氷帝テニス部200人以上の頂点に立ち、全国区プレーヤーとして中学テニス界でその名を知らぬ者などいない跡部景吾様。そして圧倒的カリスマ性で氷帝の部長を務めた跡部様の後を継ぐのが、2年生の日吉若くん。
跡部様の功績が非常に大きく、ただでさえ後継ぎとしてのハードルが上がる「氷帝の部長」という枠。その枠に収まるのが日吉くんというのは適切なのか、疑問に思う読者は多いのではないでしょうか。
いや、ほぼ確実に来年の日吉くん率いる氷帝は暗黒時代に入りそう……
前評判こそ良かったものの、作中での戦績はイマイチどころか負け越している日吉くん。本記事では、そんな日吉くんの活躍?を振り返っていきます。
日吉若(ひよしわかし)とは?
日吉若、2年。アグレッシブベースライナー。性格は冷静沈着で他人に流されない。少し神経質な面もあるが、常に前向きで虎視眈々と正レギュラーの座を狙っていたようだ。誕生日は12月5日。血液型はAB型。好きな言葉は『下剋上』。
あのデータマン・乾くんですらこれくらいの情報しか持っていないほどのダークホースだった日吉くん。というのも、日吉くんは関東大会まで氷帝の準レギュラーで、公式戦にはほとんど出場していませんでした。
ただ、全く試合に出ていなかったかというとそうでもなく、新人戦で立海大の切原赤也くんと良い勝負をしたそう。「氷帝の準レギュラーには、あの赤也くんと互角に戦える選手がいる」という、層の厚さを示したのが日吉くんだったといえます。
赤也くんと互角に戦える日吉くんがずっと準レギュラーだった理由は、彼が幼い頃から身につけていた古武術にあります。
日吉くんの実家は古武術の道場で、日吉くんも小さい頃から古武術を習っていました。その古武術があまりにも体に染み込み過ぎてしまい、テニスのフォームがしっくりこなかったのです。
日吉くんのフォームを見た氷帝の榊監督は自然体で打つことを指示。その結果生まれたのが、「演武テニス」。古武術の動きをテニスに応用した、日吉くんならではのプレースタイルです。
この演武テニスをきっかけに、日吉くんはメキメキと実力を伸ばしていったのでした。
氷帝の部内では次期部長として日吉くんがほぼ内定していた様子で、実際に翌年の部長になっています。
しかし氷帝の榊先生は敗者切り捨てを掲げており、そのモットーに則れば、日吉くんは敗戦ばかりで正レギュラーに起用されるかすら怪しいもの。ですが、なんやかんやでうやむやになっています。
日吉くんの戦績
ジーニアス10に入り、氷帝を全国区に押し上げた越智月光先輩。その後を継ぎ、氷帝を全国へと導き続けた跡部様。
こんな輝かしい部長に続くのが日吉くんというのは、若干不安が残るところ……この不安の原因は何かというと、やはり日吉くんの戦績の悪さでしょう。
ここからは、作中で描写・言及のあった日吉くんの戦績を振り返っていきます。
部内戦で鳳くんに勝利
関東大会の青学戦の最中、氷帝のモブ部員が日吉くんについて「シングルスでは鳳にも勝っている」と言及しています。おそらく氷帝部内の紅白戦で日吉くんと鳳くんが試合をし、日吉くんが勝利したのでしょう。
しかし正レギュラーとして公式戦に起用されているのは鳳くんのほう。というのも、宍戸さんの話では、鳳くんはスカッドサーブ1本で正レギュラーの座を勝ち取ったとのこと。つまり試合結果以上に鳳くんのサーブのほうが榊監督にとって魅力的だったということでしょうね。
敗者切り捨てが基本方針の榊監督が、部内戦とはいえ敗北した鳳くんを正レギュラーに選ぶのは異例の人事……と表現して少しでも日吉くんの格を高めたいところなのですが、正直鳳くんにシングルスで勝ったところで強いかというと微妙……鳳くんはダブルスプレーヤーですからね。
それに時速200kmを超えるサーブをポンポン打てる鳳くんのほうが、中途半端な実力の日吉くんより使い勝手が良いのも否めません。
新人戦で赤也くんに惜敗
立海大の切原赤也くんと新人戦で試合をした日吉くん。柳くんいわく「良い試合をしていた」そうですが、赤也くんは「そうでしたっけ?」と全く印象に残っていませんでした。
ファンブックにて、試合結果は6-4で赤也くんが勝ったことが明らかになり、スコアを見れば確かに良い勝負をしていると言えます。特に赤也くんはスピード試合にこだわっており、変に試合時間を伸ばすことなく容赦なくポイントを決めにいくタイプ。そんな赤也くんが4ゲームも落としたということは、日吉くんはかなり善戦したのでしょう。
ちなみにOVAで赤也くんは、入学した段階ですでに立海大の団体戦メンバーを倒すほどの実力でした。日吉くんはそんな赤也くんと互角に戦ったのに、2年生になっても氷帝の準レギュラー止まり。
日吉くんは記憶喪失にでもなり、実力がリセットされてしまったのでしょうか?
