全国大会常連校の氷帝学園男子テニス部。作中時間で1年前の関東大会団体戦では準優勝を果たすなど、高い実績を誇るチームです。
しかし残念なことに、作中での成績は都大会5位、関東大会は初戦敗退、全国には開催地枠で特別出場と、イマイチな結果に終わりました。
そんな氷帝で、公式戦負け知らずのダブルスペアがあります。宍戸・鳳ペアです。
青学の乾・海堂ペア、大石・菊丸ペアの両方に勝利し、氷帝最強ダブルスと呼ばれています。
ただ、この宍戸・鳳ペアが結成されたのは関東大会の直前で、それまでは組んでいないんですよね。
突発的にペアを組んだ宍戸・鳳ペアが、偶然にもこれまでの氷帝ダブルスを全て上回るほどマッチしたのです。
むしろ「氷帝のダブルスって、宍戸・鳳ペアが出来上がるまでかなり弱かったんじゃないか?」とさえ思えてしまいます。
そこで今回は、宍戸・鳳ペアが結成される前の氷帝ダブルスはどのような感じだったのか、考察しました。
宍戸・鳳ペア(シルバーペア)とは
宍戸亮(ししどりょう)と、鳳長太郎(おおとりちょうたろう)の先輩後輩が組んだダブルスです。
ファンの間では、青学ゴールデンペアの対になる形で「氷帝シルバーペア」と呼ばれています。
宍戸さんと長太郎くんがダブルス組むことになったきっかけは、宍戸さんがシングルスで敗北したことにあります。
都大会の準々決勝で、不動峰と対戦した氷帝。
不動峰の部長・橘さんは、氷帝がダブルスを準レギュラーで固めていることと、不動峰が無名校であることを利用し、ダブルスを強化。さらに全国区プレーヤーである自身がシングルス3に出場することで、3タテ(団体戦を3試合で終わらせること)する作戦を決行。
この際に、氷帝側のシングルス3を任されていたのが宍戸さんでした。そう、宍戸さんは、元々シングルスプレーヤーだったのです。
試合の結果、宍戸さんは橘さんに15分で敗北。
氷帝は「敗者切り捨て」を掲げ、試合に負けた選手は二度と起用しない方針のため、宍戸さんは正レギュラーから外されることになりました。
その後、宍戸さんは再起をかけ、後輩の鳳くんと共に猛特訓を開始。
鳳くんの超スピードサーブ「スカッドサーブ」を素手で受け止める危険な練習をし、ボールへの反応速度を極限まで高めることに成功しました。
パワーアップした宍戸さんは、同じく氷帝の正レギュラー・滝萩之介(たきはぎのすけ)くんを倒すことで、正レギュラー復帰を狙います。
しかし、監督の榊先生は勝利した宍戸さんを正レギュラーに起用せず。
納得がいかない宍戸さんは、鳳くんと共に榊先生の元へ直談判しに行きます。その場で土下座&断髪、そして跡部様の後押しにより何とか正レギュラーに復帰できたのでした。
それでも、跡部様曰く「てめぇ(宍戸さん)はもう(シングルスでは)終わってる」とのことで、宍戸さんはシングルスで公式戦に出場することはなく、鳳くんとのダブルスで出場することになります。
結果、2人のプレースタイルがうまく噛み合っただけでなく、猛特訓によって生まれた2人の強い絆がダブルスでも良い具合に発揮され、氷帝最強ダブルスへと成長したのでした。
宍戸・鳳ペアが結成される前の氷帝ダブルス事情
宍戸・鳳ペアが結成されるまで、氷帝のダブルスにはどのようなペアが出場していたのか考察していきます。
都大会までは準レギュラーがダブルスを担当
氷帝の方針として、都大会までのダブルスには準レギュラーが出場します。
氷帝は部員数200名以上のマンモス部活のため、ほとんどの部員が公式戦を経験しないまま卒業してしまうと思われます。
そこで心優しい榊先生は、より多くの部員に公式戦に出てもらうため、都大会までのダブルス枠を準レギュラーで埋めているのです。
このように書くと、「何て素晴らしい学校なんだろう、氷帝学園」と思うかもしれません。が、この方針はどちらかというと氷帝の舐めプです。
都大会までは正レギュラーの半数を温存し、怪我や体力の消耗を防いでいるんですね。
「準レギュラーを使っても、都大会程度なら勝ち上がれる」と考えているからこそ生まれた方針です。
シングルスには正レギュラーが控えているので、仮にダブルス2試合を落としても残りシングルス3つを正レギュラーが勝てば団体として勝ち上がれるのですが、作中では橘さんにうまいこと利用され敗北してしまいました。
元々は九州代表で、全国区の橘さんが都大会に出場しているのはイレギュラー中のイレギュラーですが、もし橘さんがいなかったとしても、氷帝が舐めプできるほど都大会は甘くないと思います。
例えば、青学にはゴールデンペアや不二くん、手塚くん、スーパールーキーのリョーマがいましたし、他にも山吹中はダブルスが2組とも全国レベルで、シングルスには千石さん、亜久津くんが控えていました。
いくら氷帝が強いといえど、正レギュラーが3人しかいないチーム編成では、都大会のどこかで負けていたでしょうね。
正レギュレー1組目は忍足・向日ペア
氷帝もいつまでも舐めプしているわけではありません。関東大会からは団体戦メンバー全員が正レギュラーになります。
正レギュラーで宍戸・鳳ペアより前から組んでいたのが、忍足・向日ペア。自分たちで「ダブルス専門」と言っていましたし、関東大会の青学戦でもダブルス2で出場していたので、確定です。
前衛の向日くんが「ムーンサルト殺法」という無駄な動きアクロバティックプレーで戦況を掻き乱し、後衛の忍足くんが向日くんをサポートしつつ隙を見て攻撃にも転じる戦法を駆使していました。
もう1組は滝・鳳ペアか?
