユピーを「絶」にしたところで・・・
ナックルはその戦闘経験から「ハコワレ」発動とともに、大体どれくらいのオーラを貸し与えれば相手が「絶」になるかを数値として推測することができます。しかしユピーのオーラはナックルがこれまで相手にしてきたどの念能力者のオーラ量をはるかに凌いでおり、「絶」にするまで非常に長い時間を要しました(しかも結局できませんでした)。
(引用:HUNTER×HUNTER 25巻132P/冨樫義博)
さらに言うと、ユピーは人間とキメラアントとが融合して生まれた存在ではなく、魔獣とキメラアントとが混成した存在で、他のキメラアントとは若干異なる成り立ちをしています。そのため、オーラを使っていない純粋な身体能力から繰り出される攻撃でも怪物じみた威力がありました。巨大な階段を素手で一発で破壊したり、シュートをものの数十秒で戦闘不能にしたりなど、正直ユピーを「絶」にしたところで無力化しきれなかったと思うのです。
「暗い宿(ホテル・ラフレシア)」は効いた
シュートは隠れているナックルとメレオロンの位置をユピーに感づかれないために、さらに「ハコワレ」の時間を稼ぐためにユピーと真っ向から戦いました。そのさなかで発動したとみられる「暗い宿(ホテル・ラフレシア)」の能力でユピーの体に出現した複眼の一部を奪い取ることに成功していました。ユピーに対して「暗い宿(ホテル・ラフレシア)」は効いていたのです。
(引用:HUNTER×HUNTER 26巻15P/冨樫義博)
しかもシュートがユピーと戦っていた時間はそこそこ長く感じますが、実際は数十秒程度。その短い時間の中でも能力を当てられたのであれば、メレオロンがシュートを見えない状態にし、安全なところからシュートがユピーを攻撃しまくれば体の大部分を奪って無力化することができたように思えます。
ユピー相手でも逃げられるナックル
もちろんユピーは一筋縄ではいかない戦闘力を持っていますから、囮なくして攻撃が通るほど甘くはないでしょう。メレオロンの能力で感知できなくなっているとはいえ、ユピーが得意とする範囲攻撃をされればシュートもメレオロンも巻き込まれてしまう恐れがあります。となると囮が必要なわけですが、作中ではナックルがユピーを挑発して見事逃げ果せてましたよね。ナックルはその逃げ足にも自信を持っており、最高速度を維持して走る持久力はチーターを凌ぐという恐ろしい能力を持っています(走る速度がチーター並みというわけではありません)。
(引用:HUNTER×HUNTER 26巻129P/冨樫義博)
ナックル一人でもユピーから逃げ切れるのであれば、囮役として最適だったのはシュート以上にナックルの方だったと思います。囮役をこなすのにナックルの能力は十分すぎるのです。
作戦変更
これまでの情報から、ユピーを足止めする役をナックル、シュート、メレオロンが行う場合、このような作戦に変更した方がいいなと私は思いました。
シュートはメレオロンの「神の共犯者(パーフェクトプラン)」の能力で身を隠す
↓
ナックルがユピーを挑発し、全ての攻撃をかわしながら逃げる
↓
シュートは隠れながらユピーを攻撃し「暗い宿(ホテル・ラフレシア)」の能力で体の一部を次々と奪っていく
↓
ユピーの全身、あるいは行動不能になるくらい体を奪うことで無力化。その間もナックルは挑発しながら逃げ続ける
これならばシュートもナックルもほぼ無傷の状態でユピーの無力化ができたのではないでしょうか?
っていうかシュートとメレオロンが組んで死角から敵の体を奪い続ければ、細胞レベルまで体を細くして行動できるプフ以外のキメラアントならどんな奴でも無力化できたと思います。このコンボ強くないですか?
なぜシュートとメレオロンを組ませなかったのか?
ナックルはキメラアントに対して「一方的に駆除するようなやり方は気に入らない」というような感情を抱いていました。きちんと納得した上でキメラアントを駆除したかったのでしょう。そのことを考慮すると、念能力を封じて敵の戦意を奪った上で「対話」をし、駆除するべきかどうかを決めたかったというナックルの意向もあり、ユピーは「絶」にするという方向で作戦が練られた事も考えられますね。
関連記事:【ハンターハンター】ナックルの強さはどれくらいか?考察してみた! - 私の名前はジロギン。
作中でも最終的にナックルは怪我をしたモラウを救うためにユピーと交渉してましたし。シュートの「暗い宿(ホテル・ラフレシア)」で捕獲してしまうと対話ができない可能性もありそうですから、その上で「ハコワレ」を活用する方向になったのではないでしょうか。安全に「ハコワレ」を使い続けるにはメレオロンのサポートが必要ですので、ナックルとメレオロンが組むことになったと。
また「暗い宿(ホテル・ラフレシア)」と「神の共犯者(パーフェクトプラン)」が併用できなかったという事も考えられますね。
「シュートの浮いている手はシュート自身から独立して動いているためメレオロンがシュートに触れていても浮いている手には触れていることにならず、隠すことができなかった」
とか、
「メレオロンがシュートに触れていても捕獲した相手の体には触れていることにはならないため、『触れているのに隠せない部分がある』という矛盾から「神の共犯者(パーフェクトプラン)」が発動しなかった」
とか、そういう理由で併用できなかったため、シュートとメレオロン組まなかった可能性も考えられます。
ただ、宮殿突入以降の作中テーマの一つには「誤算」があるんですよね。討伐隊の考えていた通りに作戦が運べなかったという誤算や、キメラアントと人間が混ざったことによって生まれたメルエムと護衛軍たちとの認識の差による誤算、それによって討伐隊メンバーたちの感情が揺れ動いたことによる誤算など、思った通りに進まないことそれ自体がフォーカスされていたと思います。
また今回私の考えたシュートとメレオロンが組むという作戦は「ユピーが「絶」になったとしても無力化できないくらい強い」とわかっていたからこそ考えられる作戦であり、ユピーの強さやオーラ量を目の当たりにしていなかった討伐隊としては「ナックルの「ハコワレ」で「絶」にすればユピーを抑え込むことはできるだろう」と踏んでいたと思います。知らなければ100%うまくいく合理的な作戦は思いつきませんよね。そういう意味でもシュートとメレオロンが組むということはなかったのではないでしょうか。
キメラアント編の楽しみは、人間とキメラアントの間にある微妙な差によって生まれる大きな誤算こそにあると思います。ちょっと何言ってるかわからないかもしれませんが、「世の中そんな簡単にゃいかねぇんだぜ!」ってことが伝わればいいです。