関東大会初戦でリョーマに敗北
関東大会初戦で青学と戦った氷帝。試合は2勝2敗1ノーゲームとなり、控え選手同士のシングルスで決着をつけることになりました。青学からはリョーマが、氷帝からは日吉くんが出場。
準レギュラーの日吉くんにとって、この試合は大チャンスでした。
氷帝レギュラーのうち向日くん、忍足くん、ジローくんが敗北。敗者切り捨ての榊監督の方針に従えば、この3人は正レギュラーから外されることになります。つまり控え選手の日吉くんが正レギュラー入りする絶好の機会が回ってきたということです。
そのためにはもちろん、日吉くん自身が勝って氷帝を勝利に導かなければなりません。次期部長という期待に応えるための正念場でもあったはず。
しかし相手が悪かった。アメリカのジュニア大会を4連覇し、地区大会・都大会ともに青学の勝利に貢献してきた公式戦無敗の男・リョーマが、控え選手として出場してくるとは……
序盤こそ日吉くんが演武テニスと緩急をつけたプレーで試合を優位に運びましたが、リョーマは試合のペースなどお構いなしでドライブBを連打。そのまますんなり勝利しました。
リョーマにしては珍しい、終始作戦を練らない強引な試合でしたね。
悲しいかな、リョーマは「テキトーに戦っても勝てる」と感じるくらい、日吉くんを格下に見ていたのでしょう。
初っ端のツイストサーブも返せるレベルで打ってましたし、ラケットヘッドが30cmも下がるバレバレの零式ドロップを試したりしていた点からも、リョーマの舐め腐りっぷりは明らかです。
試合結果は4-6で日吉くんの負け。氷帝のチームとしての敗北も確定。昨年の関東大会準優勝校が初戦で消えるという番狂せが起きてしまいました。
全国大会で椿川に勝利
全国大会の会場が東京都に決まり、開催地枠に選ばれたことで作為的奇跡的に全国への出場切符を手に入れた氷帝。
東京都内の学校はたくさんありますが、氷帝の過去の功績から開催地枠に選ばれたのでしょう。氷帝は昨年の全国大会でベスト16にまで進み、それ以前も毎年全国に進出していたようですので、全国大会に出場する実績としては申し分ありません。
このチャンスを絶対に逃せない氷帝は、1回戦、2回戦ともストレートで圧勝。「本来、全国大会に出場するべきなのはオレたちだ!」と言わんばかりの大躍進をみせます。
関東大会まで準レギュラーで、リョーマとの試合に負けた日吉くんですが、全国大会ではちゃっかり正レギュラーの仲間入りを果たし、団体戦に出場。初戦の北海道代表・椿川戦ではシングルス2に起用され6-0で勝利。全国大会で貴重な1勝を上げています。
続く2回戦の獅子学戦では控えだったものの、それも仕方なし。獅子学は昨年全国ベスト4に入った、実績だけで見れば氷帝よりも格上の強豪校。そんな獅子学が相手とあらば、氷帝は半正レギュラーのような日吉くんに試合を任せるわけにはいきません。
実際のところ、獅子学はエース選手だった千歳くんと橘さんが転校しており、昨年の実績からは想像もできないほど弱体化していたのですが、油断を捨てた氷帝は決して手を緩めませんでした。
全国大会準々決勝で乾・海堂ペアに敗北
氷帝にとってリベンジマッチとなった全国準々決勝の青学戦。
日吉くんとしても、最も意識していた対戦校が青学だったはず。
これまでシングルスで起用され続けてきた日吉くんですが、青学戦ではまさかのダブルス2に出場。ペアはムーサルト殺法の向日岳人くん。
向日くんは関東大会の青学戦で早々にスタミナ切れを起こし、敗北してしまいました。普通なら自身のスタミナ不足を反省し、走り込みを行うなどして弱点を克服するでしょう。
しかし、向日くんはあえてスタミナ不足を克服せず、今までの「ムーサルト殺法で前半からかっ飛ばす短期決戦」スタイルを貫き通しました。
これは榊監督が意図したもの。向日くんのプレースタイルをそのままに、さらに攻撃的なプレーができるよう、ペアに同じく短期決戦型の日吉くんを選出し、超短期決戦ペアをつくったのでした。
向日・日吉ペアの速攻は、対戦相手の乾・海堂ペアにぶっ刺さります。
乾・海堂ペアの戦い方は、序盤から中盤にかけて海堂くんが粘りまくり、その間に乾くんが相手のデータを収集。終盤から巻き返す長期決戦スタイル。長丁場の戦いになるほど有利になりますが、乾くんがデータを取り切る前に試合を決められてしまうと、反撃できないという弱点もあったのです。