作中の関東大会青学戦では、忍足・向日ペアの次に宍戸・鳳ペアが出場しました。
もし宍戸・鳳ペアが結成されていなかった場合、別のペアが出場していたことになります。
このペアについて作中で特に言及はないのですが、可能性があるとしたら、宍戸さんに負けた滝くんと長太郎くんのペアだったのではないかと思います。
宍戸さんを除く正レギュラーのうち、シングルスを任されているのは跡部様、樺地くん、ジローくんの3名。忍足くん、向日くんはダブルス枠で、日吉くんは当時準レギュラーだったため除くと、残りは滝くんと長太郎くんになります。
2人は初登場のとき(氷帝正レギュラーが全員で、部活をサボる桃ちゃんを煽りに来たとき。練習しなくていいんですかねぇ……?)一緒のコマに映っていたことからも、ペアだった可能性があると考えられます。
出典:テニスの王子様14巻72P/許斐剛/集英社
氷帝もダブルスが弱点だった説
青学には、ゴールデンペア以外にダブルス向きの選手がおらず、監督である竜崎先生は、試合のたびダブルスのオーダーに悩んでいました。
いろいろと試行錯誤した結果、乾・海堂ペアというゴールデンペア並みに安定した組み合わせを発見できたものの、それまでずっとダブルスが弱点だったのです。
ゴールデンペアが勝てない場合、ダブルス2試合とも落として、後がないままシングルスをする綱渡りの試合展開になってしまいます。
実は青学だけでなく、氷帝も宍戸・鳳ペアが結成されるまで同じような状況だったのではないかと思うのです。
いや、もっと深刻な状況だったかもしれません……
忍足・向日ペアは青学の急造コンビに敗北する実力
以前からペアを組み、自分たちで「ダブルス専門」と言い切っていた忍足・向日ペアですが、その強さは……イマイチ(涙)
跡部様の話では、宍戸・鳳ペアとの部内戦で敗北。さらに関東の青学戦では、急遽組むことになった菊丸・桃城ペアに敗北と負け続き。
両試合とも敗因はおそらく、2人の舐めプ癖と向日くんの体力不足でしょう。
宍戸・鳳ペアとの試合では、正レギュラー落ちした宍戸さんが相手だと油断していたら足元をすくわれたとのこと。いくら言い訳しても、負けは負け。相手の力量を正確に測れず、油断するのも弱さといえます。
また向日くんは、菊丸・桃城ペアとの試合で、序盤からムーンサルト殺法で攻めまくり、後半にはガス欠。接戦になるとスタミナが保たず、不利になることが明らかになりました。
1人でコートの全てをカバーしないといけないシングルスならまだしも、2人でコートをカバーする分、1人当たりの守備範囲が狭くなりやすいダブルスでのスタミナ切れはまずいです!
しかも相手は、大石くんの怪我により突然組むことになった急造ペア。さらに、菊丸くんは得意のアクロバティックプレーを止め、桃ちゃんのサポートに専念。本来の自分のプレースタイルではない形で試合に挑みましたが、見事逆転勝利を収めました。
もし大石くんが予定通り出場していたら、向日くんの体力不足を見抜かれて惨敗していたかもしれませんね……
向日くんは初登場時、山吹中の亜久津くんについて「タバコとか吸ってたから体力続かなかったんじゃねーの」と悪口を言っていましたが、向日くんの方が喫煙疑惑が出てしまいそうないくらい体力不足でした。
青学が関東大会まで勝ち上がってきた実力者揃いのチームとはいえ、急造ペアに負けてしまう忍足・向日ペアの安定感の無さは、団体戦において「穴」になる可能性が高そうです。
少なくとも、関東大会上位や全国大会まで勝ち進んでくるチームのダブルスには勝てそうにないなと思います……
その後、全国大会の青学戦にて、忍足くんはシングルスで出場しています。
ダブルス専門とは何だったのか……
滝・鳳ペアは信頼関係が薄そう
もう1組の滝・鳳ペアは、もしダブルスを組んでいたとしたら、信頼関係が希薄そうです。
長太郎くんは宍戸さんの練習に協力。宍戸さんが滝くんを倒して、正レギュラーに復帰する手助けをしました。
宍戸さんが滝くんを倒した後も、宍戸さんを正レギュラーに推していた長太郎くん。滝くんに対する同情や未練は全く無さそうでした。
長太郎くんが宍戸さんに懐いたことを考えると、滝くんとのペアはイマイチ相性が悪かったのかもしれません。
それでも、鳳くんのスカッドサーブがあればサービスゲームのキープ率は高く、接戦になっても試合には勝てるかもしれません。が、当時のスカッドサーブは精度が悪く、ダブルフォルトする確率も高かったので、ダブルスとしての安定感はなさそうですね。
忍足・向日ペア&滝・鳳ペアで、氷帝が団体戦を乗り切るのは難しかったのではないかと思われます。
関東大会直前で宍戸・鳳ペアを結成できたのは、氷帝にとって幸運でしたね。
もし結成できていなければ、青学戦で跡部様まで試合が回らずに敗退していた可能性すらあります。
シングルス陣をダブルスに回すのも危険
氷帝でシングルスを主体にしている跡部様、樺地くん、ジローくんをダブルスに回し、強化することもできたでしょう。
実際に都大会の敗者復活戦、聖ルドルフとの試合では樺地くんがダブルスで出場していました。
ボレーが得意なジローくんもダブルス向きですね。ペアが後衛に回ってくれればネットプレーに集中できますし、2人で前衛のポジションについて攻撃するのも効果的です。
ただ、シングルス陣をダブルスに回すと、今度はシングルスが手薄になってしまうという……
どんな相手だろうとほぼ確実に勝ち星を上げられる跡部様は、保険としてシングルスに置いておくべきですし、関東・全国の強豪選手をコピーして渡り合える樺地くんにもシングルスをやってほしいところ。
ダブルスが弱いからこそ、下手にオーダーを変えてシングルスが手薄になってしまう状態は避けるべきですよね。
氷帝の榊先生も、竜崎先生と同じくオーダーに頭を悩ませていたことでしょう。
氷帝ダブルス陣の初戦が関東大会なのはキツイ
宍戸・鳳ペアが結成される前の氷帝は、団体戦もかなり苦戦していたのではないかと思われます。
1年前は、当時の3年生などに良い人材がいたかもしれませんが、その3年生が引退してからの秋〜作中夏までの氷帝は、暗黒期だったかもしれません。
そもそも、ダブルス担当の正レギュラーの団体戦初戦が関東大会なこと自体、選手にとってかなりキツイと思います。
公式戦は負けが許されないプレッシャーのかかる戦い。なるべくなら、多くの試合を経験してプレッシャーに慣れ、ベストなプレーができるよう調整したいところ。
ですが、氷帝は都大会までダブルスに起用するのは準レギュラーのみ。正レギュラーは公式戦で調整することができません。
そんな中、いきなり関東大会に出場してくる強豪校と戦わされるわけです。だいぶ酷ですよね。
関東大会での青学戦は、菊丸・桃城ペアが急造ダブルス、乾・海堂ペアも初実戦という状態だったので何とか良い試合になりましたが、初戦が王者・立海大だったら都大会と同じく3タテを喰らっていたでしょう。
関東大会のトーナメントは、くじ引きで決められていましたので、跡部様のくじ運にも救われましたね。まぁ青学にも負けましたが。
正レギュラーを温存するという氷帝の方針は、メリットが全く無いわけではないのですが、選手本人からするとデメリットの方が大きいように思います。
せめて都大会の準決勝くらいから正レギュラーに切り替えて、もっと公式戦の場数を積ませた方が、氷帝にとってプラスになるのではないでしょうか。などとマジレス。