乾・海堂ペアの弱点を見抜いた榊監督は、あえて速攻の向日・日吉ペアを当てたのでした。
向日くんはムーンサルト殺法と強引なポーチで、日吉くんは得意の演武テニスでどんどんポイントを重ねます。
榊監督の作戦勝ちで、向日・日吉ペアが試合を一気に片付ける……と思いきや、試合は長期化。序盤から全力で攻めていた向日・日吉ペアに対し、海堂くんは1ポイントあたりのラリーを長引かせ、ジワジワ体力を削っていたのでした。
海堂くんが粘っているうちに、乾くんは向日・日吉ペアのデータ収集を完了させ、2人のプレーを完全に読み切ります。さらに海堂くんの奥の手「トルネードスネイク」が炸裂し、流れは青学ペースに。
向日・日吉ペアは序盤で攻め過ぎ、長期戦を乗り切るだけのスタミナは残っておらず、5-7で逆転負けを喫してしまいました。
U-17日本代表合宿で跡部様に持久戦で敗北
全国大会終了後、U-17日本代表合宿に参加した氷帝メンバー。その中には、もちろん日吉くんの姿もありました。
合宿開始直後に行われた、中学生を勝ち組と負け組に分ける同士討ちで、日吉くんは跡部様と戦うことに。
日吉くんにとって憧れであり、乗り越えるべき壁でもある跡部様。まさに下剋上のチャンスがやってきたのです。
しかし、試合の主導権を握っていたのは跡部様。タイブレーク形式の試合でしたが、跡部様はあえて持久戦を仕掛けます。これは跡部様の作戦でもあり、日吉くんへの餞別でもありました。
跡部様は日吉くんの弱点であったスタミナ不足を克服させるべく、試合を長期化させたのです。おそらく跡部様は速攻で日吉くんを仕留めることもできたでしょう。
結果は跡部様の勝利に終わりましたが、日吉くんは持久戦に食らいつき、充分なスタミナを身につけたことを跡部様に証明したのでした。
しかし負けは負け。日吉くんは負け組として崖の上で三船コーチの地獄のようなトレーニングを受けることになりました。
立海大との親善試合で赤也くんに敗北
『新テニスの王子様』では跡部様との同士討ち以降、出番がほぼ無い日吉くん。
しかし、U-17世界大会後に跡部様が企画した氷帝VS立海大の親善試合で、出番が回ってきます。しかも、日吉くんが喉から手が出るほど欲しがっていたシングルス1としての試合です。その上、団体戦としても勝敗が決まる重要な一戦を日吉くんが担うことになりました。
対戦相手は、新人戦で負けた因縁の相手、切原赤也くん。
赤也くんはU-17日本代表に選ばれ、ギリシャ戦・ドイツ戦で世界レベルのテニスを経験。さらに自身の中に潜む天使と悪魔の人格を従えた青い瞳モードに覚醒。天衣無縫の極みとも互角に戦える力をつけました。
しかし成長したのは赤也くんだけではありません。日吉くんも実力を上げ、跡部様の必殺技である「破滅への輪舞曲(ロンド)」や「失意への遁走曲(フーガ)」を繰り出し対抗。さらに新必殺技「四神演武・白虎」で赤也くんを追い詰めます。
新人戦のときと同じく、まさに「互角」の戦いを展開する赤也くんと日吉くん。拮抗する試合の中で、日吉くんはもう一つの奥の手である「四神演舞・朱雀」を発動しようとします。が、スタミナ切れにより敗北。赤也くんが日吉くんに連勝した形となり、親善試合も立海大の勝利となりました。
跡部様との同士討ち、そして崖の上での厳しい特訓でスタミナ不足は克服したと思われる日吉くんですが、新技の連打するのは難しかったよう。
3年生になる頃には、新技に耐えられるようになっているかもしれません。
スタミナさえなんとなかれば日吉くんは成長できる
作中で何度も描かれているように、日吉くんの最大弱点はスタミナであり、これさえ克服できればもっと成長できるでしょう。
氷帝には跡部様の財力で作ったトレーニング設備がたくさんあるので、基礎トレーニングあるのみですね。
テニスに必要な基礎技術が高まれば、今は服をスケスケにすることしかできない「日吉王国(キングダム)」もさらに精度が高まり、骨格までスケスケにすることができる……ような気がしなくも無いので、日吉くんには一層頑張ってもらいたいところです。
1つ不安要素があるとすれば、日吉くんが部長になることで自分より格上の選手が部内にいなくなり、下剋上の精神が失われないかということ。
今までは跡部様という絶対的な強さを誇る選手が部内にいて、彼がいるからこそ日吉くんも努力できた部分が大きかったでしょうからね。
今後はチーム外に目標を作り、下剋上の精神を維持してほしいなと思います。